アレルギーに関する情報

(第1回)アトピ―性皮膚炎の治療におけるステロイドについて

 アトピ―性皮膚炎の患者さんを外来で診察しているときによく言われることのひとつに「ステロイドを使わずに治して欲しい」ということがあります。そこで、「どうしてステロイドを使いたくないのですか?」とたずねますと、たいていの場合「副作用がこわいから」とか「リバウンドがこわいから」といった答えが返ってきます。副作用については、実際に患者さんご自身が経験されたものは少なく人づてに聞いた話や雑誌などの情報がほとんどです。糖尿病や骨が弱くなるような全身にみられる副作用はステロイドの注射や内服にみられるもので、付け薬の場合には主に皮膚での副作用が問題になります副作用としては皮膚が薄くなったり感染症を起こしたりする場合がありますが、皮膚萎縮については皮膚科専門医の指示通りステロイドを適切に使えば普通は見られませんし、感染症についてはステロイドの中止と適切な治療で治ります。それともう一つよく言われるのが「ステロイドを使うと色が黒くなる」ということです。これはステロイドの使用により色がついたのではなく、ステロイドを使って炎症がおさまったために色素沈着が残るのです。ちょうど火事の焼け跡のようなもので、ステロイドを使って早く症状を止めることで使わないときに比べて色素沈着の程度は軽くなります。一方、ステロイド中止によるリバウンドについても、悪化因子が取り除かれていない場合を除いては、炎症(症状)が完全に治まってからステロイドを止めたときに症状が急激に悪くなることはほとんどありませんステロイドが恐い薬ということで炎症が治まりきらないうちに突然中止すると一気に症状が悪化しますが、これはステロイドの不適切な使用により悪化したものであってリバウンドではありません。実際に、ステロイドの不適切な使用による悪化とリバウンドがしばしば混同されています。
 日本皮膚科学会によるアトピ―性皮膚炎の治療ガイドラインではステロイド外用による治療が標準治療とされていることからもわかるように正しく使用すれば必要以上に恐がることはありません

