皮膚科全般に関する情報

(第5回)冬に多い皮膚病-がさがさ、かゆみ予防にはスキンケアでまずお手入れを!

 冬に多い皮膚病には気温の低さに伴うもの、乾燥に伴うものがあります。先ず、前者の代表的なものにはしもやけ、網状皮斑(もうじょうひはん)、レイノー症状などがあげられます。これらはいずれも末梢の循環障害に基づく皮膚障害ですが、内科的な疾患に伴ってみられる場合がありますので、症状や経過によってはいろいろな検査を行ない、原疾患を突き止めなければなりません。特に、冬場になると指先がおかしくなる方はご注意ください。そして、乾燥に伴うものですが、冬の皮膚病としてはこれが最も多く、非常に多くの方がこの皮膚の乾燥性疾患にわずらわされています。そこで、代表的な乾燥性の皮膚疾患について順次みていきましょう。
 先ず、これからの時期最も多くみられるものとしては老人性の皮膚そう痒症、乾皮症、乾燥性湿しんがあげられます。空気の乾燥とともに皮膚の表面が乾燥し、特に下腿、腰の部分を中心に痒みと掻破に伴う湿しんが目立つようになる状態で、ナイロンタオルの使用、石けんの使いすぎなどは症状を悪化させます。布団に入って体が温まってから痒みが強くなるのが特徴です。湿度が高く、汗をかきやすい夏期になると症状は自然に治まってきます。原因として皮脂腺由来の脂質(トリグリセリドなど)の減少、角質細胞間脂質(セラミド、脂肪酸)の減少、アミノ酸などの天然保湿因子の減少があげられます。
 次に主婦の手湿しんですが、洗剤などの界面活性剤で皮膚の表面の脂質が取り除かれたり、角質が変性したりした状態で、水に漬けると水溶性の低分子物質(天然保湿因子)が取り除かれ、手の皮膚はほとんど吸湿性を示さないようになります。この状態が繰り返されることで、皮膚の乾燥、炎症が進行していきます。料理人や美容師・理容師、脂溶性溶媒を扱う工員などでも同様の症状(高度のものが多い)がみられます。
 ところで、小児では生理的に乾皮症がしばしばみられます。生後6か月までは母親のホルモンが体内に残っているため皮脂の分泌が高いのですが、この時期を過ぎると皮脂がほとんど分泌されなくなるため冬季には6~7割の子どもで乾皮症がみられるようになります。これは自分自身のホルモン分泌が盛んになる思春期頃には自然になくなります。
 最後に、冬季に悪化することの多いアトピー性皮膚炎(以下AD)についても触れておきましょう。一般にAD患者では典型的な湿しんの病変以外にも乾燥して痒みをおこしやすい皮膚がみられます。毛穴が盛り上がったざらざらした皮膚に対して「アトピー皮膚」とよばれるものですが、肉眼的にはみえない皮膚炎が持続しているためにみられる二次的な変化です。AD患者の皮膚ではバリア機能の重要な角質細胞間脂質のセラミドの減少、角層中のアミノ酸の低下がみられます。
 ここまで挙げてきた疾患(青色太字部分)はいずれも皮膚の乾燥がもとで二次的に湿しんをおこしてくるもので、ひとたび湿しんがみられればステロイド剤の外用で症状を抑えなければなりませんが、一度治療によって症状が良くなってからも再発しないようにするためには皮膚の乾燥およびバリア障害をおこさないようにしなければなりません。そこで、生活習慣上の予防策としては、加湿器で室内の湿度を50%以上に保つようにして、かゆいからとボリボリ引っかいたり、風呂で石けんをつけて、手ぬぐいでごしごし洗ったりすることは是非とも避けなければなりませんただし、頭、顔、わきの下、股などは皮脂分泌がよく、微生物の多い場所ですので、不潔にならないように石けんで洗わなければなりません。
 これまでの話からもおわかりのように、冬の皮膚病予防としては皮膚の乾燥、バリア障害に対する対策が一番重要です。特に、今までに冬場に皮膚のがさつきがみられたことのある方、タオルで少しだけ強めに洗っただけで皮膚が傷んだことのある方は、これからの冬季の乾燥しやすい時期には現在の皮膚の状態にかかわらず毎日欠かさずスキンケアを心がけてください。
 スキンケアについては、皮膚科では主にワセリン、尿素、ヘパリノイド含有のヒルドイドを使用していますこのうちどれを使用するかは使用する個人の好みによります。べとつき感が気にならなければ皮膚保護作用もありワセリンが一番使いやすいのですが、クリームやローション基剤の尿素やヒルドイドなども頻用されています。当院でも、べとつき感が嫌いな方にはヒルドイドのローションもしくはクリームを処方し、それ以外の方には主にワセリンを処方しています。尿素は皮膚にキズがある場合には刺激症状が出る場合がありますので、角質肥厚の目立つ場合に使用しています。いずれも、1日2回、朝起きたときと、入浴後よく水分をタオルでおさえて取り除いた直後に塗ってください。乾燥しやすい場所を中心に広めに塗り、つけすぎない程度に十分量塗ることが重要です。
 皮膚科で処方される保湿剤と薬局で扱われるスキンケア商品の違いについて最後に触れておきます。上記のワセリン、尿素、ヒルドイドは薬局でも普通に市販されています。聞いたことのあるメーカーの商品であれば皮膚科で処方されるものと違いはほとんどありません。AD、手あれ、ご年配の方の乾燥皮膚、いずれにつきましてもごく軽症で、かゆみも赤みもなく、なおかつ皮膚科を受診する時間のない方は、薬局で手にはいる保湿剤でしばらく様子をみられても構いません尚、これらの薬局の保湿剤を使用される場合でも、症状が悪化する場合や、保湿剤としての十分な効果がみられない場合には必ずお早めに皮膚科を受診してください。このような皮膚科を受診する時間のない方以外は、最近は一回に大量の薬(1か月分程度)を処方することができますので、保険の対象になっている上記の保湿剤については皮膚科医の処方で手に入れていただくほうが経済的です 
 皮膚科で保険対象薬として処方することができないもので、薬局などでしか手に入らない(皮膚科でも自費扱いでの販売は可能な)保湿剤としてはセラミド、ヒアルロン酸などが挙げられます。特に、AD、高齢者の乾燥皮膚ではセラミドの低下がみられますので、先の保湿剤がしっくりこない方はセラミドを一度試してみるのもよいでしょう。合成セラミドとしては花王のキュレル、天然セラミドとしてはロゼット社のAKマイルドがあります。前者は薬局にて、後者はインターネットで直接購入することができます。
 冬の(乾燥による)皮膚病は一度症状がひどくなると治療してもなかなか短期間ではよくなりません。そのため、(繰り返しになりますが)症状が見られる前、軽い時期での対応、すなわち保湿対策が重要です。がさがさ、かゆみから少しでも開放されるためには「たかがスキンケア、されどスキンケア」毎日根気よく保湿剤を丁寧に塗り続けてください。


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