アトピー便り

アトピー便り37:ためしてガッテン

 5月15日NHK総合テレビでためしてガッテンが「しつこ~い湿疹かゆみまさかの犯人を大発見」というテーマで放送されました。所用のため直接テレビは見ておりませんでしたが、後から健康関連情報のメールマガジンでその内容を知りました。NHKホームページのためしてガッテンのところで過去の放送に詳細が載っていますので、放送を見逃した方は是非一度目を通していただければ大変役に立つと思います。
 その番組でも紹介されていましたが、かぶれの原因を探す検査がパッチテストです。ところが、診療の現場ではなかなか行なうようになりません。検査の三日間入浴を控えてもらわなければならないこと、判定日の二日目、三日目に受診してもらう必要があることから患者さんの了解を得られないことがしばしばです。かぶれの原因として最も多い金属アレルギーについては、汗で症状が悪くなりますので夏場に症状が目立ちます。ところがパッチテストを夏場に行なうことは先述のように難しく、冬場にパッチテストを行なうようにしていても汗をかかない冬場には症状が出ないことが多く、検査をしないでそのままになってしまいがちです。
 今回のためしてガッテンは診察時間中にはなかなか説明しきれない部分を詳しく紹介していただいており、皮膚科専門医、アレルギー専門医にとっても大変ありがたいものと思われますし、特にパッチテストを積極的に行なうための啓発にも一役買ってくれていると思います。これからもこのような内容のテレビ放送が続いてくれればと願っています。
 尚、日本皮膚アレルギー・接触皮膚炎学会のホームページで紹介されているパッチテストを受けられる医療機関は、研究のためのパッチテストの結果集計に協力した病院に限られており、当クリニックを含めて実際には他にも数多くの皮膚科で実施していますので、パッチテストをご希望の方は先ずはお近くの皮膚科専門医にお問い合わせください。

2013/5/23

アトピー便り36:日本アレルギー学会に参加して(続) アトピーと金属アレルギー

 日本アレルギー学会のポスター展示のところで一番興味深かったのは、内因性アトピーと金属アレルギーについての発表でした。血清IgE高値でダニなどのIgEも高い外因性アトピー(性皮膚炎)と血清IgE正常もしくは軽度上昇でダニなどのIgEが高くない内因性アトピー(性皮膚炎)については以前から4対1の割合で見られることが言われており、内因性アトピーでは金属アレルギーが高頻度に見られることが知られています。発表ではそれを裏付ける具体的な研究データが示されていました。外因性アトピーでのニッケルのパッチテスト陽性率は18%(コバルト12%)に対して、内因性アトピーでのニッケルのパッチテスト陽性率は41%(コバルト41%)と高いことが示され、汗に含まれるニッケルも内因性アトピーのほうが外因性アトピーよりも多く検出されていました。
 よく外来で臨床的にアトピー性皮膚炎と診断できる子どものお母さん方から「血液検査でアレルギーはなかったからアトピーではありません」と言われることがありますが、正しく言えば外因性アトピーではないということです。言い換えれば内因性アトピーの可能性が高く、金属アレルギーのパッチテストを行なうと陽性にでる可能性が高いものと思われます。
 この研究発表のコメントで最も納得したのは、内因性アトピーでは皮膚は正常なバリアを持っており、外因性アトピーのようにバリアの破綻からダニなどのいろいろな大きな抗原が皮膚の中に浸入してきてアレルギーにつながることはないが、金属などの非蛋白抗原は分子量が小さく正常なバリアを通過しやすいため金属アレルギーが起こるのではないかというところでした。
 成人の難治性のアトピー性皮膚炎で、血液検査でアレルギーは見られず、皮膚の状態も全体的には乾燥傾向が少ないケースにしばしば遭遇します。そのような場合には金属アレルギーを疑って積極的に検査を行なう必要があると実感しました。

2013/5/13

アトピー便り35:日本アレルギー学会に参加して

 この週末日本アレルギー学会春季臨床大会に出席してきました。アトピー性皮膚炎についての会に三つ出席しましたが、大変勉強になりました。どの会も主に皮膚科医と小児科医の出席のもと盛況でしたが、小児科の講師の先生が小児の食物アレルギーの関与するアトピー性皮膚炎に関していろいろなデータを示しながら、「皮疹を治すと食物アレルギーは治る(もちろん全例に当てはまるわけではない旨も補足はされていましたが)」と発表されていたのが特に印象に残りました。同じ先生の発表で、小児のアトピー性皮膚炎でも痒疹(硬いもりあがった皮疹)の治療には非常に強いステロイドの外用薬を1~2週間、症状のひどい場合には2か月連日外用させるとのことで皮膚科医以上の積極的な治療には学ぶところが多くありました。
 ステロイドの外用療法については、先述の内容以外にも乾燥肌、ならびに軽い湿しんの症状において皮疹を正しく見極めて、ステロイドをどのように使うか、症状がいったん良くなってからは一度ステロイドを止めて皮疹のでたところに治療を行なうリアクティブ療法ではなく、良くなってからも週に何回か皮疹のあったところに外用を続けることで良い状態を保つリアクティブ療法を、といった点がとても参考になりました。詳細については診療の現場で患者さんにはいろいろお話する機会もあるかと思います。おおむねそれなりに実践してきたつもりのことではありましたが、まだまだ不十分といったところで、これからの診療に役立てていこうと思っています。