(第2回)アトピ―性皮膚炎患者のドクターショッピングについて

 アトピ―性皮膚炎(AD)は、以前は思春期頃にはほとんどが自然に治る疾患として扱われてきましたが、最近は子どもの重症例や成人になってもひきつづき ADがみられることもめずらしくなくなりました。そのためにADの患者さんのなかには治療を受けていても良くならないということで病院を次々と替えていく、いわゆるドクターショッピングを続けている方が少なからず見られます。一般的な皮膚科専門医であれば、ADの治療方針、治療内容には大きな差はないものと考えます日本皮膚科学会によるアトピ―性皮膚炎治療ガイドラインでも、「治療の目標は患者を下記の状態に到達させることにある。(1)症状はない、あるいはあっても軽微であり、日常生活に支障がなく、薬物療法もあまり必要としない(2)軽微ないし軽度の症状は持続するも、急性に悪化することはまれで悪化しても遷延することはないなお、ADは遺伝的素因も含んだ多病因性の疾患であり、疾患そのものを完治させうる薬物療法はない。よって対症療法を行うことが原則となる」と謳(うた)っています。実際にたいていの皮膚科専門医はこれらの考えに基づいて治療を行っています。ドクターショッピングを続けられる方を大きく二つに分けますと、ステロイドを使わずに症状を治したいという場合と新しい治療を行いたいという場合に分けられます。前者については、症状が強い時にはステロイド剤を使わずに治すことはほとんど不可能ですし、後者についても、タクロリムス軟膏(プロトピック軟膏)の外用が小児においても適応となった現時点ではトピックスとしての新しい治療法はありません。
 ADでは、幼児期の卵などの食餌因子に対するアレルギー、ダニやホコリなど環境因子に対するアレルギー、敏感肌に基づく皮膚の乾燥症状、日常生活習慣における皮膚刺激、ストレスによるかゆみの増強、掻き癖による症状の悪化、薬自体による皮疹の悪化など様々な病因、悪化因子があげられます。軽症のADではステロイドの治療だけでたいていの場合、良くなりますが、重症の難治性のADでは上記の悪化因子を除かなければ症状の改善が期待できません。実際に入院施設で重症のADの治療を行う場合、最初のうちはステロイドを使いますがしばらくするとワセリンの外用だけでも症状が落ち着いてきます。ところが、これで治ったと考えて試験外泊をするとまた元に近い状態にすぐに戻ってしまいます。これは環境因子が大きく影響しているケースで、難治性のADで最も多く見られます。このような場合には環境因子の改善なしには症状の改善は望めません。つまり、難治性のADではこのような症状の悪化因子を見つけ出して、それを取り除くことが必要になります。
 ADでステロイドを使わずに治るケースというのは、軽症例でスキンケアのみで症状が安定しており、かつ悪化因子が完全に除去されている場合に限られますこのような場合には、症状が悪化して仮にステロイドを一時期使ってもそれ以降に悪化因子がなければ再びスキンケアのみでステロイドを使うことなく治療することができます。中等症以上の場合でも、一度ステロイドで症状をおさえれば悪化因子を除くことができればステロイドを使う必要はありません。しかし、現実的には軽症のADでは悪化因子を取り除くことは可能ですが、中等症以上の例では悪化因子が不明な場合があったり、実際に取り除くことが困難な場合が多かったりしますので症状をコントロールして悪化させないようにするためにはステロイドが必要になってきます。逆にこのような場合にもステロイドを使わなければ、症状が悪化してさらに皮膚が敏感な状態になって余計に皮膚炎を起こしやすくなりますので、この悪いサイクルを断ち切るためにもステロイドでの治療が必要になります。
 ドクターショッピングを続けると、新しい皮膚科医にかかったときにそれまでの経過やその時点での治療効果などがはっきりしませんので適切な治療を行って直ちに良い結果をもたらすことは非常に困難です。その結果、やはり良くならないということでさらにドクターショッピングを続けるという悪循環におちいるケースもよく見られます。一人の信頼のおける皮膚科専門医にかかられて、悪化因子を医師と患者さんが一緒になって見つけ出しながら、症状に応じてその都度治療を変えていくといった地道な治療を続けることがAD治療の王道と思われます

