アトピー便り
京都大学皮膚科の研究グループが皮膚表面の保護機能を高める「フィラグリン」というタンパク質を増やし、アトピー性皮膚炎の症状を改善させる人工合成化合物を発見したというニュースが少し前になりますが連日ニュースで大きく報道されていました。
現在のアトピー性皮膚炎の一般的な治療は、対症的にステロイド剤の外用で湿しんという皮膚の炎症を鎮めながら、乾燥肌という皮膚のバリア異常を保湿剤で改善していくことです。もちろん悪化因子の検索、除去も必要に応じて行なう必要があります。
アトピー性皮膚炎の成因として、先の「フィラグリン」タンパク質の皮膚表面での減少による皮膚のバリア異常からアレルゲンの侵入によって症状が進展していくということが挙げられています。
近い将来この人工合成化合物の研究が進んで、薬としてアトピー性皮膚炎の治療に使うことができるようになれば、湿しんの重症化やアレルギーの進展を防ぐことにつながるものと思われます。ステロイド外用剤の使用量を大幅に減らすことができれば、ステロイド忌避の患者さんや親御さんにとっても福音となる薬になるかもしれません。その日が来るまでは正しくステロイドを使ってアトピー性皮膚炎を上手にコントロールしていきましょう。
2013/10/14
以前から水いぼ(伝染性軟属腫)を治療するかどうかで医師の間で対応が異なっており、子どものお母さん方から戸惑いのお声をいただくことがありました。プールの時期にとるか、とらないかでいつも問題となっていました。
平成25年5月に日本臨床皮膚科医会、日本小児皮膚科学会の統一見解として、「プールの水ではうつりませんので、プールに入っても構いません。・・・」と発表されました。平成24年4月の時点では同じ両学会の統一見解は、「プールの水ではうつりませんが、肌と肌が触れあうことでうつりますので、おおぜいでプールに入ると感染の可能性が大きくなります。露出する部位のみずいぼは、治療をしてとっておきましょう。・・・」となっていましたので、文面だけをとれば水いぼはとらなくてもよくなったと思いましたし、実際の外来でもそのように伝えていました。治療をしなくても水いぼは最終的には治りますし、子どものあいだではプール以外でうつる機会も多いことからプールを禁止する意味もないのだろうと思っていました。
この連休中に日本小児皮膚科学会で水いぼの治療をテーマにしたセミナーがあり、聴講してきました。講師が皮膚科医だけだったということもあり、水いぼを治療するのは当然であり、スピール膏を使ったり、処置の前に痛み止めのペンレステープを使ったりして、痛みをなくすための方策を工夫しているということでした。プールに入るのは構わないが、皮膚科医としては当然治療をしなければならないと重ねて強調されていました。原則的には水いぼはすべて取るべきという内容でした。統一見解は変わったものの、皮膚科医としての治療のスタンス、考え方は以前と何も変わっていませんでした。
そのセミナーでは統一見解が変わった経緯が何も説明されませんでしたので(聞きもらしたのかもしれませんが)、皮膚科、小児科を問わず治療に対して消極的な医師も多いので、その他諸般の事情を含めて治療に対して積極派、消極派いずれにも配慮した玉虫色の結論を出したのかなと勝手に想像しました(間違っていたらすみません)。
2013/7/16
暑さとともに皮膚のトラブルが増えていますが、ここのところ目立つのが手足口病です。子ども、大人を問わず、何年か前に流行った、広い範囲に出る、症状の強いタイプが目立ちます。発生当初はこちらも手足口病をあまり考えていないため、典型的ではない水ぼうそうと誤診してしまいがちです。手足口病自体に対して治療はありませんが、しばらくの間悪くなる一方なので、今回流行っている重症の手足口病をご存じないと、患者さんやご家族の方はとても不安になるかと思います。何か月かして爪の変形が現れることもありますが、手足口病の後遺症で、しばらくすると治りますのでご安心ください。
2013/7/11
5月15日NHK総合テレビでためしてガッテンが「しつこ~い湿疹かゆみまさかの犯人を大発見」というテーマで放送されました。所用のため直接テレビは見ておりませんでしたが、後から健康関連情報のメールマガジンでその内容を知りました。NHKホームページのためしてガッテンのところで過去の放送に詳細が載っていますので、放送を見逃した方は是非一度目を通していただければ大変役に立つと思います。
その番組でも紹介されていましたが、かぶれの原因を探す検査がパッチテストです。ところが、診療の現場ではなかなか行なうようになりません。検査の三日間入浴を控えてもらわなければならないこと、判定日の二日目、三日目に受診してもらう必要があることから患者さんの了解を得られないことがしばしばです。かぶれの原因として最も多い金属アレルギーについては、汗で症状が悪くなりますので夏場に症状が目立ちます。ところがパッチテストを夏場に行なうことは先述のように難しく、冬場にパッチテストを行なうようにしていても汗をかかない冬場には症状が出ないことが多く、検査をしないでそのままになってしまいがちです。
今回のためしてガッテンは診察時間中にはなかなか説明しきれない部分を詳しく紹介していただいており、皮膚科専門医、アレルギー専門医にとっても大変ありがたいものと思われますし、特にパッチテストを積極的に行なうための啓発にも一役買ってくれていると思います。これからもこのような内容のテレビ放送が続いてくれればと願っています。
尚、日本皮膚アレルギー・接触皮膚炎学会のホームページで紹介されているパッチテストを受けられる医療機関は、研究のためのパッチテストの結果集計に協力した病院に限られており、当クリニックを含めて実際には他にも数多くの皮膚科で実施していますので、パッチテストをご希望の方は先ずはお近くの皮膚科専門医にお問い合わせください。
2013/5/23
日本アレルギー学会のポスター展示のところで一番興味深かったのは、内因性アトピーと金属アレルギーについての発表でした。血清IgE高値でダニなどのIgEも高い外因性アトピー(性皮膚炎)と血清IgE正常もしくは軽度上昇でダニなどのIgEが高くない内因性アトピー(性皮膚炎)については以前から4対1の割合で見られることが言われており、内因性アトピーでは金属アレルギーが高頻度に見られることが知られています。発表ではそれを裏付ける具体的な研究データが示されていました。外因性アトピーでのニッケルのパッチテスト陽性率は18%(コバルト12%)に対して、内因性アトピーでのニッケルのパッチテスト陽性率は41%(コバルト41%)と高いことが示され、汗に含まれるニッケルも内因性アトピーのほうが外因性アトピーよりも多く検出されていました。
よく外来で臨床的にアトピー性皮膚炎と診断できる子どものお母さん方から「血液検査でアレルギーはなかったからアトピーではありません」と言われることがありますが、正しく言えば外因性アトピーではないということです。言い換えれば内因性アトピーの可能性が高く、金属アレルギーのパッチテストを行なうと陽性にでる可能性が高いものと思われます。
この研究発表のコメントで最も納得したのは、内因性アトピーでは皮膚は正常なバリアを持っており、外因性アトピーのようにバリアの破綻からダニなどのいろいろな大きな抗原が皮膚の中に浸入してきてアレルギーにつながることはないが、金属などの非蛋白抗原は分子量が小さく正常なバリアを通過しやすいため金属アレルギーが起こるのではないかというところでした。
成人の難治性のアトピー性皮膚炎で、血液検査でアレルギーは見られず、皮膚の状態も全体的には乾燥傾向が少ないケースにしばしば遭遇します。そのような場合には金属アレルギーを疑って積極的に検査を行なう必要があると実感しました。
2013/5/13
21 / 29ページ« 最初«...10...1920212223...»最後 »