皮膚科全般に関する情報

(第1回)スキンケア(その1:市販の保湿剤について)

 病院で処方できる保湿剤は白色ワセリン、尿素軟膏、ヘパリン類似物質、ザーネ軟膏など非常に限られています。それに比べて一般に出回っている保湿剤にはその他にもセラミド、ヒアルロン酸、つばき油などがあり非常にバリエーションに富んでいます市販のものが病院で処方されたものよりも良ければそちらを使ってください。ただし、市販のものは保険が使えませんので値段差分の効果があるかどうかをよく考えてから使ってください市販の外用剤で気をつけていただきたいのは、赤ちゃん用、低刺激、無添加、無香料、アレルギーテスト済みといった表示のあるものがすべて安全、安心ではないということです。特に、お店の方から何の根拠もなく「絶対に安心だからこれを使いなさい」と言われて使用されている場合がありますが、特定の有害物質が含まれていないだけで、それに代わる同じ働きの物質が必ず含まれています本当に何も入っていなければ薬は腐ったり、品質が変わったりしてしまいます。結局、これが一番というものはありません。一度サンプルを使ってみて、使い勝手の良いものを続けてみてください。尚、使い始めは調子が良くても途中から肌にあわなくなることもありますし、肌の調子によって使用後のトラブルがでたり、でなかったりすることがありますのでこの点にもご留意下さい。

(第2回)夏に多い皮膚病

 夏は一年のうちで最も多く皮膚病がみられますが、大きく分けると、(1)紫外線によりみられるもの、(2)草花、虫などが原因になるもの、(3)汗により悪くなるもの、(4)プール(海水浴など)の時期に悪くなるものなどがあげられます。
 (1)としては、病的な光線過敏症以外にも日光皮膚炎(日焼け)は長時間無防備な状態で紫外線にあたりますと大なり小なりどなたでも症状がみられますので紫外線対策を必ず行う必要があります。特に、色白で日焼け後に肌が黒くならない人は紫外線にあたりすぎますと将来的に皮膚のシミやシワ、皮膚がんなどができやすいのでしっかりと紫外線対策を行うよう心がけてくださいその他では、紫外線により単純ヘルペス(ウイルス感染)のみられる方が増えてきます。
 (2)に関して、代表的な植物としては、ウルシ、ハゼノキ、ギンナン、キク、シソ、イラクサ、センニンソウ、セリ科、クワ科、ミカン科などがあげられます。また、虫による皮膚炎としては、ハチ、アリ、ムカデなどの刺咬によるもの、蚊、ブユ、ノミ、トコジラミ、ダニなどの吸血によっておこるもの、毛虫、ハネカクシ、カミキリモドキなどの接触によっておこるものがあげられます。
 (3)としては、水虫、たむしの白癬(はくせん)症、カンジダ症、くろなまず(癜風)などの真菌症、あせも、あせものより(汗腺膿瘍(かんせんのうよう))、アトピ―性皮膚炎、金属かぶれなどがあげられます。
 (4)としては、裸で体を触れ合うことで子ども同士のあいだで接触感染するとびひ(伝染性膿痂疹(のうかしん))、みずいぼ(伝染性軟属腫(なんぞくしゅ))などが代表的です。海水浴ではクラゲ、サンゴ、イソギンチャクなどによる皮膚炎、ゾエア(甲殻類の卵が孵化したもの)による海水浴皮膚炎などがみられます。

