アトピー便り

アトピー便り113:お薬だけ?!

しばらく落ち着いていたアトピー性皮膚炎の患者さんで急激に悪化するケースが段々増えてきました。普段から保湿のスキンケア、早めの治療開始、症状に応じた外用治療を心がけてください。寒暖差、気温の低下に伴う皮膚の乾燥はアトピー性皮膚炎に限らず皮膚のトラブルにつながりやすいのでこの時期はお気をつけください。

以前に経験したお薬だけ2例を紹介します。1例目は、診察終了時間間際に来院されて「水虫で他の皮膚科で2週間治療している。薬だけ出して欲しい。」とのこと。お薬だけが欲しいのであれば薬局に行けば同じ効能の薬を簡単に購入できるのですが、おそらく費用のことを考えられたのでしょう。さらに言えば、簡単に診察を済ませば転医しても余分な初診料や検査代などがかからないと思われたのかもしれません。一応「初診なので真菌要素の顕微鏡検査をしなければなりませんが、すでに外用治療を行なっているため検査をしても水虫を確認できないかもしれません。その場合水虫の治療は行なえません。」とお答えしました。2例目は、他の皮膚科でじんましんとにきびの治療をしていて薬を希望。薬の詳細(名前)は不明。診察時にじんましんの症状は確認できず、にきびの症状については治療しても良くならないとのことでしたが、推移は不明。結局2例ともキャンセルして、前医でもう一度治療を続けられるようにお伝えしました。
2例ともこちらの診察は眼中になくて何はともあれ前医と同じ(ような)薬を出して欲しいということでした。アトピー性皮膚炎など、診察時に皮疹・経過を確認できて(診断にあまり困らずに)それまでの治療経過(治療薬)がはっきりしている場合にはつなぎの薬として同じ(ような)薬を処方することはあります。ところが、1例目の水虫患者さんは、初診であれば顕微鏡検査が必須になりますのでお薬だけを出すことはできません。2例目もじんましんの症状をこちらでは確認できていませんし、にきびについては治療薬と経過がはっきりしていませんのでいきなりお薬だけを出すことはできません。いずれのケースも前医であれば容易にお薬を出してもらえますし、経過を踏まえて適切に治療を変えてもらうこともできます。他の疾患で来院されたことがあって、相互理解、信頼関係のある患者さんであれば話は変わりますが、皮膚科専門医としての一分(いちぶん)もありますので今回のようなケースで初診患者さんに対してご要望通りに機械的にお薬だけを出すことはありません。おそらく前医はコミュニケ-ション能力が高く、信頼のおける人気の皮膚科医であったのだろうと推測されますが、願わくば此方に対しても最低限のリスペクトは持っていただきたいものです。

2023/12/2

アトピー便り112:アレルギーの救急対応について

寒暖差が激しく、汗をかいたり、皮膚が乾燥したり、そのため一時落ち着いていたアトピー性皮膚炎の患者さんの皮疹の急激な悪化がちらほら見られるようになりました。重症化予防のため早めの治療、スキンケアの継続を心がけてください。
ある日の夕方5時頃、受付にくるみを食べた直後に口のまわりが赤くなって、咳き込んでいるので子どもを診てもらえないかと親御さんから電話で問い合わせがありました。喘息様症状と思われ、重症化する可能性のあるくるみアレルギーが疑われましたので救急対応のできる病院の受診を勧めました。すると、すでにお薬は別の病院で抗ヒスタミン薬をもらっていて内服したとのこと、薬はどのくらいで効果が出るのか、それほどひどくないのにどうして診てもらえないのか等強い口調で言われました。喘息様症状については皮膚科では対応しかねることをお伝えしてどうにか納得していただきました。主治医に一度診てもらっていながら、(おそらく連絡がとれなかったとはいえ)診察していない皮膚科医がどうして電話越しに患者さんから責めたてられないといけないのだろうかとモヤモヤした気持ちになりましたが、後から考えると親御さんからしたら相当ご心配、ご不安だったのだろうと思われます。その後は分かりませんが、適切に対処され、アレルギーの診断がきちんとなされていることを願ってやみません。

