アトピー便り

アトピー便り120:念には念を

強い日差しのもと、日光、汗による皮膚のトラブルにご注意ください。衣服で露出部位を減らしたり、日焼け止めや帽子、日傘などを正しく使って日光に当たりすぎないようにしましょう。汗はアトピー性皮膚炎の悪化因子の一つに挙げられますし、金属アレルギーの症状を誘発しますが、汗自体は良い働きもありますので、シャワーを浴びたり、おしぼりで汗を拭うなどして汗が長く皮膚に残らないように気をつけましょう。この時期明らかな乾燥肌が見られない子どもさんがスキンケアとして保湿剤を使いすぎますとあせもが出やすくなりますので注意しましょう。
イネ科の花粉症の方は症状が目立つ時期ですので、特にフルーツなどを食べてのどに違和感を感じる方は一度検査をして調べてみてください。

少し前になりますが、ある患者さんが手のひらだけに皮疹がみられて受診されました。鑑別診断として汗疱(かんぽう)、接触皮膚炎(かぶれ)などを一通り説明しましたが、患者さん自身は梅毒を心配していました。感染(の可能性のある)機会から数か月経過しており、日数的にはあり得ましたが、ばら疹などの他の2期疹が見られなかったことなどとあわせてその時の皮膚症状からその場で否定しました。ところが、陰部にみられる1期疹についてはきちんと問診していなかったのであったかどうかは分かりません。その後再診がなかったので梅毒ではなかったのだろうと思いつつも、昨今の梅毒患者数の増加を鑑みてひょっとしてと思ったりもしました。問診については先入観や思い込みにとらわれずに念には念を入れて丁寧に聞く必要がありますし(実際にはきちんとできているとは言えませんが)、良くならなかったり、何か問題があった時にきちんと再診していただけるように十分に説明をしておく必要があると再認識させられました。

(蛇足)初診患者さんから予約のお問い合わせを受けることが多いのですが、当クリニックは(初診患者さんの)予約診療はしていません。一方で定期的に通院され(てい)る再診患者さんを対象に土曜日以外は予約を受け付けておりますが、実際に予約される方は今のところいらっしゃいません。あまり周知されていないこともありますが、定期的に通院していただいている患者さんは予約して時間を調整しながら慌ただしく来られるよりも空き時間に自由に受診できるほうが良いのかもしれません。予約のお問い合わせの際に多くの方に普段の外来の混雑具合を聞かれますが、天候や(季節性、感染性の)疾患のはやり具合、他の皮膚科の混み具合の影響を受けて外来の混雑度は変わってきます(概ねのんびりしています)。極端に暑い日、寒い日、雨風の強い日には初診、再診いずれの患者さんも少なくなりがちですが、アウトドアシーズンになると皮膚のトラブルも多くなり初診の患者さんが時間帯(土曜日やお休み明け、学校・仕事終わりの時間など)によっては集中しがちです。近隣の皮膚科が混んでいる時(中には二時間半待ちもあり)には診療を比較的遅くまでしているため終了時間間際に駆け込みで来られたり、土曜日にはいつもの皮膚科で予約をとれずに仕方なくこちらに来られる患者さんも少なからずいらっしゃいます。このような状況で他医から来られる患者さんにつきましては十分に診察時間がとれませんし、その後短期間で再診される(続けて通院される)こともほとんどありませんので、定期的に通院していただいている患者さんとは異なる対応になってしまいますことをお含みおきください。また同じ症状で当クリニック以外の皮膚科を受診されている(のが分かる)場合には基本的には他医がメインであることが多いのでそちらで治療を継続されることをお勧めしています。尚、それでも不定期に当クリニックを再診いただく場合もありますが、説明や治療(方針)が異なる可能性がありますので患者さん(親御さん)からはっきりとしたご要望・意思表示(セカンドオピニオン、主治医依頼など)が無ければこちらから積極的に対応(説明)させていただくことはありませんのでご了承ください。

2024/7/11

 

アトピー便り119:じんましん?

