アトピー便り

アトピー便り91:2021秋

寒くなるのにつれてアトピーで受診される方が増えてきました。寒暖差に伴い、日中に汗をかいて余計に症状がひどくなる方も目立ちます。早めの治療、スキンケアを心がけてください。初診で症状の目立つ方や再診の方でも症状の悪化時、いろいろ心配なことをお話されたい、疑問に思うことについて納得いくまで説明を聞かれたい時に、土曜日ならびに診察終了時間間際に受診いただいた場合には十分な時間をご用意できないことがあります。その際は曜日、時間を変えて間近に再診いただければと思います。
タクロリムス(プロトピック®)軟膏を使用していて、その刺激症状にお困りの方も多いかと思います。特に小児ではタクロリムス軟膏を継続できない方も珍しくありません。最近非ステロイドのアトピーの治療薬としてコレクチム®軟膏が使用できるようになりましたので、このような方は一度お試しいただくと良いかもしれません。
アトピーで症状の目立つ(中等症以上の)方のために非常に効果の強い注射薬(デュピクセント®)や内服薬(オルミエント®、リンヴォック®)が最近立て続けに登場しています。その効果は重症の方、特にかゆみの強い方に対しては劇的であり、アトピー治療の新時代到来などとも言われていますが、ステロイド外用剤の治療は継続する必要があり、既存の治療にとってかわるものではありません。非常に高価であること、使用に際していろいろ注意すべきことがありますので、それらを使用する場合は当クリニックでは基幹病院に紹介させていただいております。成人のアトピーで、かゆみの強い方、きちんと治療をしても症状が良くならずにお困りの方、皮膚萎縮などのステロイドの副作用が目立つ方、関心がおありの方は診察時にご相談ください。

2021/10/26

アトピー便り90:2021春

あっという間に前回の更新から半年が過ぎてしまいましたが、依然コロナ禍で緊張感が続く毎日が続いています。季節の変わり目でアトピーの症状が悪化する患者さんも少し目立ってきました。きちんと定期的に塗り薬をつけている方はあまり変わりありませんが、症状がいったん良くなって塗り薬がなくなってからは保湿剤だけで様子を見ていた方で多く見受けられます。症状のあまり強くないアトピー患者さんは肌がざらざらした乾燥肌程度と思われがちですが、実際には湿しんのことが多く、ステロイド外用剤、もしくはタクロリムス外用剤を正しく塗らなければなりません。この状態で保湿剤(多くはヒルドイド)のみの外用が続きますと、少しずつ症状が悪化してしまいます。一方で、魚鱗癬のあるアトピー患者さんではステロイド剤を外用しても症状があまり変わらないことがありますので注意が必要です。
ホームページをご覧になってから来院される患者さんが多いのか、新型コロナウイルスのPCR検査で保険診療と自費診療の違いが広く認識されるようになったせいか、アレルギー検査をする、しないで押し問答になる機会はほとんどなくなりました。引き続きアレルギー検査については必要な検査のみ保険で行ない、それ以外は自費で行なっていますが、季節柄スギ、ヒノキのアレルギーを確認する事例が多くなっています。他医で納豆アレルギーの診断を受けたサーファーの方がセカンドオピニオンで受診された以外には特別なアレルギーの事例は最近診察する機会はありませんでした。

2021/4/6

アトピー便り89:意外とある?!pork-cat syndrome

先だって症状の強いアトピー性皮膚炎の幼児で血液検査を行なったところ、IgE(RIST)、TARCが異常高値であるにもかかわらず、検査した4項目( ハウスダスト、ダニ、ピティロスポリウム、黄色ブドウ球菌)のRASTの数値がそれほど高くなかったため、RISTの異常高値の原因となっているアレルゲンを検索すべくView39を調べました。その結果、ミルクは強陽性ではあったものの、卵、小麦、大豆、甲殻類など主な食物アレルギーに関するものは正常値でした。ところが、豚肉、牛肉、ネコ、イヌで強陽性であったことからpork-cat syndrome(の予備軍)が疑われました。実際に犬を飼っていて、隣家には猫がいることも確認できましたが、これまでは(加熱した)豚肉、牛肉に関してはアレルギーの症状が出たことはありませんでした。尚、乳製品によるアレルギー症状も見られていません。今後のフォローを考えて、再度RAST を測定しましたが、イヌ(クラス6)、ネコ(クラス4)、豚肉(クラス4)、牛肉(クラス3)でした。
当初はステロイドの外用でなかなか良くならなかったアトピー性皮膚炎の症状も犬を飼わなくなってから軽快しています。
pork-cat syndromeは発症年齢が10歳以降のことが多いのですが、最近6歳の報告例が見られたり、今回の予備軍のケース(たまたま検査から判明)からもわかるように、(不定期に訪れる犬、猫のペットブームのさなか)アトピー性皮膚炎としてのみ治療されていて、意外と気づかれずにいることが少なくないのかもしれません。

