アレルギーに関する情報

(第10回)アトピー性皮膚炎の特殊療法について(本当に効いているの?)

 アトピ―性皮膚炎(以下AD)の治療は、敏感肌(乾燥肌)に対するスキンケアと炎症(湿しん)をおさえるステロイドの外用療法を二本柱に、悪化因子の検索、除去を並行して行なっていきます。ところが、ステロイドに対する過度の恐怖から十分(適切)にステロイドを使わないために症状を抑えることができず、どんどん悪くなっていくケースをよく見かけます。そのようなケースでよく見られるのは、悪化因子の検索はほったらかしておきながら、ステロイドは使いたくないという思い込みからステロイドに代わるいろいろな治療を行なっているケースです。高血圧や糖尿病の治療を考えてみていただくとよくわかると思いますが、食事療法や運動療法を全く行なわないで、しかも血圧や血糖値を下げる薬を使わないで果たして病気をよくすることができるでしょうか?食事療法や運動療法にあたるのが悪化因子の除去で、血圧や血糖値をさげる薬にあたるのがステロイドです。このように当てはめてみますと悪化因子を取り除くこともなく、ステロイドも使わずに症状をおさえることができるかどうかは一目瞭然です。ところが、ステロイドの外用薬によって直ちに長期の全身投与でみられるような副作用があらわれるというような誤解をいまだに一部の方々は持っておられます。このような方々においてはステロイドを適切に使用していないために症状がよくならないばかりか、ステロイドに代わる特殊な治療のみに頼っているケースでは余計に悪くなっています。
 ところで特殊な治療のうち、病院でも行なわれる治療としてはイソジン療法、超酸性水、漢方療法、紫外線療法などがあげられ、そのほかにもインターネット、アトピー関連雑誌などではADの治療に関する情報が満ちあふれています。ここでは、個々の情報をもれなく検証するのではなく、特殊療法についての一般的な皮膚科の考え方を述べさせていただきます。
 「よく効く!!」とか、「これで治った!!」とかいう文句をよく目にしますが、ADという病気は決してすぐに治る病気ではありません。ADを起こす体質というものは一生続きますので、仮に一度治ったようでもスキンケアを怠り、アレルギーがある場合にはその予防をないがしろにして生活を続けると直ぐに再発します。逆に、一度治った後スキンケアやアレルギー対策に注意を払い続けると全く症状がでないこともあります。つまり、特殊な治療を行なって治ったということは、その治療が実際に効いている可能性もありますが、環境因子などの悪化因子が自然に取り除かれ、治った場合も考えられますし、もともとADでなかった場合も考えられますので本当にその特殊な治療で治ったかどうかを見きわめるのにはその都度検討が必要です。しかも、プラセボ(偽薬)効果といって、薬と偽って偽の薬(食塩水)で治療した場合においてさえADにおいては約20%で効果がみられることから、特殊な治療の効果判定は慎重に行なわれなければなりません。しかも、先のような誇大広告では先ず全例、効かなかった例や、悪化した例については全く触れられていません。さらにつけ加えると、ステロイドが如何に恐い薬かを喧伝したあとに高価な商品の案内をしているものはアトピービジネスを目的としたものが多く、特に注意が必要です
 特殊療法が全て間違ったものとはいえませんが、EBM(evidence based medicine:根拠に基づく医療)という言葉が最近よく使われるように、科学的な裏づけのないものは医学の世界では一般には受け入れられません。ADの特殊療法では科学的な検証において有効性を確認されたものはほとんどありませんしかし、中には本当は効果があるにもかかわらず、その科学的な証明が遅れているものもあるでしょう。特に今後、プロバイオティクスなどの腸管免疫に関連する治療については将来的に有効なものが現れるようになるかもしれません。
 特殊療法への依存は大抵の場合ステロイド忌避から起こっていますが、現時点ではステロイドに完全にとって代わるADの治療薬はなく、先にも述べましたように正しくステロイドを使って、悪化因子を除去しながら、スキンケアを心がけるというきわめて単純な治療方針で症状をコントロールしていくことがADの治療の基本となります。特殊療法を行なった場合も、一般の治療と同様に遅くても数週間以内に効果は必ず現われますので、数週間使ってもだめなものは止めましょうましてや、治療を行なってもひどくなるときには直ちに止めましょう。特に、「ステロイドの毒抜き」と称してジュクジュクになって、症状がひどいのにもかかわらず、脱ステロイドと特殊療法を行なうことは一番避けなければなりませんジュクジュクが自然に治ることはまずありませんし、この状態でステロイドを使わずにいますとどんどん悪くなる一方で、大変なことになってしまいますのでご注意ください。


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