(第3回)子どもに多い皮膚病

 子どもは大人に比べて皮膚が薄い、柔らかい、弱い、といった特徴があり、さらには、十分に免疫機能が発達していないこともあり、そのために子どもの皮膚は様々な外からの刺激に対し弱く、感染を起こしやすくなっています。そのため、子どもは大人よりも特定の皮膚病が多く見られる傾向にあります。
 1989年~1998年の10年間における国立小児病院皮膚科外来新来患者数についての統計での各年齢ごとの上位5疾患を引用しますと、0~1歳では、アトピ―性皮膚炎 30%、その他の湿しん・皮膚炎 24%、母斑類 8%、血管腫 7%、真菌性疾患 5%、2~6歳では、アトピ―性皮膚炎 30%ウイルス性皮膚疾患 13%、その他の湿しん・皮膚炎 13%、母斑類 9%、膿皮症(細菌性疾患) 9%、7~12歳では、アトピ―性皮膚炎 25%、その他の湿しん・皮膚炎 15%、ウイルス性皮膚疾患 12%、母斑類 10%、膿皮症 (細菌性疾患)6%、13~15歳では、アトピ―性皮膚炎 31%、その他の湿しん・皮膚炎 17%、ウイルス性皮膚疾患 8%、母斑類 8%、尋常性ざ瘡(にきび)7% となっています。年齢間での違いについては、2~6歳だけウイルス性疾患がその他の湿しん・皮膚炎より多くなっているのが特徴です。内訳を細かくみてみますと、0~1歳の真菌性疾患で最も多くみられるのは(カンジダ感染による)乳児寄生菌性紅斑、2~6歳のウイルス性皮膚疾患で最も多いのは伝染性軟属腫[でんせんせいなんぞくしゅ](みずいぼ)、次に尋常性疣贅[じんじょうせいゆうぜい](いぼ)となっています。7~12 歳のウイルス性皮膚疾患では尋常性疣贅(いぼ)が伝染性軟属腫(みずいぼ)を上回り、単純性疱疹(ヘルペス)がそれに続きます。皮膚のバリア障害と免疫異常を二つの柱とするアトピ―性皮膚炎が全年齢を通じて最も多くみられており、その他の上位の疾患についても未発達な、皮膚の構造・機能および免疫機能によって発症するもの(青色太字のもの)が大部分を占めています。
 子どもは常に皮膚が汚れやすい環境にあり、自分自身ではスキンケアができないため、そのスキンケアは親の影響を受けやすいものになっています。親が間違ったスキンケアを行っていれば、皮膚のトラブルの絶えない子どもになるであろうし、正しいスキンケアを行っていれば、たとえアトピー体質であっても症状は軽くすむか無症状のままの期間が長くなります。皮膚病の治療についても、子どもにまかせっきりにするときちんとできていないことが多く、親が適切に治療の手助けを行うとともに、正しいスキンケアを子どもに習慣づけるようにしてください

(第4回)スキンケア(その2:しみ、しわとり製品(外用剤)について)

 しみやしわなどの老人性の皮膚変化に対しては、皮膚科では少し前まで病気ではないからと放置することが多かったのですが、美容皮膚科の名のもとこの頃は積極的に治療を行なうようになってきました。レーザー治療や形成外科的な手術療法のほかにも、最近はさまざまな外用剤が登場して治療の選択枝が増えてきています。
 しみ治療の外用剤の代表的なものとしては、ビタミンC、コウジ酸(現在は禁止中)、アルブチン、エラグ酸、ハイドロキノン、ルシノールなどがあり、一方、しわ治療の外用剤の代表的なものとしてはレチノイン酸があげられます。
 これらの外用剤にはメーカーが製造した市販品(化粧品店、薬局で販売、一部日本で未認可の海外直輸入品あり)と皮膚科で提供されるものとがあります。市販品は化粧品、医薬部外品が相当しますが、日本では薬事法の規定によりしみを治療したり予防しない程度に有効成分を少量配合したものとなっています。従って、同じ成分の商品でも、一般には市販品よりも皮膚科で出されるものの方が濃度が高く、より効くものが多くなっています皮膚科で提供されるものについても、製造メーカーで作られたもの[商品そのものが医療機関専用に提供され、化粧品店や薬局では取り扱いのないもの]と(成分だけメーカーから提供してもらい、患者さんに渡す直前に)皮膚科独自で調合されたものとに分かれます。メーカー品と調合品のどちらがよいのかということですが、それぞれに一長一短があり、どちらが良いとも言い切れません。メーカー品については、トラブル(副作用)を避ける傾向から濃度や効果も少し控えめに設定されがちで、また、どうしても品質を一定期間保つ必要性からいろいろな添加剤が含まれていますのでその点を考慮しなければなりません。一方、調合品については、医師の責任のもといろいろな薬剤を配合、調整していきますが、皮膚科医は基本的には薬効成分について化学的、薬学的な詳細な知識を持ちあわせていませんので、品質の安全性や衛生面においては少し不安が残るのも事実です。従って、皮膚科でこれらの外用剤を購入される場合、同じ成分のものが両方とも提供されているときには安全性、衛生面を重視するのであればメーカー品を、効果面を重視するのであれば調合品を選ばれるのがよろしいかと思います。尚、皮膚科で提供される(前述の)しみやしわに対する外用剤につきましては、いずれも保険診療の対象外ですので、全額患者さんのご負担となります。

