アトピー便り

アトピー便り107:くるみアレルギー2選

ここ何か月かで、くるみアレルギーの患者さんを2例診る機会がありました。1例目は成人女性で、くるみ、ピーナッツ、豆乳を食べると口とのどに症状が出るとのことで、血液検査をしました。RASTでは、ピーナッツ、Ara h2ともに陰性、大豆陰性、Gly m4クラス2、くるみ、Jug r1ともにクラス2でした。この結果から豆乳アレルギー、くるみアレルギーが確定できました。もう1例は、幼児でくるみを食べると直後にじんましんと嘔吐が見られるとのことでしたが、RASTではくるみクラス3、Jug r1は陰性でした。この結果からは先の例とあわせて2例とも花粉-食物アレルギーの可能性が示唆されて、今後の経過観察、再検査が必要と考えています。
今回のように患者さんから正確な情報を提供していただきますと効率良く検査をして正しく診断することができますし、さらに必要な検査を行うことで新たなアレルギーを見つけたり、発症を予防する手助けになる可能性があります。ところが、何の情報の提供もなく「食後にじんましんが出ることがあるので、検査をして何が原因か調べて欲しい」と食べ物のアレルギー検査(RAST)を網羅的に希望される患者さんが後を絶ちません。このような状況で検査をする場合には検診と同じ扱いで保険外診療(10割負担)となるために高額負担となるものの、実際に検査をして食物アレルギーの原因が見つかることはほとんどありません。
毎回同じ症状がみられる、すなわち再現性がなければ食物アレルギーではありません。従って、先ず気になる食材があってじんましん程度の症状だけで、あまり強い症状がみられないのであれば単独で試食されるのが最も確実な検査方法です。アナフィラキシーなどの全身症状がみられる場合には試食するのは危険なので今回の例のように候補となる食材を整理して検査をすることが必要となります。じんましんの場合にはアレルギー性のものは5%程度と言われており、アレルギーでないものがほとんどです。症状の経過からだいたいアレルギーかどうかの判断はできますので、食物アレルギーが心配な方は先ず皮膚科もしくはアレルギー科の専門医を受診されて相談されることをお勧めします。また、これからイネ科の花粉症が多くなる時期で、花粉-食物アレルギー症候群の症状も目立つようになります。あわせてご留意ください。

2023/6/9

アトピー便り106:アトピー患者さんあるある2

ある時旅先でお薬がなくなったということでアトピーの患者さんが来院されました。地元にかかりつけの皮膚科医はいるが、顔の皮疹が特に目立つので治療をして欲しいとのことでした。顔の皮疹だけでも重症アトピーが想像できましたが、かかりつけの皮膚科医もいて、旅先(短期の滞在)ということで全身の皮疹は確認しませんでした。最終的には顔の症状を抑えるためにステロイド外用剤を処方しましたが、診察中には「ステロイドの注射をしてください」と言われました。お話をよく聞いてみますと、かかりつけ医ではステロイドの内服を続けていて、症状が目立つときにはさらに注射をしてもらっていたようです。ステロイドの内服、注射は標準的な治療ではないこと、こちらではステロイドの注射はできないことを説明しました。ステロイドの全身投与に至ったいきさつを含めて症状の経過もよくわかりませんので、地元に戻られてかかりつけ医に相談するよう話しました。
このように元々かかりつけの皮膚科医がいながら、いろいろな事情で受診していただく場合がよくあります。その多くはすぐにかかりつけ医に戻られますので、基本的には細かくお話を聞いたり、全身をくまなく観察することはありません。症状がかなりひどい場合でも通常はかかりつけ医に次回受診するまでのつなぎの治療になることがほとんどです。ところが、このような患者さんの中にもセカンドオピニオンを求めて受診されたり、転医を念頭において来院される方もいらっしゃいます。すべての患者さんに対して分け隔てなく丁寧に診察するのが理想ですが、定期的にかかりつけ医として受診していただいている患者さんと元々別に主治医がいる患者さんや再診がほとんど見込めない方には自ずと違った対応をしてしまいがちです。診察中に疑問や納得できないこと、ご要望がおありの場合にはご遠慮なくお申し出いただければできる範囲内でお応えさせていただきます。

2023/5/18

 

