アトピー便り

アトピー便り26:誤解されているアトピーのおはなし(1)

 診察中の会話の中で「検査をしていないからアトピーかどうかわかりません」とか、「アレルギーの血液検査をしてひっかからなかったからアトピーではありません」とかよく言われます。多くの方がアトピーイコールアレルギーの皮膚病と考えているためですが、実際のアトピーの診断は臨床診断のみで行われます。すなわち(1)痒みがあって、(2)左右対称に特徴的な皮疹があって、(3)乳児では2か月以上、そのほかでは6か月以上繰り返し症状が起こる場合にアトピー性皮膚炎と診断します。日本皮膚科学会の診断基準でもアレルギーに関連することは診断の参考項目として挙げられているだけです。
 乳児アトピーの約7割に食物アレルギーを合併していたとの報告もありますが、軽症例が多く、ほとんどが自然に治ります。実際に即時型(重症)の食物アレルギーがみられて、食事制限を厳格に行なう必要があるものはごくわずかです。
 アトピーの悪化因子は乾燥、汗、ストレス、衣類、髪の毛、石けん、シャンプーなどの刺激、引っかきぐせなど多岐にわたり、アレルギーはその一部に過ぎません。アトピーの診断にアレルギー検査は必須ではなく、重症例、難治例などで必要に応じて検査を行ない、それを基に必要最低限の制限を行なうのが原則です。

2012/6/28

アトピー便り25:診察時間

 アトピー患者さんの診察時間は患者さんごと、診察のたびに異なります。初診時、再診時、症状の程度の違い、質問の有無、治療のコンプライアンスの具合などで違ってきます。その他にも、患者さんがあとに多く待っているかどうか、診療終了時間間際かどうかなどでも微妙に変わることもあります。
 具体的には医師側として診察時間を十分にとるケースとしては、初診時ではドクターショッピングを続けられている方や重症例、再診患者さんでは急変時や治療が指示通りに行なわれていない場合、さらには質問を受けた場合などが挙げられます。一方、本来診察時間を十分にとるべき患者さんでも短時間の診察で終わってしまう場合もあります。先述の患者さんが多い時や診療終了時間間際が多くなりますが、その他にもステロイド忌避などいずれかの理由のために患者さんにこちらの説明を受け入れてもらえない場合や子どものアトピーでは当人や同伴のお子さんが騒いでしまってお母さんとお話がきちんと出来ない場合などもあります。
 再診患者さんの場合、過去の診療の記録が残っていますので一度丁寧な説明をした場合には何度も説明することはあまりありません。久しぶりに受診していただいた子どもさんに診察後「早っ!」と言われることもあります。特に症状が軽快している場合、問題のない場合には診察は早く終わりがちです。症状の軽重にかかわらず、再診時でも改めて説明を聞きたいという場合にはその都度申し出ていただければと思います。尚、診察時間がどうしても十分にとれない場合には当クリニックではアトピー勉強会を別途案内の通り行なっておりますのでご利用いただければと思います。

2012/6/16

アトピー便り24:受診の目的

 アトピーかどうかをはっきりさせたい、とにかく治してほしい、原因を突き止めたい、疑問があるので説明を聞きたい、ステロイドについて知りたい、現在の治療でいいのかセカンドオピニオンを求めたいとか、アトピーの患者さんならびに親御さんの受診目的は様々です。患者さんに受診していただいた目的をこちらがきちんと把握できるように当クリニックでは問診表で初診時に受診された理由をお伺いしていますが、それでもなかなか受診目的が伝わってこない場合があります。特に再診時には医師側は症状がよくなっているかどうかにもっぱら目が行きがちですが、患者さんの関心事は診察のたびに変わってきます。診察の時には気になること、疑問に感じることをご遠慮なくお話していただいて、すっきりしてお帰りいただければと思います。

