アトピー便り

アトピー便り111:医師のコミュ力

少し前の話ですが、半年ぶりに重症のアトピー性皮膚炎受診された患者さんが再診されました。初診時は1週間分の外用剤を処方して再診時の皮疹の状況で治療を変更する予定でした。今回の皮疹も中等症以上の症状でコントロールは不良でした。元々他の皮膚科を受診されてはいましたが、皮疹の状態と処方量を考えて、治療が足りない旨を一方的にお話していました。しかしどう考えてもその時の皮疹は、当クリニックの半年前の1回分の処方量だけでは有りえないのでお話をよく伺ったところ主治医が別にいて予約がとれないのでこちらに来たとのことでした。それを伺って、それ以上の説明は止めて次に主治医にかかるまでの少量のみ処方しました。確認はしていませんが、初診時も同じような感じで受診されていたのかもしれません。その後再診はもちろんありません。このようなケースは日常茶飯事ですが、これを機会に主治医を変えたい、セカンドオピニオンを求めたいといった患者さんにおかれましては診察時にその旨お伝えください。改めてお話、ご説明させていただきます。
首まわりにあせもをこじらせたような紅斑で受診された患者さんに弱いステロイドの外用剤を処方しようとしましたが、小さいころにステロイド外用剤を使っていてその蓄積で肘の前に色素沈着が残っているのでステロイドを使いたくないとのことでした。幼少期にアトピー性皮膚炎があったものと推測されますが、ステロイド外用剤の不適切使用による典型的なステロイド忌避のケースでした。一方的にステロイド以外の薬を強く希望されましたので、条件反射的に現在の皮疹に対してはステロイド以外には治療薬はないとお答えしてしまいました。その上で色素沈着がステロイドによって起こったというのは誤解である可能性が高いこと、ステロイドを最初に使ってその後の状況でステロイド以外の薬に変更したりする旨を説明しました。結局ステロイドを使うのであれば、治療はしなくていいとのことで、受診自体をキャンセルしました。後から振り返れば、あせもの症状だけであれば何もしなくても症状が軽快する可能性もありますし、あせものよりで感染を起こしかけている場合にはステロイドの外用で悪化する可能性もあり、抗生物質の外用剤でひとまず様子をみるという選択肢もあったのかもしれません。
二例とも医師側の対応如何によっては違った診療結果になっていたかもしれません。当方のコミュニケーション力、咄嗟の判断能力、冷静さの不足を痛感させられた出来事でした。

2023/10/2


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