なるほど!皮膚科豆知識

(第6回)つけ薬の真実-治らないのは誰が悪いの?(医者? あなた? 病気? 薬?) みんなで協力して治しましょう!!!

 皮膚科で最もよく使われる薬はつけ薬ですが、そのつけ薬が効かないときあなたはどうしますか?その薬が効かないのは誰のせいでしょうか?一緒に考えてみましょう。

(1)医者が悪い時 : 診断が間違っており、誤った治療をしている場合 
 水虫のときに湿しんの治療を行なっていたり、湿しんのときに水虫の治療を行なっていたりする場合がこれに当たります。いくら薬をつけても良くなりませんし、かえって悪くなります。皮膚科専門医であれば、たいていの場合途中で診断の間違いに気が付いて、つけ薬をかえます前医での治療を内緒にして新しい皮膚科を受診されますと、正しい診断ができずに誤った治療を繰り返すことになりますので、良くならないときにも必ず一度は元の皮膚科を受診してください(または、元の皮膚科での治療とその効果を新しい皮膚科医に伝えてください)。
(2)あなた(患者さん)が悪い時 : きちんと薬をつけていない場合 
 「塗らない薬は効かない」という言葉があるように、いくら良い薬があっても正しく塗っていなければ治りません。1日に塗る回数、一回に塗る量(範囲)、塗る期間どれかが一つでも欠けると期待される効果がみられません水虫を例に挙げますと、かゆいところにかゆい時にだけ薬を塗っていても一向に治りません。つけ薬を広い範囲にかゆみ(皮膚の症状)がなくなってもしばらくの間(最低1~2か月)塗り続けませんときれいに治りません。湿しんでも少しかゆみが治まって、つけ薬をやめますと直ぐにかゆくなって引っかいてしまい元に戻ってしまいます。この場合でもかゆみとは関係なく、皮膚の状態が良くなるまでは塗り続けなければなりません。湿しんでもひどいかぶれの場合には最低2週間くらい塗り続けなければ良くならない場合もあります。また、アトピ―性皮膚炎で重症の場合(体全体に湿しんがみられる場合)には、一回に薬を5~10グラム、1日1~2回、約1週間塗り続けなければ良くならないこともあります。そのような時には3日くらいで薬を止めたり、一回に塗る量が足りなければ当然良くなりません。   
(3)病気が悪い時 : 薬が効かない病気、病気の原因が除かれていない場合
 皮膚病については多くの方が必ず治るものと考えているため、直ぐに治らない場合には悪性のものか、内臓が悪い場合かのいずれかではないかと心配されることがよくあります。悪性のものは手術をすればなくなりますし、内臓の病気と関係している場合には内臓の病気が良くなれば皮膚の症状も改善します。ところが、皮膚病には悪性でもなく、内臓とも関係なく、つけ薬の効かない(効きにくい)慢性に経過する皮膚病が少なからずみられますこのような場合には、正しく診断をして皮膚病と長くお付き合いしていくしかありません。薬は症状を和らげる手助けにはなりますが、完全に治すことはできません。これにあてはまる代表的な病気に慢性色素性紫斑などが挙げられます。
次に、考えられるのは病気の原因が残っているために、つけ薬をつけても治らない場合です。一番良くみられるものは、主婦の手あれです。つけ薬をいくら塗っても、手袋をはめずに素手で水や洗剤に触れると悪化の一途をたどります。シャンプーやリンスによるかぶれ、女性の化粧品かぶれ、職業性のかぶれなど、その他にもダニアレルギーのあるアトピ―性皮膚炎患者がダニ対策をしていない場合などもこれにあてはまります。また、水虫の患者が足を良く洗わない場合、靴下や靴を長時間はき続ける場合、足ふきマットを長期間洗濯しないで使い続ける場合などもこれにあてはまります。これらは病気の原因や悪化因子を取り除く努力を患者さん自身がしておられませんので、その意味では②患者さんが悪い時に当てはめて考えた方がよいかもしれません。
(4)薬が悪い時 : 薬の副作用がみられる場合、薬の効果が弱い場合 
 つけ薬の代表的な副作用はかぶれです。特に、非ステロイド外用剤や抗菌剤での接触皮膚炎、光接触皮膚炎は外来でしばしば見られます。また、つけ薬に含まれる防腐剤などの添加剤でもかぶれることがあります。具体的には、ブフェキサマク(アンダーム)、クロタミトン(オイラックス)、硫酸フラジオマイシンによるかぶれ、ケトプロフェンによる光接触皮膚炎などが挙げられます。特に、クロタミトン、硫酸フラジオマイシンなどは市販のつけ薬の成分としてさりげなく含まれていることがありますので注意が必要です。
 ステロイドのつけ薬の副作用としては、毛のう炎などの感染症、皮膚の萎縮、多毛、酒さ様皮膚炎(顔面の赤ら顔)などが挙げられます。これらの副作用が見られたときには当然つけ薬を中止して、その副作用に対する処置をしなければなりません
 診断、薬の効能が正しいにもかかわらず、薬が効かないときには薬の効果が症状に対して弱い場合が考えられます。ランクの弱いステロイドばかりを使いますと、ひどい湿しんをおさえることはできませんし、水虫の薬にも種類はたくさんありますが、相性があって良く効く薬、あまり効かない薬があります。薬の効きが悪い時には、速やかに変更して良く効くものに替えなければなりません
 
