アトピー便り

アトピー便り109:治らないときはすぐに受診を

1年くらい前に顔面の皮疹で来られていた患者さんが久しぶりに来られて同部位の湿しん病変(前回とは少し違う?)に対して以前処方した外用剤を出しておきますと言ったところ、前の薬は効かなかったと言われ処方を拒否されました。実際のところ効いたか効いていないかは再診していただいたわけではありませんのできちんと確認できていません。見た目はどう見ても外的な刺激による皮膚炎で、その旨説明しましたが、患者さん自身は思い当たるものがない、ありえないとのことでけんもほろろに却下されました。効かなかった薬について患者さんもこちらで処方していない外用剤のことを言っていましたので、別の皮膚科を受診していた可能性もありますが、いずれにせよ効かなかったの一点張りでした。そこで、「見立ては変わらないので前回と同じ薬を出すしかありません。効かないのであればそのままみてください。」とつい言ってしまいました。当然「治らないのにそのままで良いのですか?」となりました。そこで、「こちらの見立ては外的刺激による皮膚炎しか考えつきません。外用剤は炎症を抑えるだけで、原因が取り除かれなければ治りません。また治療で良くなっても色素沈着は残ってすぐには元の皮膚に戻りません。治療をして症状が改善しているかどうかはその時点でこちらが確認しなければわかりません。今のお話に納得いただけない場合には他の皮膚科でセカンドオピニオンを受けられることをお勧めします。違う見立てがあって違う治療をしてもらえるかもしれません。」とお話しました。納得はされていませんでしたが、一応先の処方薬で様子を見ることになりました。ちなみに今回も再診は今のところありません。
患者さんは短期間の治療で症状が完治して、再発しないのをイメージして皮膚科を受診されます。皮膚科医は外用剤を塗って炎症の後遺症(ステロイドの後遺症ではありません!!)で皮膚が茶色くなれば良くなった、治ったと考えますが、患者さんの多くは元通りにきれいな皮膚になるまでは治ったとは思われません。一方で皮膚科医は、原因対策をしないで外用剤を塗っているだけであれば根治療法ではなく対症療法なので再発しても仕方ない、塗らなければ症状は出続けると思っています。そのため皮膚の症状があまり良くなっていなくても、患者さんには特別に説明もせずにしっかりと薬を塗り続けましょうと繰り返し指示しがちです。このような患者さんと医師側の認識のずれはよくありますので、治療をしても治らない、悪くなったと思われるときはすぐに前医を受診してください。特に診察時に信頼できそうにない、相性が悪い、癇に障ると感じてしまった場合得てしてすぐに他医を受診しがちですが、もう一度だけ受診してみてください。たまに当クリニックでも他の皮膚科で良くならなかったためこちらに来られる方がいらっしゃいますが、元の皮疹の状態、前医での治療内容、検査結果、症状の経過など詳細が分からない場合には却ってマイナスになることが多く得策ではありません。良くなっているかどうかの見極め、見立てが違っている場合の対応、今後の経過、治療方針の説明などを踏まえて、直接気になることを聞いて患者さんご自身が納得できない場合には転医をお勧めします。ただし、その前にステロイド忌避などで医師の説明に聞く耳を持たなかったり、「水虫だ」「アレルギーだ」「検査をしたい」などと自己判断でご自分の意見を一方的に主張されたりしている場合、また医師に対してイラッとする気持ちがどうしても態度に出てしまう方もいらっしゃいますが、一度は医師の説明に心穏やかに耳を傾けてみてください。それでも変わらず納得できない、癇に障る場合は速やかに転医してください。

2023/8/4

 

 


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