アトピー便り

アトピー便り22:ギャップ

 アトピー(性皮膚炎)患者さんの診療中に患者さんとの間にしばしばギャップを感じることがあります。ギャップの代表的なものを挙げますと、治療のゴール設定、ステロイドに対する認識、症状についての現状把握といったところでしょうか。
 先ず、治療のゴールですが、患者さんならびに親御さんは一定期間治療をしたら完治して、治療の必要のない状態になることをイメージしておられますが、医師サイドとしては診療ガイドラインにもある通り、「症状はない、あるいはあっても軽微であり、日常生活に支障がなく、薬物療法もあまり必要としない」あるいは「軽微ないし軽度の症状は持続するも、急性に悪化することはまれで悪化しても遷延することはない」状態にすることを目標としています。
 ステロイドの外用剤については、患者さんには怖いもの、跡が残るもの、できるだけ使いたくないものといったイメージが先行していますが、医師サイドからは皮疹の重症度にあわせて適切に使用していく必要があり、症状のひどい場合にはかなり大量のステロイドを使用することもあります。症状の動きにあわせて、ステロイドの強さ、使用量を変えていきますので、その都度診察を受けていただく必要があります。
 ステロイドを使って症状が変わってきたときに、患者さんから「がさついて黒くなって一向に良くならない」と言われることがあります。多くの場合は「ステロイドを使って症状が良くなってきたので、炎症の跡が黒くなってきている」状態かと思われます。がさついているのは、最近のデータではステロイドを大量に使うと皮膚が乾燥することがわかっていますので、その影響を考えて保湿剤を併用しなければなりません。場合によっては、「ステロイドの使用量が足りないために、かゆみのためひっかいて症状が実際に悪くなっている」状態かもしれません。その場合には治療をしっかりとし直す必要があります。症状によってステロイドや保湿剤の使い方やステロイドを中止する時期など、治療全体が変わってきますので、正しく症状を把握しておく必要があります。
 アトピー診療で大事なことは、診察によって患者さんと医師の間のこれらのギャップを埋めていくことだと考えます。特にドクターショッピングを続けられている患者さんならびに親御さんにはそのギャップは埋まらないと思われがちですが、時間をかけてじっくりと主治医に説明を聞いていただければお互いに誤解を解いていけるのではないでしょうか。

2012/5/24

アトピー便り21:患者さんによって違う!?

 一言でアトピー(性皮膚炎)の診察といっても、症状の軽い方、ひどい方、初めて皮膚科を受診する方、病院を転々としている方、久しぶりの再診の方など、患者さんによって状況がまるで違います。診察時の患者さんの対応も、自分の考えを熱心に話される方、こちらの話を黙って聞いておられる方、疑問点や気になることを適宜質問される方など、千差万別です。
 従って、アトピーの患者さんには型どおりの診察はなく、患者さんによって説明する内容も治療を含めた診療内容も変わってきます。また、同じ患者さんでも診察ごとにお話する内容が変わってくることもあります。再診時に症状が良くなっていなかったり、悪化している場合には、正しくつけ薬をつけているかどうかを先ず確かめます。多くの場合はここで引っかかりますが、きちんとつけ薬をつけている場合には症状が良くならない原因を一緒に見つけていかなければなりません。
 初診時ならびに再診時でも調子の悪い時には十分な診察時間が必要となりますが、土曜日の午前中、診察の終了時間間際、夏場やお休み明けなど初診の患者さんで込み合う時にはどうしても十分な時間がとれず、患者さんに納得いただけるまでお話をお伺いすることができないことがあります。当クリニックではトップページでご案内していますが、アトピー勉強会を予約制で行なっています。症状の軽重、受診回数の多寡にかかわらず、通常の診療で十分にご理解、ご納得いただけなかった患者さんは是非ご利用いただければと思います。

2012/5/16

アトピー便り20:医者によって違う?

 アトピーの患者さんならびにお母さんによく「医者によって言われることが違う。どれが正しいのか分からない」と言われます。例えば一目でアトピーと思われるようなケースでアトピーの説明をしていると、「今までアトピーとは一度も言われたことがない。前の医者には乾燥肌としか言われていない。」と戸惑われることがあります。特に以前に小児科を受診したことのある、アトピーの小児のお母さんからよく言われます。これは、アトピーはアレルギーによっておこるため治らないものだと多くのお母さんに深刻に受け止められているため、小児科医および一部の皮膚科医が意識的に乾燥肌という表現で説明を行なっているためかと思われます。小児のアトピーは7~8割は症状が軽く、たいていの場合経過とともに症状は軽くなり、ひいては多くは治ります。アトピーは皮膚のバリア異常による乾燥肌がきっかけとなって起こる湿しんでもあり、小児のアトピーでは症状の軽い場合には乾燥肌と言っても問題はありません。
 一方で、アトピーの一部の重症例は明らかに単なる乾燥肌とは異なり、アレルギーが関係していることも多く、しっかりと適切な治療を続けなければ治りませんので注意が必要です。前医を受診した時と当クリニックを受診した時の症状に変わりがなければ、先述の乾燥肌かアトピーかについては、軽いアトピーで余計な心配をお母さんにかけまいとするのか、軽いアトピーがひどくならないように注意を払いながらきちんと治療をしていくように促すのか、治療する医者の方針の違いが言葉の違いにつながったものにすぎず、大差はないものと思われます。
 当クリニックでは症状の軽重を問わずアトピー性皮膚炎の診断基準に基づきアトピーと思われるものはその旨患者さんならびにお母さんに伝えています。

2012/5/9

アトピー便り19:外来便り(2012年春)

 汗に伴う皮膚のトラブルが目立つようになっています。あせもは幼児だけでなく、日光によって大人でも見られることがあります。アトピー性皮膚炎も汗によってひどくなりますので、季節の変わり目のこの時期は急激に悪化するケースも増えています。汗に対するスキンケア、早めの治療を心がけてください。

2012/5/2

アトピー便り18:アトピー性皮膚炎治療研究会&日本皮膚科心身医学会より

 外来を休診させていただき出席したアトピー性皮膚炎治療研究会からはや1週間が過ぎました。今回も非常に多くのことが勉強になりましたが、特にステロイドの使用量については目からウロコが落ちる思いでした。重症の場合には治療開始時のステロイド外用剤の必要量は思いのほか大量であること、減量する時期を急ぎすぎないことが大事だと再認識しました。そのほかにアトピー教室の紹介も印象的で、とても参考になりました。当クリニックでも過去に小児のアトピーのお母さんを対象に何回か開催しておりますが、もっと頻回に開催するには勉強会の対象を重症の成人アトピーの方にも広げたり、開催日時を土日に変更したりするなど、再検討をしなければならないと思いました。
 翌日開催された日本皮膚科心身医学会でも内容はアトピーが中心で、興味深い実際の症例のプレゼンテーションが数多く予定されていたのですが、帰りの飛行機の関係で出席できなかったことが大変残念でした。主に教育講演に出席しましたが、その中では講師指導のもとでのコーチングの体験実習が印象的でした。

2012/2/11


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