アトピー便り105:アトピー患者さんあるある1

先だって診察時間の終了近くに初診でアトピー性皮膚炎の症状の目立つ方が来院されました。1週間分の外用剤と内服薬を2週間分処方しました。その1か月後にお昼休み間近に再診されて、「外用剤は残っているので内服薬だけ欲しい」と言われました。一応内服薬を2週間分追加処方しましたが、外用もきちんとできていないし、皮疹もあまり良くなっていなくてとても複雑な気持ちでした。このようなケースは特にアトピー性皮膚炎の患者さんあるあるで、いつも診察時間の終了間際に来院されて、診察に来られる(治したい)というよりはお薬だけもらえればいいといった感じです。皮疹を診てもらおうという雰囲気は感じられず、病状、経過を説明してくれるわけでもありません。多くは一度限りの受診で終わりますが、今回のように仮に再診されても症状が良くなっていることはほとんどありません。患者さんに受診していただけるというのはありがたいのですが、毎回時間間際に来られますので十分に時間をとって診察、説明はできませんし、基本的にこちらの説明、指示通りにしようという意思も見受けられません。そのためお話も説教じみたり、こちらの口調も強くなったり、一方的に大雑把に話すだけになったりします。従って段々と再診されなくなる方も多いのですが、再診される場合は忘れた頃にまた同じように時間間際に来院されます。その背景を想像してみますと、普段はかかりつけの皮膚科があって説明も処方もしてもらっていて、そこがお休みや大変混み合っている時にこちらに来られているのではないでしょうか。見立て通りであれば、その旨を診察時に直接伝えていただければと思います。そうすれば患者さんに嫌な思いをさせることなく、(ご要望通りにはならないかもしれませんが)次にかかりつけ医を受診するまでのつなぎ分を処方することができます。こちらもその時は少しはショックを受けるかもしれません(顔に出るかもしれません)が、セカンドチョイスという位置づけで来ていただけるのはうれしく思います。一方で、これに当てはまらないにもかかわらずきちんと説明をしてもらえなかった、良くならないので不満足という患者さんは改めて終了時間の間際以外の時間に余裕を持ってご来院いただければと思います。ご要望にお応えしてきちんと診察、説明をさせていただきます。尚、診察を受けられる時間が限られている方はアトピー性皮膚炎の再診患者さんにつきましては当クリニックでは時間予約を受け付けています(土曜日を除く)ので受付でお申し出いただくか、もしくは夜間診療ならびに土曜日午後、日曜診療をしている皮膚科を受診されることをお勧めします。

2023/4/6

アトピー便り104:小麦アレルギー2選

ここのところスギ花粉の飛散が多くなり、皮膚のトラブルで受診される患者さんが増えてきました。少し前になりますが、立て続けに小麦アレルギーの患者さんを二人診る機会がありました。一人目はケンタッキーフライドチキンを食べた直後に運動をしてアナフィラキシー様の症状が起こって後日受診されました。過去にも食後に運動をして何回か蕁麻疹が出たことがあり、一度はパスタを食べた後とのことでした。一連の経過から小麦依存性運動誘発アナフィラキシーを疑い血液検査を行いました。IgE(ω-5グリアジン)陽性で診断を確定することができました。二人目は食事後走った後に喘息様の症状とめまいが起こり後日来院されました。同様に小麦依存性運動誘発アナフィラキシーを疑い血液検査をしましたが、IgE(ω-5グリアジン)は陰性で、IgE(小麦)のみ陽性でした。今回の検査では原因の特定はできませんでしたが、問診でイネ科の花粉症やフルーツのアレルギーを申告されましたので、花粉-食物アレルギー症候群関連のアレルギーの可能性もあります。また、別の食材による食物依存性運動誘発アナフィラキシーも疑われますので更なる検索、注意が必要となります。
症状が良くならないのでアレルギーを調べてほしいといきなり検査希望の初診の患者さんが数多く来院されますが、やみくもに検査をして症状の原因につながるアレルギーが見つかることはほとんどありません。今回のように患者さんからのいろいろな情報(エピソード)がアレルギーの診断には非常に重要ですので、このようなエピソードのある方は一度アレルギー科を受診されることをお勧めします。

2023/3/8

アトピー便り103:なすすべなし2

お昼休み直前に幼児を連れてこられたお母さんにいきなり金属アレルギーの検査をしてくださいと言われました。他医で金属アレルギーの可能性を指摘され、現在は金属成分を制限した食事をしているとのことでした。現在は金属アレルギーを疑わせる症状がないことから、当クリニックでは検査はできないこと、ならびに金属アレルギーのパッチテスト自体を行なっていないことをお伝えしたうえで前医で改めて検査をしてもらうようにお話しました。すると保湿剤だけ出してくださいということでしたが、初診で保湿剤のみの処方はできない旨説明したところ激怒して帰られました。・・・。

2023/2/16


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