(第5回)冬に多い皮膚病-がさがさ、かゆみ予防にはスキンケアでまずお手入れを!

 冬に多い皮膚病には気温の低さに伴うもの、乾燥に伴うものがあります。先ず、前者の代表的なものにはしもやけ、網状皮斑(もうじょうひはん)、レイノー症状などがあげられます。これらはいずれも末梢の循環障害に基づく皮膚障害ですが、内科的な疾患に伴ってみられる場合がありますので、症状や経過によってはいろいろな検査を行ない、原疾患を突き止めなければなりません。特に、冬場になると指先がおかしくなる方はご注意ください。そして、乾燥に伴うものですが、冬の皮膚病としてはこれが最も多く、非常に多くの方がこの皮膚の乾燥性疾患にわずらわされています。そこで、代表的な乾燥性の皮膚疾患について順次みていきましょう。
 先ず、これからの時期最も多くみられるものとしては老人性の皮膚そう痒症、乾皮症、乾燥性湿しんがあげられます。空気の乾燥とともに皮膚の表面が乾燥し、特に下腿、腰の部分を中心に痒みと掻破に伴う湿しんが目立つようになる状態で、ナイロンタオルの使用、石けんの使いすぎなどは症状を悪化させます。布団に入って体が温まってから痒みが強くなるのが特徴です。湿度が高く、汗をかきやすい夏期になると症状は自然に治まってきます。原因として皮脂腺由来の脂質(トリグリセリドなど)の減少、角質細胞間脂質(セラミド、脂肪酸)の減少、アミノ酸などの天然保湿因子の減少があげられます。
 次に主婦の手湿しんですが、洗剤などの界面活性剤で皮膚の表面の脂質が取り除かれたり、角質が変性したりした状態で、水に漬けると水溶性の低分子物質(天然保湿因子)が取り除かれ、手の皮膚はほとんど吸湿性を示さないようになります。この状態が繰り返されることで、皮膚の乾燥、炎症が進行していきます。料理人や美容師・理容師、脂溶性溶媒を扱う工員などでも同様の症状(高度のものが多い)がみられます。
 ところで、小児では生理的に乾皮症がしばしばみられます。生後6か月までは母親のホルモンが体内に残っているため皮脂の分泌が高いのですが、この時期を過ぎると皮脂がほとんど分泌されなくなるため冬季には6~7割の子どもで乾皮症がみられるようになります。これは自分自身のホルモン分泌が盛んになる思春期頃には自然になくなります。
 最後に、冬季に悪化することの多いアトピー性皮膚炎(以下AD)についても触れておきましょう。一般にAD患者では典型的な湿しんの病変以外にも乾燥して痒みをおこしやすい皮膚がみられます。毛穴が盛り上がったざらざらした皮膚に対して「アトピー皮膚」とよばれるものですが、肉眼的にはみえない皮膚炎が持続しているためにみられる二次的な変化です。AD患者の皮膚ではバリア機能の重要な角質細胞間脂質のセラミドの減少、角層中のアミノ酸の低下がみられます。
 ここまで挙げてきた疾患(青色太字部分)はいずれも皮膚の乾燥がもとで二次的に湿しんをおこしてくるもので、ひとたび湿しんがみられればステロイド剤の外用で症状を抑えなければなりませんが、一度治療によって症状が良くなってからも再発しないようにするためには皮膚の乾燥およびバリア障害をおこさないようにしなければなりません。そこで、生活習慣上の予防策としては、加湿器で室内の湿度を50%以上に保つようにして、かゆいからとボリボリ引っかいたり、風呂で石けんをつけて、手ぬぐいでごしごし洗ったりすることは是非とも避けなければなりませんただし、頭、顔、わきの下、股などは皮脂分泌がよく、微生物の多い場所ですので、不潔にならないように石けんで洗わなければなりません。