2013/5/13

アトピー便り34:乳幼児のアトピー 大豆(ニッケル)アレルギーにご注意を

 最近授乳中のアトピーの子ども二人で大豆のアレルギーがたまたま続けざまに見つかりました。食物アレルギーの検査としてはプリックテストを行ない、数十分後に判定します。いずれもそのときの結果は卵白は陽性に出ていたのですが、大豆には陽性反応は出ていませんでした。そのため母親に対して卵の摂取に対しては注意をしていたのですが、治療を続けていても症状があまりよくならず、ふと先日行ったプリックテストの部位を診てみると大豆の検査のところに反応が残っていました。そこで、母親に大豆の制限をしてもらったところ症状は著明に改善しました。これまでも時々卵アレルギーが検査でひっかかりながら、卵の制限をしても症状があまり変わらない子どもを経験したことがあり、もしかするとこのようなケースを見逃していたのかもしれません。(もちろん検査で卵白陽性でも実際に卵を食べてみても症状の出ないこともありますが・・・)
 食物アレルギーの関与するアトピー性皮膚炎で原因となるのは圧倒的に卵が多く、プリックテストにせよ、血液検査にせよ、検査で調べるのは即時型反応で、今回のような遅れて起こる湿しんの反応はプリックテストのあとを注意深く見ていないと見過ごしてしまいます。今までにも卵についてはこのような遅れて出る反応を複数例経験しており、注意をしてきましたが、大豆で今回2例続いたことはとても意義深いことでした。
 大豆の遅れて出る反応というのは食物アレルギーの意味合いよりも金属アレルギーの要素が強く疑われます。大豆にはニッケルが多く含まれており、ニッケルが原因の金属アレルギーは遅れて起こります。プリックテストというのは皮膚を傷つけてから検査液をつけて調べますが、これはアトピーで皮膚を引っかいた状態で食べ物が皮膚にくっつくのと同じ状態です。
 卵アレルギーがありますと卵を食べた直後にしばしば口の周りがかゆくなりますので、そうした時にそこを引っかいてしまって、皮膚が荒れた状態でチョコレートやスナック菓子などの大豆を含む食品を食べる(よりも皮膚にくっつく)ことによってニッケルの金属アレルギーが引き起こされてきたのではないかと考えられます。
 ニッケルアレルギーはかぶれの原因として最も多いもののひとつで、大人では装飾品によって引き起こされることが多いとされています。子どもでも砂遊びなどで起こることがあり、砂遊びについては診察中によく確認します。今回の一連のケースから子どもの手の湿しんがなかなか治らない場合には、スナック菓子の袋に手を突っ込んで起こるニッケルによるかぶれもあるのではないかと思うようになりました。
 乳幼児の口周りの湿しんがなかなか治らない場合、砂遊びをしないのに手の湿しんがひどい場合にはニッケルアレルギーを調べてみる必要があるかと思われます。尚、ニッケルアレルギーを調べるパッチテストは検査をすることでアレルギーになることがありますので必要最低限に行なうことが大事です。

2013/4/12

アトピー便り33:お久しぶりです

 ホームページの更新も久しく行なっておりませんでしたが、間があけばあくほど更新しにくくなるものです。更新していた内容も実際は繰り返しが多く、斬新な情報を絶えずご提供してきたわけではありません。間があくと今度更新する時には素晴らしい内容のものを是非ともご紹介したいとハードルが高くなってしまい、ますますご無沙汰になってしまいました。理想と現実は異なりますので、これからは内容や繰り返しかどうかにこだわることなく、気楽にやっていこうと思っています。
 ふと考えてみると、この現状はアトピー患者さんの診察にもそっくりあてはまるのではないでしょうか。毎回お薬をもらうだけで良くなっているのかどうかも分からない状況が続くと、受診しても意味がないと診察から遠ざかってしまい、症状が少しずつ悪くなったときに前の診察から間があきすぎているとなかなか受診しにくくなるのではないでしょうか。
 同じ状況を医師サイドから見てみますと、初診の時や症状に変化があるときには詳しい説明をしますし、必要に応じて検査をすることもありますが、ひとたび症状が落ち着くと症状の確認程度で処方の繰り返しになっていることもめずらしくありません。ただ、この確認が大事で、何も問題がないこと、症状が落ち着いていることを確認しながら、ひとたび何か変化があればすぐに対応していきます。
 患者さんが先のようになってしまうのには医師の方にも問題があり、診察の時に主治医がきちんと診ているという安心感を患者さんに与えることができていないわけです。このことをしっかり肝に銘じてアトピー患者さんの診療にあたりたいと思っていますので、お久しぶりの患者さんもお気軽に受診していただければ幸いです。

2013/3/1


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