アトピー便り

アトピー便り72:学校生活指導管理表(アレルギー疾患用)について

日本学校保健会で作成されている学校生活指導管理表(アレルギー疾患用)がありますが、アトピー性皮膚炎も対象疾患としてその中に入っています。記入する項目は、重症度、常用する外用薬、内服薬、食物アレルギーの有無、プール指導及び長時間の紫外線下での活動、動物との接触、発汗後における留意点、その他の配慮・管理事項についてで、主治医が記入することになっています。実際にはアトピーの子どもさんは軽症の方が多いので、これを利用することはほとんどありません。ところが、アトピーでも症状がひどくなると見た目も目立つようになりますし、強いかゆみで絶えずひっかいて集中力が欠けたりしますので、学校の先生にも現在の症状のこと、治療のこと、悪化因子などについて、この学校生活指導管理表(アレルギー疾患用)を介して理解してもらい、サポートしてもらう必要があります。学校生活指導管理表(アレルギー疾患用)が必要かどうかは皮膚科専門医の主治医に一度ご相談ください。

2019/2/7

アトピー便り71:花粉症と食物アレルギー

花粉症と食べ物、特にフルーツのアレルギーが同じ患者さんで見られることがしばしばあり、花粉-食物アレルギー症候群と呼ばれています。2月を目前にスギ花粉症の時期がもうすぐやってきますが、スギ花粉症患者さんの一部ではトマトのアレルギーが見られることが知られています。一方で、スギの飛散する時期と時を同じくして見られるハンノキの花粉症ではリンゴ、モモ、メロン、スイカ、豆乳の他、数多くの食物アレルギーとの関連が言われていますし、スギ花粉症が終わる頃から飛散の始まるイネ科の花粉症でもメロン、スイカ、小麦など、いろいろな食物アレルギーが見られる場合があります。
従って、スギ花粉症患者さんの中で数多くの食物アレルギーが見られる方はハンノキの花粉症の可能性がありますし、スギ花粉症が終わる頃に症状の始まる方はイネ科の花粉症の可能性がありますのでご注意ください。また、花粉の飛散している時期に食物アレルギーの症状が強く見られることもよく知られていますので、これらの傾向がみられる方は一度専門医を受診されることをお勧めします。診察時に症状が確認できない場合にはアレルギー検査は検診扱いで保険外(自費)診療となりますが、症状の見られる時期、症状が確認できる状態で受診されれば保険診療でアレルギー検査を受けることができます。

2019/1/31

アトピー便り70:アトピー患者さんの診療時間

診療時間は、患者さんから症状の経過や背景を聞く問診の時間、患者さんの皮疹を診たり、触ったりして症状を把握する診察時間、医師から病状や原因・注意事項を説明する時間、患者さんからの質問・疑問にお答えする時間から成ります。特にアトピー診療では問診に要する時間が患者さんによって大きく変わりますし、診察時間も重症な方ほど時間がかかります。さらに検査を行なう場合にはその説明時間も必要となります。
初診のアトピー患者さんにはひと通りこれらに時間を費やしますので、通常初診患者さんではそれなりに時間がかかることが多いのですが、外来が混み合っている時や症状が軽い患者さん(さらには外来終了時間ギリギリの駆け込み患者さん)にはどうしても説明する時間は短くなりがちですし、十分に患者さんからの質問・疑問にお答えする時間がとれない場合もあります。一方、再診患者さんについては診察時間が中心となりますので、経過が順調であれば診療時間も短くなり、アトピーの子どもさんに診療終了時に「はやっ」と言われることもあります。
初診時でも症状の軽いアトピー性皮膚炎の患者さんでは通常細かく説明をすることはなく、お薬を処方するだけで経過を観る場合もありますが、逆に経過が良くなければ再診時にその都度治療がちゃんとできているかどうか、悪化因子の話をしたり、そのための検査のことを説明したり、お薬の塗り方、保湿剤の使用についても説明したりしますので初診時以上に診療時間が長くなることもめずらしくありません。
ところで、何か月も間隔を空けて再診されるたびに「良くなりません」「悪くなりました」と言われる患者さんが時々いらっしゃいますが、先述のような再診時の対応がほとんどの場合できていません。多くのアトピー患者さんは単回の治療で完治することはありませんので、特に重症の場合や患者さん自身が治療の効果がないと思われる場合には数日~1週間程度で再診していただければと思います。
アトピー性皮膚炎の患者さんは、「完治させたい」「原因を知りたい」「ステロイドを使いたくない」「今後の見通しを知りたい」「セカンドオピニオンで受診した」など受診動機がいろいろあるにもかかわらず、診療する皮膚科医に伝わらない(言いにくい)ことも多いと思います。また、一度にいろいろ質問をされたいという患者さんも数多くいらっしゃいます。当クリニックではアトピー性皮膚炎の患者さんの割合が非常に多いこともあり、アトピー患者さん用の問診票をあらかじめ別途ご用意しておりますので初診、再診を問わずアトピー性皮膚炎で受診される際は(窓口でお申し出いただいて)ご活用ください。一度受診いただくと(問診票を含めて)診療内容[お話した内容]はその都度カルテに記録していきますので、数多くご質問されたい患者さんは再診の際何回かに分けてご質問いただければと思います。概ね症状に比例してお話することは多くなり、診療時間も長くなりますが、軽症の方でも詳しくいろいろお話を聞かれたいアトピー患者さんは、(予約制でない皮膚科の外来は季節的な変動が激しいので、夏場や連休前後の繁忙期を除いて)冬場などの外来ののんびりした時期を見計らって受診されることをお勧めします。当クリニックを受診されるアトピー患者さんで詳しくいろいろ説明を聞かれたい場合には先述のアトピー問診票がお役に立ちますので是非ご利用ください。