2023/11/1

アトピー便り111:医師のコミュ力

少し前の話ですが、半年ぶりに重症のアトピー性皮膚炎受診された患者さんが再診されました。初診時は1週間分の外用剤を処方して再診時の皮疹の状況で治療を変更する予定でした。今回の皮疹も中等症以上の症状でコントロールは不良でした。元々他の皮膚科を受診されてはいましたが、皮疹の状態と処方量を考えて、治療が足りない旨を一方的にお話していました。しかしどう考えてもその時の皮疹は、当クリニックの半年前の1回分の処方量だけでは有りえないのでお話をよく伺ったところ主治医が別にいて予約がとれないのでこちらに来たとのことでした。それを伺って、それ以上の説明は止めて次に主治医にかかるまでの少量のみ処方しました。確認はしていませんが、初診時も同じような感じで受診されていたのかもしれません。その後再診はもちろんありません。このようなケースは日常茶飯事ですが、これを機会に主治医を変えたい、セカンドオピニオンを求めたいといった患者さんにおかれましては診察時にその旨お伝えください。改めてお話、ご説明させていただきます。
首まわりにあせもをこじらせたような紅斑で受診された患者さんに弱いステロイドの外用剤を処方しようとしましたが、小さいころにステロイド外用剤を使っていてその蓄積で肘の前に色素沈着が残っているのでステロイドを使いたくないとのことでした。幼少期にアトピー性皮膚炎があったものと推測されますが、ステロイド外用剤の不適切使用による典型的なステロイド忌避のケースでした。一方的にステロイド以外の薬を強く希望されましたので、条件反射的に現在の皮疹に対してはステロイド以外には治療薬はないとお答えしてしまいました。その上で色素沈着がステロイドによって起こったというのは誤解である可能性が高いこと、ステロイドを最初に使ってその後の状況でステロイド以外の薬に変更したりする旨を説明しました。結局ステロイドを使うのであれば、治療はしなくていいとのことで、受診自体をキャンセルしました。後から振り返れば、あせもの症状だけであれば何もしなくても症状が軽快する可能性もありますし、あせものよりで感染を起こしかけている場合にはステロイドの外用で悪化する可能性もあり、抗生物質の外用剤でひとまず様子をみるという選択肢もあったのかもしれません。
二例とも医師側の対応如何によっては違った診療結果になっていたかもしれません。当方のコミュニケーション力、咄嗟の判断能力、冷静さの不足を痛感させられた出来事でした。

2023/10/2

アトピー便り110:最近アレルギーの診断に至った2例

最近アレルギーの診断に至った小児2例を紹介します。1例目は、乗馬の後だけ目のまわりにじんましんが出るということで血液検査をしたところ、ウマ皮屑陽性、イネ科(マルチアレルゲン)陰性の結果よりウマアレルギーが確定しました。2例目は、リンゴ、モモを食べた後にのどがイガイガするとのことでリンゴ、モモのアレルギーを疑い血液検査をしたところ、リンゴ、モモともに陽性でした。リンゴ、モモによる口腔アレルギー症候群でしたが、花粉-食物アレルギー症候群によるものを疑い、後日追加検査をしたところ、はんのき、しらかんば、ぶたくさ、Gly m 4(豆乳)陽性で診断は確定されました。スギ花粉症は自覚症状もありましたし、検査でも一番高値を示していました。スギ花粉症の時期とはんのき花粉症の時期は被りますのでしばしば見落とされがちです。生活習慣、行動状況からはんのき花粉症からリンゴ、モモのアレルギーが誘発されたものと考えられました。このように2例ともに患者さんからの情報に基づいて検査をして診断に至りました。アレルギーの診断に至るほとんどのケースはこのように患者さんからの正確な情報に基づくもので、やみくもに検査をして有意義なアレルギーがたまたま見つかることは先ずありません。夏から秋にかけてはイネ科、雑草の花粉症が見られる時期ですので、それに伴ってメロン・すいかなどのアレルギー(食べた直後にのどがイガイガする)が見られることもあります。何はともあれ「アレルギー検査をしてください」ではなく、アレルギーが心配になる理由、具体的な症状・経過をお話いただいてその情報をもとに検査をすれば有意義なアレルギーが見つかるかもしれません。