 つけ薬で良くならない時には以上に示しました四つのいずれかの場合が考えられますが、皮膚科医の重要な仕事の一つはこの見極めにあります。
 (1)についてはあってはならないことですが、二つか三つの皮膚病に少しずつあてはまるところがあり、どれにするにも決め手にかけている場合、あるいは、めずらしい(その医者が知らない)病気に出会った場合などでは直ぐに正しい診断をすることはなかなかできません。経過をみたり、検査をしたりして正しい診断ができて初めて治療をすることができます。水虫などの見た目で診断のつきやすいものでも、かぶれや異汗性湿しんと区別がつかないことも少なくありませんので、このような場合には治療をしていくなかで誤診に気が付いて診断と治療を変えていくこともあります。
 ほとんどの皮膚病は症状、経過、検査などから正確な診断をすることはできますが、いろいろな治療(特につけ薬による治療)を行なっても良くならない場合もめずらしくありません。特に、(2)薬がきちんと使用されていない場合、(3)原因が取り除かれていない場合には患者さんの協力がなければ治すことはできません。しかし、現実には忙しくてきちんと薬が塗れないとか、病院に薬をもらいに来れなかったとかいう場合もしばしばありますし、原因をとり除こうにも美容師のシャンプーやパーマ液などによるかぶれは仕事をやめない限り良くなりませんので、このような場合にはなかなか思い通りに治すことはできません。
 慢性の皮膚病では、上記の四つのいずれにあてはまるかを医者と患者さんの双方で一緒に考えて、お互いに協力と理解をしながら治療に取り組むことが不可欠です。薬をきちんとつければ、あるいは原因をつきとめれば治る病気であれば治しきることを目標にします。病気の性質上治りにくい皮膚病や、原因をなくすことのできない皮膚病では、少しでも症状を軽くすることを目標にします。良くならないという理由だけで医者を替えるドクターショッピングは是非止めてください。廻り道になることが多く、下手をすれば症状を悪くさせるだけです。どうしても納得のいく説明が得られない場合には元の医者を通してセカンドオピニオンの相談をされてはいかがでしょうか。

(第7回)皮膚科の薬はどうして効くの?容器に入った薬は秘伝の薬なの?