(第3回)薬疹について

 皮膚科で扱うアレルギーのひとつに薬疹があります。薬の副作用として皮膚に症状がみられるものですが、病気自身による症状か、薬によるものか見きわめるのに苦労することが少なくありません。そこで、今回は薬疹の診断ならびに治療をおこなう際のポイントをいくつかあげてみます。
 最初のポイントは薬の投与開始後どのくらいしてから症状が現れたかという点です。初回投与と2回目以降の投与では薬疹が出現するまでの期間が異なることが多く、感作期間(アレルギーの準備期間)として初回投与では一般的に1~2週間前後かかるものが多く、2回目以降の投与の際には投与後数日以内に症状が現れることが多くなりますただし、これはあくまで目安で例外も多く、例えば湿しんタイプの薬疹では数か月、時によっては数年後に初めて薬疹が見られる場合もあります。
 次に、薬の種類によって薬疹のおこりやすさが異なるという点です。たとえば、何種類も薬を投与されている場合には抗生物質や解熱剤、血圧を下げる薬や不整脈を治す薬、神経科などで処方される薬などが比較的薬疹をおこしやすく、これらのものから原因薬として疑っていく必要があります。一方、ビタミン剤などでも非常に稀ながら薬疹をおこすことがあり、つまり、薬疹を全くおこすことのない薬剤というものはありません漢方薬は安全ということでご希望される方もいらっしゃいますが、これらも当然例外ではなく、一般薬と同じように薬疹をおこすことが知られています。
 三番目には、薬疹にもいろいろな皮膚症状がみられますが、薬の種類によって皮膚症状にいくつかの特徴がみられるという点です。解熱鎮痛剤や抗生物質などでよく見られる固定薬疹は一見してそれとわかりますが、虫刺されなどとして長期間治療をうけていることも少なくありません。その他にも、ニューキノロン系抗生物質による光線過敏症、降圧剤(βブロッカー、カルシウム拮抗剤など)による苔癬型・乾癬型薬疹など皮膚症状から原因薬を特定できる場合も少なくありません。
 四番目には、薬疹でも場合によっては重症化することがあり、命にかかわる場合もあるという点です。重症型薬疹としては、スティーブンス・ジョンソン症候群、ライエル症候群、薬剤性過敏症症候群などがあげられますが、これらは早期の薬剤中止、入院の上での治療 ・管理が必要となります
 「たかが薬疹、されど薬疹」症状の軽いうちに薬疹を疑い、原因薬剤をできるだけ早くみつけて中止することが最も重要になります。
 薬疹の診断を確定するためには、一度薬を中止して症状が改善した後、再び薬を投与して同じ皮膚症状がみられるのを確認すること(誘発試験)が必要となります。しかし、折角よくなったものをわざわざ悪くするのには患者さん自身にも抵抗がありますし、手間暇がかかりますので実際に誘発試験を行うことはあまりありません。重症の薬疹の被疑薬については、安全性の面から誘発試験は行いません。しかし、原疾患の治療のために中止したくない薬については、誘発試験で原因薬かどうかを確認する必要があります。もし原因薬だとわかれば、当然代わりの薬に変更しなければなりません。他に代わりの薬がなく、かつ、薬疹としての皮膚症状が軽症のものに限っては、薬の投与を続けながら薬疹の治療を行う場合もでてきます。このような場合には薬疹が治癒することは期待できず、薬の投与を続けるうちに薬疹が重症化することがありますので細心の注意が必要となります。一般的には、皮膚症状、経過より薬疹を疑い、治療ならびに被疑薬の中止により症状の改善されたものについては薬疹と考えて、その後は被疑薬の使用を中止します。原疾患に対して薬の投与がどうしても必要な場合には系統の異なる代わりの薬を選ぶ必要があります系統の同じものを投与した場合には薬が代わっても交叉反応をおこして薬疹の見られることがあります。
 以上をまとめると、先ず薬の投与期間、皮膚症状より被疑薬を絞り込みます。可能であれば、絞り込んだ薬をすべて中止して経過をみますが、すべてを中止することができない場合には絞り込んだ中から薬疹をおこしやすい薬から順番に中止していきます。見当をつけた薬剤を中止しても薬疹の症状がよくならない場合にはすべての薬を中止して経過をみる必要があります。
いずれにせよ、薬疹の診断と治療(特に、皮膚症状の特徴から薬疹の見きわめをする[正確には薬疹を疑う])には皮膚科専門医の知識が必要となりますので、薬の投与を受けられている時に何か皮膚の異常に気付きましたら、お早めにご相談ください

(第4回)じんま疹と食物について

 食物を食べた直後にみられるアレルギー性のじんま疹の他にアレルギーとは関係なくみられる食物によるじんま疹があります。仮性アレルギーと呼ばれるもので、不耐症(イントレランス)と呼ばれることもあります。代表的なものはアスピリン不耐症で、アスピリンなどの酸性非ステロイド抗炎症薬や食物中のサリチル酸化合物や色素や防腐剤によりじんま疹がみられます。正常人でも0.3%の人に見られますが、慢性じんま疹患者では23~28%に認められるといわれています。自然食品の中で、サリチル酸含有量の多い食品としては、野菜類として、キュウリ、トマトなど、果実類として、リンゴ、ブドウ、モモ、イチゴなどがあげられます。人工着色料としてはタール系アゾ色素(タートラジン(食用黄色4号)など)や、防腐剤として安息香酸ナトリウム、パラベン類などがアスピリン不耐症の誘発物質としてあげられます。
食物アレルギー以外のじんま疹としては、その他に、魚肉(サバなど)内に潜むアニサキスなどの寄生虫が原因となるじんま疹や胃粘膜に感染しているピロリ菌が原因となるじんま疹などがあげられます。