 これまでの話からもおわかりのように、冬の皮膚病予防としては皮膚の乾燥、バリア障害に対する対策が一番重要です。特に、今までに冬場に皮膚のがさつきがみられたことのある方、タオルで少しだけ強めに洗っただけで皮膚が傷んだことのある方は、これからの冬季の乾燥しやすい時期には現在の皮膚の状態にかかわらず毎日欠かさずスキンケアを心がけてください。
 スキンケアについては、皮膚科では主にワセリン、尿素、ヘパリノイド含有のヒルドイドを使用していますこのうちどれを使用するかは使用する個人の好みによります。べとつき感が気にならなければ皮膚保護作用もありワセリンが一番使いやすいのですが、クリームやローション基剤の尿素やヒルドイドなども頻用されています。当院でも、べとつき感が嫌いな方にはヒルドイドのローションもしくはクリームを処方し、それ以外の方には主にワセリンを処方しています。尿素は皮膚にキズがある場合には刺激症状が出る場合がありますので、角質肥厚の目立つ場合に使用しています。いずれも、1日2回、朝起きたときと、入浴後よく水分をタオルでおさえて取り除いた直後に塗ってください。乾燥しやすい場所を中心に広めに塗り、つけすぎない程度に十分量塗ることが重要です。
 皮膚科で処方される保湿剤と薬局で扱われるスキンケア商品の違いについて最後に触れておきます。上記のワセリン、尿素、ヒルドイドは薬局でも普通に市販されています。聞いたことのあるメーカーの商品であれば皮膚科で処方されるものと違いはほとんどありません。AD、手あれ、ご年配の方の乾燥皮膚、いずれにつきましてもごく軽症で、かゆみも赤みもなく、なおかつ皮膚科を受診する時間のない方は、薬局で手にはいる保湿剤でしばらく様子をみられても構いません尚、これらの薬局の保湿剤を使用される場合でも、症状が悪化する場合や、保湿剤としての十分な効果がみられない場合には必ずお早めに皮膚科を受診してください。このような皮膚科を受診する時間のない方以外は、最近は一回に大量の薬(1か月分程度)を処方することができますので、保険の対象になっている上記の保湿剤については皮膚科医の処方で手に入れていただくほうが経済的です 
 皮膚科で保険対象薬として処方することができないもので、薬局などでしか手に入らない(皮膚科でも自費扱いでの販売は可能な)保湿剤としてはセラミド、ヒアルロン酸などが挙げられます。特に、AD、高齢者の乾燥皮膚ではセラミドの低下がみられますので、先の保湿剤がしっくりこない方はセラミドを一度試してみるのもよいでしょう。合成セラミドとしては花王のキュレル、天然セラミドとしてはロゼット社のAKマイルドがあります。前者は薬局にて、後者はインターネットで直接購入することができます。
 冬の(乾燥による)皮膚病は一度症状がひどくなると治療してもなかなか短期間ではよくなりません。そのため、(繰り返しになりますが)症状が見られる前、軽い時期での対応、すなわち保湿対策が重要です。がさがさ、かゆみから少しでも開放されるためには「たかがスキンケア、されどスキンケア」毎日根気よく保湿剤を丁寧に塗り続けてください。


お役立ち情報ファイル

  • アレルギーに関する情報
  • 皮膚科全般に関する情報
  • なるほど!皮膚科豆知識
  • よくある質問集