アレルギーに関する情報

(第6回)接触皮膚炎(かぶれ)について

 外来で多く見られる疾患のひとつに湿しんがありますが、そのうち原因が外部からのもので皮膚に接触した部位に症状のみられるものが接触皮膚炎(かぶれ)です。ある皮膚科の施設からの報告では皮膚科外来受診総患者中の接触皮膚炎のしめる割合は6~8%、別の施設からのものでは新患患者中の接触皮膚炎患者のしめる割合が約23%前後となっています。施設によって、また手湿しんのみの症例を含めるかどうかで新患患者数における接触皮膚炎の割合は異なるものの、数多くみられることには違いありません。かぶれは程度の差こそあれ、誰もが一度は経験しうるものですが、症状の非常に軽いものでは気づかれることなく治ってしまう場合もあります。
 かぶれは刺激性のものとアレルギー性のものに分かれます。皮膚に十分な濃度で、十分な時間接触すれば、直接細胞を障害して皮膚炎を生じる物質を刺激物質と呼びますが、刺激性接触皮膚炎の代表的なものとしては、強酸や強アルカリなどの強刺激物質によっておこる紅斑、水ほう(みずぶくれ)、壊死[えし]、潰瘍[かいよう]などの皮膚病変や界面活性剤有機溶媒などの弱刺激物質によっておこる進行性指掌角皮症(主婦などに多く見られる手あれ)などがあげられます。一方、アレルギ―性接触皮膚炎は皮膚に接触した化学物質が免疫反応を介して皮膚炎をおこすもので、初回に皮膚に付着したときには5日後から2週間後に症状がみられますが、2回目以降の接触では12時間から24時間後に原因化学物質が接触した部位にかゆみをともなう紅斑、丘疹、浮腫、小水疱が出現します。アレルギ―性接触皮膚炎で多く見られる原因物質としてはコバルト、ニッケル、クロム等の金属があげられます
 かぶれの治療はステロイド剤の外用で症状をおさえることですが、原因物質との接触を断たない限り症状は完全には治まりません特に、シャンプー、リンスやクレンジングなどの化粧品、洗剤などは刺激性皮膚炎をよく起こしますが、かぶれの原因物質であることに気が付かずに使い続けますとなかなか治りません。毛染めや装飾品のかぶれなどは本人が原因に気づいていても、おしゃれの方を優先させてしまい症状をひどくさせてしまっている場合もあります。また、先にあげた金属かぶれについては、汗をかく時期に症状が目立ち、その他の時期には無症状のこともしばしば見られます。金属成分は青色の染料や革成分あるいは食べ物にもわずかながら含まれていることがあり、原因として気づかれていないこともよくあります。そこで、湿しんが見られた場合に原因物質を探すための検査としてパッチテスト(背中あるいは上腕部に検体を48時間貼布後、48、72時間後[2日目、3日目]に判定)を行うわけですが、検査中は入浴や激しい運動を控えていただけなければなりませんので、たいていの場合は涼しい季節に行います。
 難治性の湿しんでお悩みの方はかぶれの可能性がありますので、原因検索のためのパッチテストを是非一度ご検討ください。原因物質を特定して除去することができれば完治することも夢ではありません。

(第7回)治りにくいアトピ―性皮膚炎について(その1:ストレスとの関係)

 アトピ―性皮膚炎(以下AD)は小児の皮膚病で思春期頃までには軽快すると言われていましたが、最近は成人になっても症状が続いたり、成人になってはじめて発症する場合も見られます。一般には、ステロイド外用療法で症状を落ち着かせることができますが、きちんと治療を行なってもよくならない場合、すなわち治りにくい場合には悪化因子の存在を考えなければなりません。悪化因子の除去がADの改善、寛解につながりますので悪化因子を見つけることがADの治療には欠かせません。ADの悪化因子といえば、幼児期の卵や牛乳のアレルギーが、学童期以降ではホコリやダニなどのアレルギーがすぐに思いうかびますので、「アレルギー検査をしてください」とか、「検査ではアレルギーはありませんでした」などと患者さんや患者さんの家族の方から外来でもよく言われることがあります。一般にはアレルギーの強い患者さんがアレルギー対策をしていない場合にはADの症状がひどくなることが多いのですが、逆にADの症状がひどい場合に必ずアレルギーが強いとは限りません特に、掻破[そうは](引っかくこと)はADの主な悪化因子のひとつで、普通は湿しんがあって痒いから掻くのですが、時に痒みがないのに掻いてしまうことがありますこのような場合の掻破は主にストレスによるものとされています。例えば、両親の愛情を独り占めすることのできていた幼児に下の子ができて、今までのように両親に構ってもらえなくなったときに親の注意を引くためにかきむしって湿しんが急激に悪くなることがあります。成人でも、イライラしたり焦ったりすると掻く(情動誘発)、気がつくと掻いている(自動的)、帰宅後や就寝前などに必ずしばらく掻く(定期的)、掻きだすと止まらない(精神的依存)、いつも同じ様に両手でこするように掻く(様式的)等を特徴とする嗜癖的掻破行動[しへきてきそうはこうどう]によってADが悪化する場合がみられますこのような場合には、実際に掻いていることを認識させ、自覚させて、最後に止めさせることが必要です。
 小児のADでは、母親がアレルギーにばかり目がいきすぎたり、泥んこ汚れの子どもの皮膚が気になりすぎたりしますと、母親の食事制限をはじめとする強迫傾向や過度の清潔志向につながり、子どもの心身に影響をおよぼし、ADを難治化させる可能性がありますので悪化因子の除去や治療とともにその点にも留意しなければなりません。