暑くなるのにつれて日光、汗による皮膚のトラブルが目立つようになりました。アトピー性皮膚炎、金属アレルギー(かぶれ)は汗が悪化因子になりますのでご注意ください。

患者さんのかゆみの訴えが非常に強いものの、診察時には皮膚の変化は乏しくて、掻き痕がわずかに見られるだけのケースがしばしば見られます。このような場合には、掻き痕の一部は湿しんになっていることが多いので通常はステロイド外用剤を処方して経過を観ます。患者さんの多くはお薬を塗ると治るので付け薬を続けて処方して欲しいということで再診されますが、掻き痕は相変わらずで実際はあまり良くなっていません。このようなケースで最も疑われる疾患はじんましんです。典型的なじんましんであれば受診時に皮疹が見られなくても、皮疹がみられた時にスマホに皮疹の写真を撮って持ってきていただければ比較的簡単に診断できます。一方で、軽症のじんましんでは症状が目立たないために患者さんの多くは皮疹そのものを自覚されていません。そのために外用剤だけ塗っていて症状がくすぶっているケースが目立ちます。塗り薬を塗った後に症状がなくなりますので患者さんは塗り薬が効いていると思いがちです。実際のところはじんましんは塗り薬と関係なく、皮疹自体は時間が経てば一旦消えますが、再発を繰り返します。適切な治療はステロイド外用剤ではなく、抗ヒスタミン薬の内服になります。患者さんにこれらを説明しても受け入れられない(付け薬だけで良いと言われる)こともよくありますが、通常は診断学的治療として抗ヒスタミン薬の内服を試します。じんましんの治療は症状にあわせて内服薬の継続が必要で、長期にわたって内服を続けるケースも珍しくありません。そのため「飲み薬は効かなかった」と言われて再診される患者さんの中には、お薬は効いていながら飲むのを止めて再発している方が混じっていますので注意が必要です。

(蛇足)たまたま最近遭遇したケースですが、今まで内科でじんましんの薬をもらっていて、そこが閉院するので引き続き薬を処方して欲しいとのことでした。前医と同じ抗ヒスタミン内服薬を処方しようとしましたが、一緒に外用剤(クロタミトン含有)を処方して欲しいと言われました。皮膚科的には疾患としても、現在の皮疹の状況からしても不要でしたので処方をお断りした上で、どうしても同じ外用剤が欲しいなら薬局で購入可能な旨をお伝えしたところ、即座にキャンセルして帰られました。ひっかき傷(湿しん)が確認できればステロイド外用剤を処方しますが、じんましんの症状だけで外用剤を処方することは通常はありません。

2024/6/2

 

 

アトピー便り118:問診票について

汗をかく機会が多くなりアトピー性皮膚炎の症状が悪化する方がさらに目立つようになりました。気温の上昇、アウトドアの活動が増えるに伴って、アトピー、皮膚のトラブルは増えてきます。早めの治療を心がけてください。

先だって他院で単純ヘルペスの治療を受けていた患者さんが混み合っていた(問診票に記載あり)ということでこちらに来られました。当クリニックではこのようなケースはよくありますが、先ず前医でどのような治療・説明を受けていたか確認します。(症状も含めて)きちんと確認できればご要望通りに機械的に時間を費やさずに前医に準じた処方をします。一方で、治療していても良くならない、悪化した、あるいは説明を聞きたい、セカンドオピニオンを求めたいといった患者さんも中にはいらっしゃいます。特に初診時はこちらのコミュニケーション能力が低いこともあって意思の疎通が十分にとれない場合も多々ありますので、患者さんのご要望に少しでもお応えすることができるように問診票を活用しています。
花粉ー食物アレルギー症候群の診断に至ったある患者さんは食事後にじんましんがでたということでその日のうちに検査希望で受診されました。過去の食物アレルギーを疑わせるエピソードを診察時に直接お伺いしましたし、問診票で花粉症と治療歴がわかりましたので、真っ先に花粉ー食物アレルギー症候群の可能性を考えて検査をしました。すぎ、ヒノキの他、はんのき、リンゴ、セロリ、もも、豆乳アレルギーを示すGly m4などが陽性でした。当日の食事で検査が陽性だったものは確認できませんでしたので、今後もいろいろ注意が必要な旨お話しました。
このように問診票は診療、診断の一助になりますので、できるだけご記入していただければと思います。尚、診療終了時間間際に受診される方につきましては問診票なしで診察していますのでお含みおきください。午前の診療終了時間は12時になっていますので、特に土曜日に受診される患者さんはご注意ください。