2012/6/7

アトピー便り23:お久しぶりの患者さん

 アトピーの患者さんは治療の期間が長くなることが多く、受診回数も多くなります。定期的に診察を受けられていた方が久しぶりに受診された場合にはいろいろ考えます。(1)症状が良くなっていて、久しぶりに症状がひどくなった。(2)症状は変わらないが、手持ちの薬を倹約しながら使っていた。(3)他の皮膚科もしくは小児科で治療を受けていたが、何らかの事情で再び受診した。
 症状の軽い方は上記のいずれの場合でも大きな問題になることはありませんが、症状の重い方はそれぞれのケースで対応が変わってきます。(1)では治療を今まで通り続けていくので構いません。(2)では改めて薬の塗り方、使い方が正しいかどうかをしっかりと確認しなおさなければなりません。最も対応に苦慮するのが(3)の場合です。
 (3)の場合もいろいろなケースが考えられます。当クリニックで良くならないため他の病院を受診していた場合、元々他の病院にかかっていて前回たまたま当クリニックを受診していただけの場合、ドクターショッピングを続けられている場合など。なかなか直接状況をお聞きすることもできませんので、前回のカルテの記載と診察時の症状からいろいろ状況を予想しながら治療を行います。
 中には○○皮膚科が混雑しているから来たとか、○○皮膚科がお休みだから来たとか直接言われる場合があります。その瞬間は少しムッとしますが、よく考えると当クリニックを選んで来てくれたことに感謝しなければなりませんし、患者さんから診察は簡単に済ませてくれという意思表示を受けているのでこちらの対応もおのずと決まってきます。
 お久しぶりの患者さんにお願いしたいことは空白期間の状況を診察時にすべて伝えていただきたいということです。こちらの治療が効かなかったとか、他の病院を受診していたとかなかなかお伝えしにくいこともおありかと思いますが、アトピーをきちんと治療して、上手にコントロールしていくためにはこれらの情報は欠かせません。皮膚科同士で立場が逆転することもしょっちゅうありますので、いずれの皮膚科を受診される場合でも同様に情報提供をしていただければと思います。

2012/5/30

アトピー便り22:ギャップ

 アトピー(性皮膚炎)患者さんの診療中に患者さんとの間にしばしばギャップを感じることがあります。ギャップの代表的なものを挙げますと、治療のゴール設定、ステロイドに対する認識、症状についての現状把握といったところでしょうか。
 先ず、治療のゴールですが、患者さんならびに親御さんは一定期間治療をしたら完治して、治療の必要のない状態になることをイメージしておられますが、医師サイドとしては診療ガイドラインにもある通り、「症状はない、あるいはあっても軽微であり、日常生活に支障がなく、薬物療法もあまり必要としない」あるいは「軽微ないし軽度の症状は持続するも、急性に悪化することはまれで悪化しても遷延することはない」状態にすることを目標としています。
 ステロイドの外用剤については、患者さんには怖いもの、跡が残るもの、できるだけ使いたくないものといったイメージが先行していますが、医師サイドからは皮疹の重症度にあわせて適切に使用していく必要があり、症状のひどい場合にはかなり大量のステロイドを使用することもあります。症状の動きにあわせて、ステロイドの強さ、使用量を変えていきますので、その都度診察を受けていただく必要があります。
 ステロイドを使って症状が変わってきたときに、患者さんから「がさついて黒くなって一向に良くならない」と言われることがあります。多くの場合は「ステロイドを使って症状が良くなってきたので、炎症の跡が黒くなってきている」状態かと思われます。がさついているのは、最近のデータではステロイドを大量に使うと皮膚が乾燥することがわかっていますので、その影響を考えて保湿剤を併用しなければなりません。場合によっては、「ステロイドの使用量が足りないために、かゆみのためひっかいて症状が実際に悪くなっている」状態かもしれません。その場合には治療をしっかりとし直す必要があります。症状によってステロイドや保湿剤の使い方やステロイドを中止する時期など、治療全体が変わってきますので、正しく症状を把握しておく必要があります。
 アトピー診療で大事なことは、診察によって患者さんと医師の間のこれらのギャップを埋めていくことだと考えます。特にドクターショッピングを続けられている患者さんならびに親御さんにはそのギャップは埋まらないと思われがちですが、時間をかけてじっくりと主治医に説明を聞いていただければお互いに誤解を解いていけるのではないでしょうか。

2012/5/24


外来診療の概要

  • 治療指針
  • 主な診療の現状
クリニック・ドクターについての情報はこちら