〇これまでもアレルギー検査については何度も触れてきましたが、現時点で当クリニックで行なっているアレルギー検査の現況を整理してお伝えします。受診していただく際にご参照ください。
①アレルギーが疑われるエピソード、症状が何回も見られて(確認されて)いて、明らかなアレルゲンが想定(特定)できない場合にはスクリーニングでView39(39項目のアレルゲンに対するIgE抗体を調べる血液検査)を検査します。実際にはエピソードや症状が自己申告でデフォルメされている事が多く、検査をする元になる情報には少なからずバイアスがかかっていますのでView39で有意義なアレルゲンが見つかることはあまり多くありません。
②アトピー性皮膚炎においては、重症の方は初診時に患者さんの同意が得られれば、また当クリニックの通院歴が長いながら、検査を一度も受けたことのない患者さんでご要望があれば、さらには治療をしっかり行なっていても良くならない方で患者さんの同意が得られれば、血液検査(RIST[悪化因子としてアレルギーの程度を調べる]、RAST[悪化因子としてアレルゲンを調べる]、TARC[アトピー性皮膚炎の皮膚症状の重症度を調べる])を行なっています。検査が必要と思われる場合でも実際には同意が得られず検査に至らない患者さんも少なからずいらっしゃいます。
尚、軽症の方、前医(当クリニック)ですでに検査をしている方、治療が十分にできていない方は検査の対象外ですが、再診を重ねる中で必要となった場合には随時検査を行なっています。アトピー性皮膚炎での検査は診断を確定するためではなく、完治に至る道筋となるわけでもありません。あくまで悪化因子の検索、現状把握など治療をサポートするためのものです。この点をご理解いただければと思います。
③食物アレルギー、アレルギー性鼻炎においては血液検査は診断に役立ちます。十分に問診を行なって(詳細な情報を元に)診断に必要なものに関して適宜RASTを調べています。特に小麦依存性運動誘発アナフィラキシーは問診でほぼ診断できて、血液検査(RAST:小麦、グルテン、ω-5グリアジン)で確定できますのでRAST検査が必須になります。花粉食物アレルギー症候群も同様で問診と血液検査で大抵の場合診断できます。小児の木の実類アレルギーが最近増加していますが、くるみ、カシューナッツでは(ピーナッツと同様に)血液検査でアレルギーコンポーネントを調べて以前より確度の高い診断ができるようになっています。尚、食物アレルギーではRASTで診断が確定できない(原因食物が陰性になったり、陽性のものが原因食物でなかったりする)ことが多く、しかも調べられる項目は限られています。そこで生の食物を使ってのPrickPrickテストさらには経口負荷試験が必要となりますが、当クリニックでは行なっておりません。
④難治性の湿しん、かぶれでは原因の特定にはパッチテストが必要でかつては多くの試薬を揃えてパッチテストを積極的に行なっていましたが、現在は行なっておりません。検査試薬が短期間で使用不能となりますので安全性ならびにコスト面を考慮して当クリニックとしては中止せざるを得ない状況となっています。現在はスタンダードシリーズのみ予約制で試薬(パネル)を注文して行なっています。
⑤歯科の金属アレルギーのパッチテストの問い合わせは現在もよくありますが、(④と同じ状況により)行なっておりません。④のスタンダードシリーズに金属としては主要アレルゲンのニッケル、クロム、コバルトが入っていますので一般的な金属アレルギーを検査する場合にはスタンダードシリーズだけで問題ありません。歯科の金属アレルギーのみならず、パッチテストについては実施しているかどうかをあらかじめ受診される皮膚科に問い合わせられることをお勧めします。
⑥じんましんの患者さんの中には原因を知りたいということで検査を希望される方が少なからずいらっしゃいますが、発症時の状況でアレルギーを疑わせる出来事がない限り検査はしません。慢性に経過しているじんましんの多くは特発性(原因不明:誘発因子は複数あり)で検査は必要ありません(検査で原因は見つかりません)。当クリニックで検査をしていない患者さんが他の病院でRAST検査を受けられて陽性のものが見つかって伝えていただくことがたまにあります。これはじんましんの原因が見つかっているのではなく、アレルギー検査(厳密にはIgE抗体検査)が陽性なだけです。ハウスダストやスギのアレルギーは数多くの人で見られますが、ほとんどのケースでじんましんの原因ではありません。IgE陽性≠アレルギーですし、また多数の項目で陽性所見が見られる場合偽陽性の項目が混じっている事が多いので注意が必要です。
〇当クリニックはアレルギー科を標榜しているため機械(自動)的にアレルギー検査(View39)を行なっていると思われて受診される方がいらっしゃいますが、行なっていません。患者さんの自己判断でアレルギーと思われていても最低限①のケースに当てはまらなければ(保険適応にならないので)検査していません。それでも検査を希望される場合には健診と同じ扱いになりますので自費(全額自己負担)になることを理解された上でご要望があればView39を検査しています。実際のところ全額自己負担にかかる費用ならびに検査の有効性(意義)を説明しますと多くの方は取りやめています。
〇アレルギー診療、特に食物アレルギーで診断上最も役に立つものは問診です。患者さんから詳しく(正確に)お話を聞ければ多くの場合(検査をする前に)アレルギーかどうかは判別できますが、検査ありきで受診される方から問診で得られる情報は大抵の場合あまり多くありません。花粉食物アレルギー症候群などで一部は検査(View39)から見つかることもありますが、View39のみでアレルギー症状の原因が見つかることはほとんどありません。先述の小麦依存性運動誘発アナフィラキシーを始めとして診断に至るほとんどのアレルギーは患者さんからのお話を元にターゲットを絞って検査をして原因が見つかります。些細な情報でも構いませんので診察時には何でもお伝えください。食物アレルギーで受診される方は(食材を含めた)食事の内容ならびに具体的な症状(経過)と前後数時間の行動内容(痛み止めの服用、入浴、運動したかどうかなど)、お気づきのこと(普段と違うこと)を併せてメモしておかれることをお勧めします。複数回症状が出ていればすべて(できるだけ多く)記録しておいてください。
〇実際に問診でアレルギーが疑われる場合、先述の小麦依存性運動誘発アナフィラキシーのように検査が必須の場合には患者さんからお断りがない限り行なっていますが、そのほかの場合は(先述のアトピー性皮膚炎②と同様)検査をした方がよいと思われても患者さんの同意もしくはご要望がない限りこちらから勝手に検査を行なうことはありません。
(余談)診察(問診)でアレルギーではないと判断されて患者さんがあらかじめ思い描いていたような(保険診療で)検査ができない時にこちらのコミュニケーション力不足によって意思の疎通が上手くいかない(患者さんが怒られる)ことがこれまで多々ありました。これまでに不愉快な思いをされた方、ならびに(コミュニケーション力は劇的には向上しませんので)これからももし同じ状況で不愉快な思いをされることがあれば何卒ご容赦ください。この場を借りてお詫びさせていただきます。
2026/6/5