(蛇足)ゴールデンウィークの直前のお話ですが、じんましんで他医を前日に受診した(処方あり)患者さんが当クリニックを受診されました。問診票によればセカンドオピニオン目的で受診されていました。前医ではアレルギーとは言われておらず、アレルギーを心配して受診されていましたので、食事内容、食事とじんましんが出る時間的な関係について詳細(問診票に記載なし)を伺おうとしました。その際何度か聞き直したところ、「さっきも同じことを言ったのに何度も聞き間違えてやる気が無いならもういい」と怒ってそのままキャンセルして帰られました。このような行き違いも問診票に直接詳細を記載していただいていれば防げたかもしれません。そのやりとりの中でも結局アレルギーを疑わせる的確な情報は何も得られなかったので検査にも至っていませんし、おそらくアレルギーではなかったのだろう(ひょっとすると問診に終始して検査をしようとする素振りもなかったので前医と同じような状況で切れたのではないか)と思っています。

2024/5/5

アトピー便り117:外来で困った話

アトピー性皮膚炎の患者さんは比較的症状の落ち着いている方が多いようですが、スギ花粉による皮膚のトラブルは依然として見受けられますのでご注意ください。尚、スギ花粉症を自覚されていて、リンゴやモモを食べたときにのどがイガイガする方はハンノキによる花粉症の可能性がありますので、一度アレルギー専門医にご相談されることをお勧めします。

ドリフターズのもしもシリーズではありませんが、最近遭遇した患者さんについてです。全くの初診でじんましんの飲み薬を出して欲しいとのことで来院されましたが、診察時に皮疹は出ておらず、出ているときの写真もありません。こちらで皮疹を確認できませんでしたので、当初は以前かかっていた皮膚科に行くように伝えて処方を断りました。それでも納得されないので、2週間分を処方して、間で皮疹が確認できれば1か月分の処方をする旨伝えたところ、切れ気味に前の皮膚科では薬を一月分もらっていたので処方してくれと言って聞く耳を持たず後に引きません。以前にお薬をもらっていた皮膚科は引っ越して遠くになってしまい(こちらもそんなに近くはないのに・・・)、近くの皮膚科は予約がとれないとのことでした(人気の皮膚科としても何日にも渡って予約がとれないってあるのだろうか?!)。お薬手帳も持ってきておらず、詳細は不明でしたが、(同じ効能の薬が市販薬にもあるような薬で)いろいろな意味で危険性はありませんでしたので一応リクエストのあった内服薬を一月分処方しました。処方は今回限りで、次回以降は皮疹の確認をしない限りこちらでは出せないので、以前かかっていた皮膚科か、近くの皮膚科を受診して改めて処方してもらうように念を押しました。理不尽の極みといった感じで、本当に後味が悪く困惑しました。

2024/4/6

アトピー便り116:受診の間はどうしてる?

先日日本テレビ系の番組[カズレーザーと学ぶ。]で「2024年アレルギー最新事情」が放送されていました。2週にまたいでのアレルギー特集でしたが、個人的にもいくつか参考になることがありました。出演者のアレルギー検査結果のプレゼンテーション、花粉症のほか、アトピー性皮膚炎の最新治療についても触れられていました。お見逃しの方はもう少しの間だけTVerで見れますので是非ご覧ください。