(第5回)アレルギー診療の現況(特にアトピ―性皮膚炎)について

 アトピ―性皮膚炎(以下AD)の治療は皮膚科以外にも小児科、内科、アレルギー科などいろいろな診療科で治療が行われています。その中で診療のスタイルを大きく二つに分けると、ステロイドを積極的に使って皮膚症状をコントロールしていくことに主眼を置くタイプと、原因、悪化因子の検索、除去を中心に診療を行っていくタイプに分かれます。一般に、前者に多くの皮膚科医があてはまり、後者にごく一部の皮膚科医とそれ以外の科(主にアレルギー科)の多くの医師があてはまるものと思われます。
 前者の皮膚科的な治療方針をもう少し詳しく説明しますと、まず皮膚の症状に応じて適切な「強さ」のステロイドの外用療法を行い、皮疹が軽快するとともに外用剤の内容を(弱いものに)変えていき、日常生活に差支えがない程度にコントロールしていくというものです。強いステロイド外用剤を塗っても効果のない場合や、ステロイド外用剤の「強さ」や「使用量」の減量ができない場合には悪化因子を検索・除去していき、その上で適切なステロイド外用による治療を行い、症状の改善を目指します。ただし、ステロイド外用を「効果なし」と判断するには、その薬が十分な量、範囲、期間、きちんと塗られていたかどうかを確かめておく必要があります。
 他方、アレルギー科で多くみられる後者の治療方針については、できるだけステロイドを使わずに、あるいは弱いステロイドを使いながら悪化因子を検索・除去することで治していくというものです。ただ、こちらの方の治療方針の難点は不必要な検査を多くしがち(費用が多くかかる)で、しかも、よく検討しないと検査結果がイコールADの悪化因子とは言えないのですが、概して検査結果から安易に悪化因子を特定してしまいがちです。患者さんの立場から言えば、悪化因子が特定できれば安心して治療を受けられますので大変喜ばれますが、悪化因子を除いても症状が改善されないときの失望感のほうも計り知れませんので安易な悪化因子の特定(限定)はできる限り控えなければなりません。
 上記の二通りの治療方針に関してどちらが良いのかということですが、軽症および(軽めの)中等症くらいまでのADではいずれの治療方針でも良くなりますので、大きな違いはありませんすなわち、皮膚科的な治療を行うと症状が早く治り、治ってからはスキンケアのみか弱いステロイドを時々使用する程度で十分にコントロールできますし、一方、アレルギー科的な治療でも時間はかかりますがたいていの場合治ります。
 一番問題になるのは、中等症以上、特に重症のADの場合です。この場合、皮膚科的なアプローチによる治療でしか改善は望めません特に、適切なステロイドを使わない治療をだらだらと続けても悪くなる一方で、原因検索・除去だけではとうてい治すことはできません。ADの湿しんを火事にたとえますと、火の勢いが湿しんの状態を表し、消火活動にあたるのがステロイドの外用で、火の元をおこさないようにする防火活動が原因検索・除去にあたります。つまり、いったん火事がおこったときに一度は消火をしないと、防火活動だけを行っても全く意味がありません。特に、火の手が強いときには十分な消火活動(強いステロイドの外用)をしなければ鎮火することはできません。一方、完全に火が消えないうちに消火活動を止めますと、再び火の勢いは強くなってきます。もちろん、火事(AD)がおさまってからもだらだらと消火活動(ステロイド外用)を行う必要はありませんし、鎮火(治癒)した後に、火の元を再びおこさないよう(再発しないよう)に原因の検索・除去をしなければならないのは言うまでもありませんただし、検査でひっかかったからといって、アレルギーの方にばかり目が行き過ぎますと、あれもダメ、これもダメということで何もかもダメになってしまうことがありますので注意が必要です。特に、乳幼児期の食事アレルギーは2~3歳を迎えるころには多くの場合治りますので、本人のストレス、お母さんのご苦労を考えますと、余程のことがない限り食事制限をおこなう必要はありません。
 ADの症状は千差万別で、悪化因子も症例ごとに異なっており、画一的な治療法、特効薬はありません。従って、何科であれ、症状の変化にあわせてじっくり時間をかけて診察をうけることのできる医療機関で診察を受けられるのが一番よいものと考えます短い時間の診察時間で詳細を見きわめることはほとんど不可能ですし、薬の出しっぱなし、検査のやりっ放しでは到底良くなりません。ADはオーダーメードの治療が最も必要とされる疾患と考えられます。
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