2023/9/1

アトピー便り109:治らないときはすぐに受診を

1年くらい前に顔面の皮疹で来られていた患者さんが久しぶりに来られて同部位の湿しん病変(前回とは少し違う?)に対して以前処方した外用剤を出しておきますと言ったところ、前の薬は効かなかったと言われ処方を拒否されました。実際のところ効いたか効いていないかは再診していただいたわけではありませんのできちんと確認できていません。見た目はどう見ても外的な刺激による皮膚炎で、その旨説明しましたが、患者さん自身は思い当たるものがない、ありえないとのことでけんもほろろに却下されました。効かなかった薬について患者さんもこちらで処方していない外用剤のことを言っていましたので、別の皮膚科を受診していた可能性もありますが、いずれにせよ効かなかったの一点張りでした。そこで、「見立ては変わらないので前回と同じ薬を出すしかありません。効かないのであればそのままみてください。」とつい言ってしまいました。当然「治らないのにそのままで良いのですか?」となりました。そこで、「こちらの見立ては外的刺激による皮膚炎しか考えつきません。外用剤は炎症を抑えるだけで、原因が取り除かれなければ治りません。また治療で良くなっても色素沈着は残ってすぐには元の皮膚に戻りません。治療をして症状が改善しているかどうかはその時点でこちらが確認しなければわかりません。今のお話に納得いただけない場合には他の皮膚科でセカンドオピニオンを受けられることをお勧めします。違う見立てがあって違う治療をしてもらえるかもしれません。」とお話しました。納得はされていませんでしたが、一応先の処方薬で様子を見ることになりました。ちなみに今回も再診は今のところありません。
患者さんは短期間の治療で症状が完治して、再発しないのをイメージして皮膚科を受診されます。皮膚科医は外用剤を塗って炎症の後遺症(ステロイドの後遺症ではありません!!)で皮膚が茶色くなれば良くなった、治ったと考えますが、患者さんの多くは元通りにきれいな皮膚になるまでは治ったとは思われません。一方で皮膚科医は、原因対策をしないで外用剤を塗っているだけであれば根治療法ではなく対症療法なので再発しても仕方ない、塗らなければ症状は出続けると思っています。そのため皮膚の症状があまり良くなっていなくても、患者さんには特別に説明もせずにしっかりと薬を塗り続けましょうと繰り返し指示しがちです。このような患者さんと医師側の認識のずれはよくありますので、治療をしても治らない、悪くなったと思われるときはすぐに前医を受診してください。特に診察時に信頼できそうにない、相性が悪い、癇に障ると感じてしまった場合得てしてすぐに他医を受診しがちですが、もう一度だけ受診してみてください。たまに当クリニックでも他の皮膚科で良くならなかったためこちらに来られる方がいらっしゃいますが、元の皮疹の状態、前医での治療内容、検査結果、症状の経過など詳細が分からない場合には却ってマイナスになることが多く得策ではありません。良くなっているかどうかの見極め、見立てが違っている場合の対応、今後の経過、治療方針の説明などを踏まえて、直接気になることを聞いて患者さんご自身が納得できない場合には転医をお勧めします。ただし、その前にステロイド忌避などで医師の説明に聞く耳を持たなかったり、「水虫だ」「アレルギーだ」「検査をしたい」などと自己判断でご自分の意見を一方的に主張されたりしている場合、また医師に対してイラッとする気持ちがどうしても態度に出てしまう方もいらっしゃいますが、一度は医師の説明に心穏やかに耳を傾けてみてください。それでも変わらず納得できない、癇に障る場合は速やかに転医してください。

2023/8/4

 

 


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