アトピー便り

アトピー便り47:彷徨(さまよ)う患者さんへ(2)

前回に引き続いて今回は(2)ステロイドの塗り薬は副作用がこわいので使いたくない。 を検証してみましょう。アトピーの患者さん、親御さんを診察したり、お話したりする中で最近でも最も多いのがステロイドを敬遠されることです。周りの人から聞いたからとか、漠然ととかで、明らかな根拠もなく使用を避けたいと言われます。副作用について具体的な経験はなく、どのような副作用があるのかもほとんどの方はご存じありません。
小児のアトピーは7,8割は軽症ですので、よほどこじらせない限りステロイドを十分に使わなくても多くは軽快していきます。ところが残りの2,3割の症状の目立つ小児ではきちんとステロイドを使って症状をコントロールしたり、悪化因子の対策を講じないと重症になってしまい、ひいては大人になっても症状が続いてしまいます。一方で一旦治っても大人になってから症状が再発することも珍しくありません。ご自身の経験に基づいてステロイドの使用に否定的な(患者さんの)周りの方々はたいていの場合軽症例か、ステロイドを正しく使わなかったために症状が遷延してコントロールが不十分だったケースであると感じています。
当クリニックでも成人のアトピー性皮膚炎患者さんでは比較的重症の方も多く来院されていますが、ステロイドを大量に長期連用しているケースも多く、中にはステロイドの副作用である毛嚢炎や単純ヘルペスなどの感染症や皮膚萎縮などの副作用が見られることもあります。このような例ではステロイドを大量に使ってはいますが、症状を抑えるために1回に必要な量をその都度使っていないことがほとんどです。皮膚萎縮に対してはタクロリムス軟膏などのステロイドでない外用剤に変更しますし、(基幹病院に紹介させていただいて)紫外線療法、免疫抑制剤の内服療法など、治療の変更を検討する場合もあります。アトピーの重症例では治療を強力に行なうだけでなく、アレルギーの程度(RIST)、悪化因子(RAST)やアトピーの症状の程度(TARC)を血液検査で調べたり、パッチテストでかぶれの原因となるものがないかどうか調べたりする必要があります。全身のアトピー性皮膚炎の重症例になりますとこのような検査も含めて治療が十分にできていないことも多く、基幹病院に治療を依頼して入院となるケースもあります。
いずれにせよ、皮膚科の専門医であればステロイドの副作用を意識して、確認しながらステロイド外用剤を使用しています。実際にステロイド外用剤の副作用が問題となるのは強いステロイドを長期にわたって大量に使っている場合で、小児のアトピーの7,8割をしめる軽症例で問題となることはほとんどありません。ステロイド外用剤の最近の使用法としては症状を抑えるためには治るまでしっかり外用を続けて、治ってから使用量を徐々に減らしていきます(プロアクティブ療法)。長期間外用しているにもかかわらず外用量が減らすことができない場合には、当初の使用量が十分かどうか、治る前に使用量を減らしていないか、悪化因子の対応ができているかを検討する必要があります。ステロイド外用剤をこわがりすぎると必要な量を使わずに及び腰で使ってしまい、ダラダラと使って症状もよくならずにステロイドの使用が減ることなく延々と続いてしまいます。毎回の診察の機会でステロイドに関して副作用を含めて事細かく説明することは通常はありませんので、気になる場合には一度主治医にお手隙な時間の診察中に相談されることをお勧めします。

2015/11/8


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