 皮膚科の外来で、薬局の薬は効かないとか、内科でもらう薬よりも皮膚科でもらう薬の方がよく効くとかいう話をよく耳にします。果たして皮膚科では特別な薬や秘伝の薬がでているのでしょうか?
 先ず、薬が効かない一番の理由としては診断を間違えて治療(皮膚科では多くはつけ薬)が間違っていることが考えられます例えば足の裏がかゆいと、あるいは足の裏に水ぶくれがあると多くの方はすぐに水虫ではないかと心配されます。水虫以外にも足の裏がかゆくなったり、水ぶくれができたりすることがありますので、水虫であることをはっきりさせるためには一度顕微鏡検査で白癬菌がいることを確かめなければなりません。ところが、薬局で手軽に水虫の薬が手に入りますので、顕微鏡検査を一度もすることなく治療を続けても一向に良くならないという場合には水虫以外の皮膚病(汗疱[かんぽう]、接触皮膚炎、掌蹠膿疱症[しょうせきのうほうしょう]など)が疑われます。このような場合には皮膚科で新しい薬が処方されますが、皮膚科で特別な薬をもらったというよりも、適切な診断によって間違った薬から正しい薬に替えてもらったということになります。
 また、薬局や内科で同じ薬をもらっているはずなのに皮膚科でもらった薬しか効かないと言われる場合があります。同じ名前の薬でも薬によっては薬局の薬と病院で処方される薬とでは有効成分の濃度が異なっていたり、薬局の薬のほうには余計な成分が入っていたりして効果に差が出る場合があります。実際に全く同じ薬(商品)をつけているにもかかわらず皮膚科でもらった薬のほうがよく効いたという場合には、治るのに時間がかかる皮膚病でたまたま皮膚科で治療しているときに治った、あるいは、皮膚科で塗り方をきちんと指導を受けて適切に塗るようになって治った のいずれかの場合が考えられます。
 皮膚科の薬が特別な薬といわれる一番の理由としてはプラスティック容器に入れられた患者さんにとっては神秘的な(?)つけ薬の存在があげられます。一般的なつけ薬は製薬メーカーが製造したチューブや容器に入った薬ですが、その薬の入ったチューブや容器の表面には商品名、成分名、商品の有効期限が、一部のものには簡単な効能が記載されています。そのため製薬メーカーで作られたつけ薬はひと目でどんな薬なのかすぐにわかりますし、最近のインターネットが発達した状況では薬の名前から各自で副作用など様々な情報を検索することができます。これに対して皮膚科で処方されるプラスティック容器に入れられたつけ薬は、患者さんの手元に薬の説明書がない場合には中に何が入っているかわからず、その薬が効果抜群の場合には秘伝の薬としてもてはやされることがあります。はたして製薬メーカーが作った既製品のつけ薬よりも皮膚科で処方される中身のよくわからないつけ薬のほうが実際によく効くのでしょうか?ここでは実際に皮膚科で処方されるプラスティック容器に入れられたつけ薬とはどのようなものか検証してみましょう。その使用目的は主に四つに分かれますが、それぞれにマイナス面もあり、実際に当院ではどのようにしているか最後に触れさせていただきます。
(1)チューブが使いにくいために容器に移し変えただけのもの
 チューブの薬はしぼり出して少しずつしか使えませんので広い範囲に薬を塗るときには非常に不便です。また、薬の量が多くなるとチューブの本数がたくさんになりすぎて無くしてしまったりします。このような時大きな容器に入れられた薬だと便利です。口の広い容器の薬を指ですくって多くの量を一度に塗ることができますし、チューブのように数が多くなって整理に困ることもありません。
 欠点としては、一度につけすぎてしまうこと、雑菌などが混入しやすく不潔になりやすいことなどがあげられ、また容器にしっかりと薬の名前を記入しておかないといくつも容器がある時にはどの薬か区別がつかなくなってしまいます。
(2)つけ過ぎ(副作用)を避けるために薬の濃度を薄くしたもの
 よく行なうのは強いステロイド軟膏を白色ワセリンで薄めるケースです。本来症状が良くなれば弱いステロイドに変えるか、白色ワセリンで皮膚を保護するかにすればよいのですが、どうしても強いステロイドでないと症状をコントロールできない場合があります。強いステロイドを大量に長期外用しますと皮膚萎縮などの副作用がでやすくなりますので少しでも使用量を減らすために白色ワセリンで薄めます。患者さんがつけ薬を必要以上に広い範囲にたっぷり塗りたがる場合にも同じ目的で薄めることがあります。
 欠点としては、薄める薬によっては薬がよく混ざらなかったりして効果にむらが出る場合がありますし、混ぜることで元の薬の成分がこわされて効果が半減したり、逆に薬の成分の皮膚への吸収が良くなって薄めた意味がなくなる場合があります。
(3)異なる効能の薬を混ぜあわせたもの
 同じ部位に複数の皮膚病が見られた場合にそれぞれの皮膚病に効果のある薬を混ぜあわせて使用します。例えば水虫の患者さんが靴にかぶれている場合、最初にかぶれの治療を行って状態を見きわめてから水虫の治療を行うのが一般的です。ところが、なかなか外来を受診できない患者さんの場合にはかぶれの薬と水虫の薬を混ぜて処方することがあります。
 欠点としては、効果だけでなく副作用も重なりあいますので期待ほどに効果があがらないことがあります。先の例ではかぶれの薬は水虫を悪化させますので、だらだらと混ぜあわせた薬を使っていますとかぶれは治っても水虫がなかなか治らなくなります。結局、最後には混ぜあわせた薬からひとつの薬に変更して使わなければなりません。
(4)つけ薬としては市販(商品化)されていない有効成分を使用したもの
 美容皮膚科で使われる多くのものがこれに当てはまります。たとえば、シミの治療では皮膚科オリジナルとしてかつてはハイドロキノン、ビタミンC、レチノイン酸などを成分とする外用剤が作られていました。最近は低濃度のビタミンCやレチノイン酸と同等の薬が商品化されるようになりましたが、市販のものと比べて強い効果を期待した調合剤が一部の医療機関では使われています。
 欠点としては品質の安定性、安全性の問題があげられます。元々、皮膚科オリジナルとして作られている外用剤はその主成分の品質に安定性、安全性が低いために商品化されていないものが多く、実際に短期間で使い切らないと多くのものは効果がなくなってしまったり、その使用中にかぶれや刺激症状などの副作用がみられたりすることがあります。さらに重大な問題としてこれらの薬は保険の適応外ですので、処方された場合には実費が必要(少量で数千円以上することが多い)となり、混合診療が禁止されている現在ではその他の薬を一緒に保険を使って処方してもらうことはできません。

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