(第8回)治りにくいアトピ―性皮膚炎について(その2:かぶれとの関係)

 アトピ―性皮膚炎(以下AD)は敏感肌を特徴としますので、刺激をうけやすく健康な肌の方と比べますと非常にかぶれ(接触皮膚炎)をおこしやすくなっています。日常生活で使用する石けん、シャンプーやリンス、洗剤、化粧品などで湿しんが悪くなる場合がありますので注意が必要です。これらには界面活性剤、防腐剤、香料、殺菌剤、金属成分などいろいろな成分が含まれていますので、知らず知らずに悪化因子となっていることがあります。東京医科歯科大学皮膚科外来で成人型AD患者を対象に検討を行なったところ、シャンプー、リンスの変更で皮膚症状の改善のみられたものが43%にものぼったとのことです。石けん、シャンプー、化粧品などに今まで注意を払われていなかったADの方は一度肌に優しいタイプのものを試してみてください。
 尚、石けんやシャンプーなどを使った後にかゆみを感じたり、赤くなったりしたことがある場合には一度パッチテストを行って使い続けてよいものかどうかを調べておかなければなりません
 また、治療薬(特にアンダームなどの非ステロイド系の外用剤)、消毒薬などでもかぶれることが少なからずありますので、これらについてもご注意ください。
 以上のように、ADにかぶれを伴うことは少なくありませんし、かぶれがある場合には、かぶれの原因を除かなければ症状の改善が望めません。一方、ADとしてずっと治療を受けてこられた方のなかにも、コバルトなどの金属アレルギーによる仮性アトピ―性皮膚炎(金属かぶれであって、本当のADではない)の場合がありますので、ADの場合、血液検査などのアレルギー検査とともにパッチテストを行ってかぶれの原因検索、原因除去を行う必要がありますしかし、あまり神経質になりすぎて、検査、検査であれもダメ、これもダメでは息が詰まりますので、治療を行っても良くならない(治療をやめるとすぐに悪くなる)、あるいは症状がひどい場合に限って検査を積極的に行い、原因をつきとめていくようにするのがよいかと思います

(第9回)治りにくいアトピ―性皮膚炎について(その3:感染症との関係)

 アトピ―性皮膚炎(以下AD)患者は皮膚のバリア障害により皮膚の表面から微生物がしばしば感染します。幼児期のとびひ(伝染性膿痂疹)、みずいぼ(伝染性軟属腫)、カポジ水痘様発疹症(単純ヘルペスの重症タイプ)などがその代表例です。その他には、ADの患者の皮膚病変部には黄色ブドウ球菌(以後黄ブ菌)が数多く存在する事が知られていますし、難治性の一部のAD患者では血中カンジダ、マラセチアIgE抗体が上昇しています。また、AD患者の30%に病巣感染(扁桃炎、歯根尖膿瘍など)がみられるとの報告があります。
 一時はやったイソジン超酸性水による治療法はADの悪化因子として黄ブ菌の皮膚感染を考えたものですが、ステロイド剤の外用だけで湿しん病変が軽快するとそれに伴い黄ブ菌が消失しますので、イソジンや超酸性水の皮膚に対する刺激性を考えますと、皮膚の敏感なAD患者ではこれらの治療は一般には控えるべきです。
 病巣感染の治療を行なって、あるいは血中カンジダ、マラセチアのIgE抗体陽性例において腸管内のカンジダや皮膚の表面に常在するマラセチアに対して内服薬による抗真菌療法を行なってADの症状の改善を見る例がありますので、病巣感染合併あるいは、血中カンジダ、またはマラセチア抗体陽性のADにおいて通常の治療で良くならない場合に限っては抗菌療法は一度試してみても良い治療です
 但し、感染症を心配しすぎて過度に予防や治療を行なうことは皮膚のダメージや耐性菌の出現などにつながることもありますので注意が必要です。

(第10回)アトピー性皮膚炎の特殊療法について(本当に効いているの?)

