アトピー便り

アトピー便り20:医者によって違う?

 アトピーの患者さんならびにお母さんによく「医者によって言われることが違う。どれが正しいのか分からない」と言われます。例えば一目でアトピーと思われるようなケースでアトピーの説明をしていると、「今までアトピーとは一度も言われたことがない。前の医者には乾燥肌としか言われていない。」と戸惑われることがあります。特に以前に小児科を受診したことのある、アトピーの小児のお母さんからよく言われます。これは、アトピーはアレルギーによっておこるため治らないものだと多くのお母さんに深刻に受け止められているため、小児科医および一部の皮膚科医が意識的に乾燥肌という表現で説明を行なっているためかと思われます。小児のアトピーは7~8割は症状が軽く、たいていの場合経過とともに症状は軽くなり、ひいては多くは治ります。アトピーは皮膚のバリア異常による乾燥肌がきっかけとなって起こる湿しんでもあり、小児のアトピーでは症状の軽い場合には乾燥肌と言っても問題はありません。
 一方で、アトピーの一部の重症例は明らかに単なる乾燥肌とは異なり、アレルギーが関係していることも多く、しっかりと適切な治療を続けなければ治りませんので注意が必要です。前医を受診した時と当クリニックを受診した時の症状に変わりがなければ、先述の乾燥肌かアトピーかについては、軽いアトピーで余計な心配をお母さんにかけまいとするのか、軽いアトピーがひどくならないように注意を払いながらきちんと治療をしていくように促すのか、治療する医者の方針の違いが言葉の違いにつながったものにすぎず、大差はないものと思われます。
 当クリニックでは症状の軽重を問わずアトピー性皮膚炎の診断基準に基づきアトピーと思われるものはその旨患者さんならびにお母さんに伝えています。

2012/5/9

アトピー便り19:外来便り(2012年春)

 汗に伴う皮膚のトラブルが目立つようになっています。あせもは幼児だけでなく、日光によって大人でも見られることがあります。アトピー性皮膚炎も汗によってひどくなりますので、季節の変わり目のこの時期は急激に悪化するケースも増えています。汗に対するスキンケア、早めの治療を心がけてください。

2012/5/2

アトピー便り18:アトピー性皮膚炎治療研究会&日本皮膚科心身医学会より

 外来を休診させていただき出席したアトピー性皮膚炎治療研究会からはや1週間が過ぎました。今回も非常に多くのことが勉強になりましたが、特にステロイドの使用量については目からウロコが落ちる思いでした。重症の場合には治療開始時のステロイド外用剤の必要量は思いのほか大量であること、減量する時期を急ぎすぎないことが大事だと再認識しました。そのほかにアトピー教室の紹介も印象的で、とても参考になりました。当クリニックでも過去に小児のアトピーのお母さんを対象に何回か開催しておりますが、もっと頻回に開催するには勉強会の対象を重症の成人アトピーの方にも広げたり、開催日時を土日に変更したりするなど、再検討をしなければならないと思いました。
 翌日開催された日本皮膚科心身医学会でも内容はアトピーが中心で、興味深い実際の症例のプレゼンテーションが数多く予定されていたのですが、帰りの飛行機の関係で出席できなかったことが大変残念でした。主に教育講演に出席しましたが、その中では講師指導のもとでのコーチングの体験実習が印象的でした。

2012/2/11

アトピー便り17:患者さんも情報開示を

 寒くなって空気の乾燥が目立つようになりアトピーの患者さんの受診が増えてきました。そうした中で受診間隔の空いた患者さんを診察する時にはいくつか考えることがあります。(1)今回の症状が前回の受診の後も続いていた (2)ずっと調子が良かって治療をしていなかったが、最近になって悪くなった (3)受診していない間に別の皮膚科や小児科にかかっていた 大ざっぱにはこの三通りですが、それぞれで対応が変わります。(1)の場合には治療が不十分なので外用剤の量を増やしたり、頻回の受診を促したりしてしっかりと治療を行なうことを考えます。(2)の場合には今まで通りの治療を仕切り直しで行ないます。一番問題になるのが(3)のケースです。他医をメインにしていて、たまたまそこが混んでいたり、お休みだったりして受診いただく場合もありますし、その逆のこともあります。前者では診察室に入るや否や診察も始まらないうちに他医でもらっている薬を出して欲しいと言われることもあります。その他、何か所も皮膚科や小児科を回ってみたものの良くならなかったり、満足が得られなかったりして病院めぐりを繰り返している方もいらっしゃいます。
 これらの状況を直ちに見極めることは非常に難しく、問診でいずれかを確認していくしかありません。(1)(2)に関してはいろいろお話を伺うなかでだいたいのところはわかりますが、それでも患者さんとの信頼関係がきちんと築けていないとちゃんとお答えいただけずにはっきりしない場合もあります。(3)の場合には正直なところこちらとしても残念な思いをすることもありますが、よく考えれば他にもある皮膚科の中からわざわざ来ていただけることはありがたいことですし、何よりもまず患者さんのアトピーの症状を良くすることを一番に考えなければなりません。きちんとお伝えいただければ次回の他医の受診までのお薬を必要最低限お出しすることはできますし、前医で納得できなかった点、満足できなかった点をお伝えいただければセカンドオピニオンの役目を果たすこともできます。ただし、診察をきちんと受けずに事情説明もなく薬を指定されたり、一方的に治療や検査を希望されたりする場合には患者さんが満足のいくようには対応できない場合も出てくるかと思われます。
 患者さんに対して医療機関の情報開示の重要性がよく言われますが、患者さんが医師に対しても(経過やご要望などの)情報開示をしていただければより充実したアトピー診療につながるかと思われます。これはすべての皮膚科専門医に当てはまると思いますのでご理解いただければと思います。

2011/12/18

アトピー便り16:スキンケア(保湿)の重要性

 気温が低くなり空気の乾燥とともにアトピーの悪化する方が目立つようになりました。症状がいったんひどくなりますと治療に時間がかかるようになります。症状の軽いうち、乾燥が目立つ程度のときに早めに保湿によるスキンケアをしっかりと行なって症状の悪化を未然に防ぎましょう。
 乳幼児のアトピーでは食べこぼしの食物が顔の皮膚を通してアレルギーを引き起こすことが多いことがわかってきています。乳幼児においてもスキンケアをしっかり行なうことが症状の重症化やアレルギーの発症を防ぐことにつながります。最近マスコミを賑わせています旧茶のしずく石けんによるアレルギー症状も、皮膚を通して小麦成分によるアレルギーが引き起こされています。スキンケアを行なって皮膚のバリアを保つことでアレルゲンの滲入を防ぎ、皮膚のアレルギーを予防することにつながります。「たかがスキンケア、されどスキンケア」、保湿のスキンケアはご年配の方の皮膚の乾燥を防ぐだけではなく、アトピー性皮膚炎の患者さんにとっても治療の一環として不可欠といえます。

2011/11/23


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