アトピー便り

アトピー便り36:日本アレルギー学会に参加して(続) アトピーと金属アレルギー

 日本アレルギー学会のポスター展示のところで一番興味深かったのは、内因性アトピーと金属アレルギーについての発表でした。血清IgE高値でダニなどのIgEも高い外因性アトピー(性皮膚炎)と血清IgE正常もしくは軽度上昇でダニなどのIgEが高くない内因性アトピー(性皮膚炎)については以前から4対1の割合で見られることが言われており、内因性アトピーでは金属アレルギーが高頻度に見られることが知られています。発表ではそれを裏付ける具体的な研究データが示されていました。外因性アトピーでのニッケルのパッチテスト陽性率は18%(コバルト12%)に対して、内因性アトピーでのニッケルのパッチテスト陽性率は41%(コバルト41%)と高いことが示され、汗に含まれるニッケルも内因性アトピーのほうが外因性アトピーよりも多く検出されていました。
 よく外来で臨床的にアトピー性皮膚炎と診断できる子どものお母さん方から「血液検査でアレルギーはなかったからアトピーではありません」と言われることがありますが、正しく言えば外因性アトピーではないということです。言い換えれば内因性アトピーの可能性が高く、金属アレルギーのパッチテストを行なうと陽性にでる可能性が高いものと思われます。
 この研究発表のコメントで最も納得したのは、内因性アトピーでは皮膚は正常なバリアを持っており、外因性アトピーのようにバリアの破綻からダニなどのいろいろな大きな抗原が皮膚の中に浸入してきてアレルギーにつながることはないが、金属などの非蛋白抗原は分子量が小さく正常なバリアを通過しやすいため金属アレルギーが起こるのではないかというところでした。
 成人の難治性のアトピー性皮膚炎で、血液検査でアレルギーは見られず、皮膚の状態も全体的には乾燥傾向が少ないケースにしばしば遭遇します。そのような場合には金属アレルギーを疑って積極的に検査を行なう必要があると実感しました。

2013/5/13


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