 アトピ―性皮膚炎(以下AD)の治療は、敏感肌(乾燥肌)に対するスキンケアと炎症(湿しん)をおさえるステロイドの外用療法を二本柱に、悪化因子の検索、除去を並行して行なっていきます。ところが、ステロイドに対する過度の恐怖から十分(適切)にステロイドを使わないために症状を抑えることができず、どんどん悪くなっていくケースをよく見かけます。そのようなケースでよく見られるのは、悪化因子の検索はほったらかしておきながら、ステロイドは使いたくないという思い込みからステロイドに代わるいろいろな治療を行なっているケースです。高血圧や糖尿病の治療を考えてみていただくとよくわかると思いますが、食事療法や運動療法を全く行なわないで、しかも血圧や血糖値を下げる薬を使わないで果たして病気をよくすることができるでしょうか?食事療法や運動療法にあたるのが悪化因子の除去で、血圧や血糖値をさげる薬にあたるのがステロイドです。このように当てはめてみますと悪化因子を取り除くこともなく、ステロイドも使わずに症状をおさえることができるかどうかは一目瞭然です。ところが、ステロイドの外用薬によって直ちに長期の全身投与でみられるような副作用があらわれるというような誤解をいまだに一部の方々は持っておられます。このような方々においてはステロイドを適切に使用していないために症状がよくならないばかりか、ステロイドに代わる特殊な治療のみに頼っているケースでは余計に悪くなっています。
 ところで特殊な治療のうち、病院でも行なわれる治療としてはイソジン療法、超酸性水、漢方療法、紫外線療法などがあげられ、そのほかにもインターネット、アトピー関連雑誌などではADの治療に関する情報が満ちあふれています。ここでは、個々の情報をもれなく検証するのではなく、特殊療法についての一般的な皮膚科の考え方を述べさせていただきます。
 「よく効く!!」とか、「これで治った!!」とかいう文句をよく目にしますが、ADという病気は決してすぐに治る病気ではありません。ADを起こす体質というものは一生続きますので、仮に一度治ったようでもスキンケアを怠り、アレルギーがある場合にはその予防をないがしろにして生活を続けると直ぐに再発します。逆に、一度治った後スキンケアやアレルギー対策に注意を払い続けると全く症状がでないこともあります。つまり、特殊な治療を行なって治ったということは、その治療が実際に効いている可能性もありますが、環境因子などの悪化因子が自然に取り除かれ、治った場合も考えられますし、もともとADでなかった場合も考えられますので本当にその特殊な治療で治ったかどうかを見きわめるのにはその都度検討が必要です。しかも、プラセボ(偽薬)効果といって、薬と偽って偽の薬(食塩水)で治療した場合においてさえADにおいては約20%で効果がみられることから、特殊な治療の効果判定は慎重に行なわれなければなりません。しかも、先のような誇大広告では先ず全例、効かなかった例や、悪化した例については全く触れられていません。さらにつけ加えると、ステロイドが如何に恐い薬かを喧伝したあとに高価な商品の案内をしているものはアトピービジネスを目的としたものが多く、特に注意が必要です
 特殊療法が全て間違ったものとはいえませんが、EBM(evidence based medicine:根拠に基づく医療)という言葉が最近よく使われるように、科学的な裏づけのないものは医学の世界では一般には受け入れられません。ADの特殊療法では科学的な検証において有効性を確認されたものはほとんどありませんしかし、中には本当は効果があるにもかかわらず、その科学的な証明が遅れているものもあるでしょう。特に今後、プロバイオティクスなどの腸管免疫に関連する治療については将来的に有効なものが現れるようになるかもしれません。
 特殊療法への依存は大抵の場合ステロイド忌避から起こっていますが、現時点ではステロイドに完全にとって代わるADの治療薬はなく、先にも述べましたように正しくステロイドを使って、悪化因子を除去しながら、スキンケアを心がけるというきわめて単純な治療方針で症状をコントロールしていくことがADの治療の基本となります。特殊療法を行なった場合も、一般の治療と同様に遅くても数週間以内に効果は必ず現われますので、数週間使ってもだめなものは止めましょうましてや、治療を行なってもひどくなるときには直ちに止めましょう。特に、「ステロイドの毒抜き」と称してジュクジュクになって、症状がひどいのにもかかわらず、脱ステロイドと特殊療法を行なうことは一番避けなければなりませんジュクジュクが自然に治ることはまずありませんし、この状態でステロイドを使わずにいますとどんどん悪くなる一方で、大変なことになってしまいますのでご注意ください。

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