2020/10/19

アトピー便り88:ナッツアレルギーは難しい

この数か月でナッツアレルギーの患者さんを二人診る機会がありましたが、今後の診療に活かすべき示唆に富んでいました。
1例目は、ピーナッツを食べた後に蕁麻疹が出ることから検査をしたところピーナッツのIgEが疑陽性(クラス1)で、一緒に調べたリンゴのIgEも疑陽性(クラス1)でしたので、元々花粉症がみられていたこととあわせて花粉-食物アレルギー症候群と診断しました。ピーナッツを控える程度で、その他のナッツアレルギーに関して積極的な検査を行なわずに経過を観ていました。これからいろいろなナッツを食べる機会があれば、その結果を元に必要に応じて検査を行ない整理していけばいいかなと考えていました。ところがその後カシューナッツの入ったカレーを食べて強いアレルギー症状が見られ、基幹病院を受診してカシューナッツのアレルギーが確認されてエピペンを処方されていました。本来ピーナッツのアレルギーコンポーネントAra h 2を調べたり、その他のナッツについても調べておくべきでした。
2例目は、クルミの載ったケーキを食べた直後にじんましん、呼吸困難が現れたとのことで、クルミアレルギーの血液検査を直ちに行ないました。クルミのIgEは疑陽性(クラス1)でしたが、クルミのアレルギーコンポーネントJug r 1が陽性(クラス2)で診断を確定しました。このように最近はピーナッツ、カシューナッツ(Ana o 3)、クルミに関しては血液検査でアレルギーコンポーネントを調べて高い精度でアレルギーを検出することができるようになりました。
今回のナッツアレルギー2症例について、1例目からは状況によってはナッツアレルギーの交差反応を積極的に検査しておくべきということ、2例目からは患者さんからの情報が如何に大事かということ、問診の重要性を再認識しました。

2020/8/4

アトピー便り87:アレルギー検査/すべきかどうか

コロナ禍におけるPCR検査拡充の賛否についてはメディアを通して今なお侃々諤々と意見が飛び交っています。コロナ患者との濃厚接触者や症状の見られる人など、検査が必要な人に対して積極的に行なうべきというのが専門医の主な意見ですが、諸外国を引き合いに出してやみくもに検査を行なうべきという意見も依然根強くあります。
アレルギー診療における血液検査に関しても以前から似たようなことがあります。専門医はアレルギーの疑いのある患者さんに必要な血液検査しか行なわないため、とにかく検査をして原因を知りたいという患者さんとの間には埋めがたいギャップが存在します。実際にアレルギーが心配になって受診された患者さんと診察中に検査をするしないで押し問答になることもあります。
ひとつ誤解しないでいただきたいのは、保険診療ではやみくもにアレルギー検査を行なえないというだけで、保険診療でなければ(全額自己負担であれば)検診と同じで、いつでも調べたいだけアレルギー検査を行なえるということです[もちろん費用はかなり高くなりますが]。
つい先だってアレルギー性鼻炎の症状のみられる(自己申告で、診察時には確認できず)患者さんに季節柄イネ科のアレルギー検査を行なったところ陰性でした。患者さん自身は「毎年なるから」とイネ科のアレルギーを確信されていましたが、イネ科のアレルギーはないものと判断しました。PCR検査と同様にアレルギー検査の感度は100%ではありませんので、フルーツなどを食べてアレルギー症状が見られた場合や鼻炎の症状を直接確認できた時には再度検査が必要と考えています。
また、同じくらいの時期にネコに触れると皮膚が赤くなるということ(自己申告で、診察時には確認できず)でネコアレルギーを心配した患者さんが受診されました。時間が経ってから症状が出ること、結膜炎、鼻炎、ぜんそくなどの症状が見られていないことから当初はアレルギーの可能性は低いものと考えましたが、ネコに触れた時にしか症状がでないということでネコのアレルギー検査をしたところ陽性でした。尚、検査結果を説明する時に改めてお話を聞いたところ、ネコに触れた直後にかゆくなり、鼻炎、結膜炎の症状も出るとのことでした。
後者のように正しく情報を伝えていただいてアレルギーが確認できることもありますので、診察時に症状を直接確認できていなくても今回の2例のように検査を行なうことはあります。ただし、患者さんの自己申告による情報にはバイアスがかかり、前者のように実際に検査を行なっても陽性にならないことが多いので、(保険診療で)検査をすべきかどうかいつも頭を悩ませています。

2020/6/4


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