アトピー患者さんの皮疹にステロイド外用剤をきちんと塗って症状が良くなってきますと保湿剤ならびに非ステロイドのプロトピックⓇ軟膏に少しずつ置き換えて治療していくことが多いのですが、プロトピック軟膏は灼熱感などの刺激症状がしばしば見られます。大抵の方は塗り続けることで刺激症状は無くなりますので、処方する際にもこれらの副作用について説明しています。実際に使用して副作用がみられた場合、患者さんの多くはすぐに再診される方と勝手に薬を止めてしばらく経ってから来院される方とに分かれます。すぐに再診されるケースでは、改めて説明して引き続き使用してもらいますが、どうしても我慢できない時は他の非ステロイドのコレクチムⓇ軟膏やモイゼルトⓇ軟膏に変更します。非ステロイドの外用剤をきちんと塗っても症状が良くならない場合には一度ステロイド外用剤に戻します。一方、時間をあけて受診されるケースでは、その間に他の皮膚科を受診されていたのかそのままほったらかしにされていたのか、患者さんが診察時にお話されない限りはどうなっていたのかはわかりません。いずれにせよかなり時間が経って悪化してから来られることがほとんどで、受診時にはプロトピックを処方する前のステロイドの治療に戻るしかありません。受診間隔が空きすぎているため前回の診察時の状況がはっきりしないことが多く、こちらもいろいろな意味でどうしても熱量が下がっていますので機械的な診療になりがちです。
症状の改善が見られない(治療が十分でない)長期加療中のアトピー患者さんの通常の再診時にも、受診間隔が長い場合や不定期な場合には同じこと(先述の下線部)がいつも心に引っかかります。軽症のアトピー患者さんであれば治療が不十分でも悪化し続けることはあまりありませんが、中等症以上の場合症状は悪化し続けます。症状が良くなることもなく、数か月以上の受診間隔で不定期に受診される患者さんが数多くいらっしゃいますが、いつもどちらなのかなと気になっています。その都度確認したいのは山々ですが、以前にこちらのコミュニケーション能力が低いために詰問するような感じになってしまったことがありますので、最近はどうしても躊躇してしまいます。中には(これも不適切な治療ではあるのですが、)外用剤がある間は調子が良くて、お薬を切らしてから時間が経って症状がかなり悪くなってから毎回受診される方もいらっしゃるかもしれません。受診される間の途中経過がきちんと把握できれば適切な治療につながり、症状が良くなる(症状をコントロールできる)可能性が高まりますので、診察時には受診の間のことをできるだけお話いただければと思います。
尚、アトピー性皮膚炎では特に、当クリニック以外での受診歴がありながら、お薬手帳を提出され(たがら)ない患者さんがいらっしゃいますが、多くの場合こちら以外の皮膚科をメインで治療されているかと思います。そのような状況では「船頭多くして船山に上る」にならないように、症状のコントロールが不十分でもこちらからはあえて詳しい説明をすることはありません。できればメインの皮膚科だけで治療を続けられることをお勧めします。つい先だっても久しぶりの再診で来られた患者さんが顔の皮疹の薬だけ希望されました。一年くらい前までは数か月ごとに受診されていましたが、外用が足りずコントロール不十分で全身に症状が見られていました。本来であれば全身の皮疹を観察して、皮疹の状態を定期的に診ながら治療を続けなければなりません。患者さんにも直接説明しましたが、結局顔以外の皮疹は診察しませんでした。元々が他の皮膚科にかかっていたこともありますので、最近の治療歴を確認することもなく今回は患者さんのご要望通り顔に塗る外用剤のみを処方しました。また、一方でこちらの薬であれ、メインの皮膚科の薬であれ、治療経過、診察の有無に関係なく大量の処方をご所望される方が時々いらっしゃいますが、治療経過に対して責任を持って対応できかねますので控えさせていただいています。お含みおきください。万一こちらをメインの皮膚科にしていただきながらきちんと説明を受けていないと感じられる患者さんがいらっしゃいましたらご遠慮なくお申し出ください。その折は心よりお詫び申し上げます。ご不明な点、ご心配な点を具体的にお話いただければその都度説明させていただきます。

 

2024/3/3


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