アトピー便り

アトピー便り05:二つの学会に参加して

 アトピー性皮膚炎治療研究会の今回のテーマは漢方治療についてでしたが、漢方については学術的な解析もどんどん進んできているようです。
 同じ漢方でも同じ病気の患者さんに使っても効き具合が違い、患者さんの体質によって使い分けが必要であることはよく知られています。アトピー性皮膚炎の漢方治療ではそれ以外にもストレスや性格などの心因的要素が関与して治療効果に差が出るとのことで使いこなすのは難しそうです。心因的要素がアトピー性皮膚炎の症状の悪化に関与していることは実際の臨床でもしばしば経験しており、そのことを違った角度から証明しているものと思われました。
 食物アレルギー研究会は小児科の医師を中心にした会ですが、食物アレルギーの関与するアトピー性皮膚炎について(研究会としての)具体的な対応、現状を知りたいと思い参加しました。ごく一部には検査に基づく厳格な食事制限を強調する昔ながらの考えの方も見受けられましたが、一昔前とは異なりおおむね皮膚科との違いもほとんどなく、アウェー感を味わうこともありませんでした。「先ずスキンケアと薬物療法を十分に行い、改善されない場合に必要最低限の食事制限を行う」といったもので、今まで通りの治療を続けていくので良いと意を強くしました。

2010/2/26

アトピー便り04:あるラジオ番組にて

 先だって地元のあるラジオ番組でリスナーからの投書で、子どものアトピー性皮膚炎である医者にかかったところ子どもへの対応が不十分で親として納得がいかなかったといった内容のものがありました。そのリスナーの知人ならびに番組担当の医師の意見としては、「その医者はあなた方にとっては名医ではなかったということですね」といったものでした。
 アトピー性皮膚炎の子どもさんを診る機会も多いので、ひょっとして自分のところに来られた患者さんではなかろうか!?と脳裏をよぎりました。このケースの事情はよくわかりませんが、外来では診察に抵抗する元気のよい子どもさんに遭遇することはめずらしくありません。そうした場合実際の対応としては子どもさんを刺激しないようにして診察を円滑に進めることを考えます。小さなお子さんでこちらが見ると泣く場合や何度かお話ししても変わりがない場合には、子どもさんとは目を合わさず親御さんとだけやりとりをする場合もあります。目を合わさないということは、怒っているとか、冷たいとかいった印象を相手に与えますし、親御さんには納得がいかないと思われることもあるだろうなとも思います。わざわざ当クリニックを選んで来ていただいた患者さんに対して全くそのような心づもりはないのですが・・・。
 このような場合の一番の名医とは、子どもをおとなしくさせたり、診察を嫌がる理由を聞いたりして上手く対応できる医者だろうと思います。私自身そうなりたいとは思いますが、そうした対応には人間性やいろいろな経験も必要になってきますので一朝一夕にはなかなか身に付きません。一方で、立場や見方が変わると全く違ったとられ方をすることもありますし、日頃から相手の態度に条件的に反応をしてしまいがちですので、こちらの事情も少しは分かってくれないかなとも思ったりもします。いずれにせよラジオで取りあげられた医者が自分でないことを切に願いながら、やはり患者さんには不快な思いをさせることのないように十分に注意をはらって診察を行わなければならないと反省を込めていろいろ考えさせられた番組でした。

2010/1/21

アトピー便り03:いつ受診すればいいの?

 時期的にアトピーの症状が悪化する方がとても多くなってきました。皮膚の乾燥を通り越して湿しんがみられていることが多いため、漫然と保湿だけのスキンケアを続けることのないようにご注意ください。
アトピー性皮膚炎患者さんの7~8割は症状が軽いものの、慢性、反復性に症状が見られますので一回の治療で終わることはほとんどありません。そのため症状にあわせて治療を続けていく必要があります。定期的に受診するのが理想ですが、いろいろな事情によりできない場合もあります。症状の見られないとき、薬が十分手元に残っているときには診察を受ける必要はありません。薬が手元に残っていても効かない場合、症状が悪化した場合には受診する必要があります。
 特に症状のひどい方は症状に応じて薬を適宜変えなければなりません。その見極めのためにも定期的に受診してください。なかにはいつもひどい状態で受診される方がいますが、治療が不十分のことが多くこまめに受診してしっかり治すようにしてください。

2009/11/29

アトピー便り02:アトピー性皮膚炎の診断について

 皮膚の乾燥とともにアトピーの症状が悪化する方が目立つようになってきました。乾燥に対するスキンケアと症状がひどくならないうちに早めの治療を心がけてください。
 アトピー性皮膚炎の診断について、多くの患者さんならびに親御さんは血液検査で行われるものと思っています。実際に重症のアトピーの方を含め多くの例でアレルギー検査が陽性になります。ところが、アトピー性皮膚炎の診断は、乾燥症状をベースに長期にわたりかゆみの強い湿しんが季節的な変動を繰り返しながら見られるという皮膚症状から行われます。アレルギー検査はアトピーの診断の参考材料であって、決め手にはなりません。
 石けん、シャンプーならびに入浴時のタオルでのこすりすぎ、衣類、洗剤などの生活習慣因子、汗や乾燥、ストレス、引っかきぐせ、皮膚に常在する細菌やウイルス、これに加えて様々なアレルギーなど、数多くのことが原因でアトピーの症状は悪くなります。つまり、アレルギー検査はアトピーの悪化因子の一部を見ているのにすぎません。
 アレルギー検査は主治医とよく相談して、必要に応じて行い有効に活用しましょう。

2009/10/25

アトピー便り01:アレルギー科を標榜したわけ

 皮膚科の扱う主要疾患の一つであるアトピー性皮膚炎の治療は、薬物療法、スキンケア、悪化因子の除去をバランスよく行うことですが、アレルギー科では悪化因子の除去が、皮膚科では薬物療法、スキンケアが中心となりがちです。当クリニックではアレルギー科を標榜することで、薬物療法、スキンケアのほかにも必要に応じて悪化因子の除去に積極的に取り組んでいるということを患者さんの多くの方に知っていただきたいという思いがありました。
 私自身、皮膚科専門医ならびにアレルギー専門医の資格を持っておりますが、皮膚科ならびにアレルギー科のすべての疾患をオールラウンドに診れるわけではありません。得意な領域とそうでない領域とがあります。手術が必要な場合には形成外科専門医に紹介しますし、喘息を治療することもありません。皮膚科専門医とアレルギー専門医を広告することで、当クリニックは皮膚アレルギーを得意領域として診療していることを示しています。

2009/9/20


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