2019/1/9

アトピー便り69:アレルギー便り

最近口腔アレルギー症候群と小麦依存性運動誘発アナフィラキシーの患者さんを続けて診る機会がありました。いずれも患者さん自身のお話からそれぞれの疾患を疑い必要な項目の血液検査を行ないました。前者はカモガヤで異常高値を示しましたが、実際に食べて症状のみられるフルーツでは陰性でした。口腔アレルギー症候群では食物に関してはこのように検査では陰性になることが少なからずありますが、カモガヤの著明高値と普段の経過・症状から口腔アレルギー症候群と診断しました。一方、後者は小麦、グルテン、ω-5グリアジンいずれも陽性でした。検査結果から小麦依存性運動誘発アナフィラキシーと診断確定できました。
この2例の患者さんですが、普通にアレルギーのスクリーニング検査を行なっただけでは見落とされています。当クリニックではスクリーニング検査としてView39で39項目の検査を行ないますが、前者では食物では陽性所見が見られませんでしたので血液検査だけでは花粉症の診断で終わっていたと思います。後者ではω-5グリアジンがView39の検査項目に入っていませんので小麦アレルギーの診断で終わって、診断を確定することはできなかったと思います。
このようにアレルギー診療に関しては患者さんからの詳細な情報のもとに適切な検査を行なうことが重要です。今回の2例も患者さんから十分な情報を提供していただきましたので診断に至りました。外来では「アレルギー検査をしてください」という方が絶えず受診されますが、再現性(同じ状況で必ず起こる:10回のうち1回でも起こらなければ再現性なし)、即時性(アレルゲンに暴露されて数時間以内に症状が起こる)、特定の症状(じんましん、呼吸困難、下痢、血圧低下など)を確認することができなければ通常アレルギーは考えませんし、機械的にスクリーニングで血液検査を行なうだけでは診断に至らないことがほとんどです。
コチニール色素(マカロン、かまぼこ、外国製の口紅などに含まれる赤色色素)やエリスリトール(カロリーゼロなどで使われる合成甘味料)によるアレルギー、サーファーに多く見られる納豆アレルギー(即時型ではなく遅発性が特徴)、マダニ咬傷に見られる牛肉アレルギーなど、既知のアレルギーで見落とされがちなアレルギーもいろいろあります。先述の再現性、即時性(納豆アレルギーは除く)、特定の症状が見られる方で、アレルギーが気になる方はアレルギー専門医を一度受診されることをお勧めします。また、「血液検査だけどうしても受けたい」という方は保険外(10割負担)であれば検査を行なうことができますので診察医にご相談ください。

2018/11/30

アトピー便り68:検査について

乳幼児のアトピー(性皮膚炎)患者さんで卵白で血液検査がわずかに陽性に出ただけで食事制限をダラダラと続けているケースがいまだに見受けられます。仮に陽性であっても程度が軽い場合には食べても問題(関係)がないことが多く、食べれるものはどんどん食べても構わないというのが近年の考え方です。アトピーは血液検査で診断をするわけでもありませんし、アレルギーの血液検査の数値とアトピーの重症度が必ずしも比例するわけではありません。とはいうものの、ステロイドの外用治療を適切に継続して行なっても症状が改善しない場合には悪化因子を見つけるために血液検査やパッチテストが必要となります。また、治療を続けていても一向に良くならないと言われる患者さんではTARC(という血液検査)アトピーの皮疹の重症度を判定することができますので、定期的に検査することで客観的に良くなっているかどうかを見極めることができます。小児のアトピーでは軽症例が多く、軽い湿しんか乾燥肌があるだけなのか、たいていの場合は触診で判別できますが、判別が難しい場合にはTARCを参考にします。言いかえれば、湿しんでは保湿剤だけ外用しても症状は良くなりませんし、ステロイドを適切に外用しなければアトピーの皮疹は軽快しませんので、正しく治療ができているかどうかを判別するのにTARCは大変役に立ちます。
以上をまとめますと、アトピー治療において経過の長い患者さん、重症の方、治療しても良くならないケースでは症状の改善のためには必要に応じて適切な検査を行なわなければなりません。

2018/11/11


外来診療の概要

  • 治療指針
  • 主な診療の現状
クリニック・ドクターについての情報はこちら