アトピー便り

アトピー便り86:転医される前に

アトピー性皮膚炎の患者さんで症状が良くならないので病院を転々とされる方がいらっしゃいます。何とか治したいというお気持ちはよくわかりますが、受診のされ方によっては却ってマイナスになることもあります。「後医は名医」という言葉がありますが、後から診察する医者の方がいろいろ情報が多くなり、適切な診断、治療を行なうことができるというものです。ところが、転医される際初診時にそれまでの治療経過や症状の推移がきちんと伝わりませんと誤診につながり、症状の改善は期待できません。転医の際に(過去の治療薬や検査結果などの情報もなく)皮疹を診てもらうだけなら元の医師の再診を受けられる方が効果的です。単に「前の病院で良くならなかったので来ました」とか、「治療しても良くならなかったので検査をしてください」と言って来院される患者さんが少なからずいらっしゃいますが、この点には是非ともご留意ください。
一方で、皮膚科医の立場からアトピー性皮膚炎の患者さんすべての方に初診時に同じように詳しく説明をすることは現実的にはなかなかできません。先ずは患者さんの現状に応じた説明・治療を行ない、再診時に症状を確認して治療を続けたり、変えたりしながら、必要に応じて説明を付け加えていくことになります。重症の患者さんには初診時に検査をしたり、細かく外用剤の塗り方を説明したりしますが、軽症の患者さんには再診時に症状の改善が見られない場合に外用剤の塗り方など詳しく説明していきます。このようにアトピー性皮膚炎の診療では患者さんによって対応が異なり、再診を重ねて長期的に診ていくのが一般的ですので、初診時、再診時を問わず、その時点で気になることをいくつか整理されて優先順位の高いものから診察時にお問い合わせいただくことをお勧めします。

2020/1/30

 

アトピー便り85:大人の卵アレルギー?!

卵アレルギーといえば、小児の病気、重症の場合に限り小児期から継続することはあっても大人で起こることはないと思っていました。ところが、先だって出席した日本皮膚免疫アレルギー学会のシンポジウムで、セキセイインコなどの鳥類を飼っている間に羽根や糞に気道感作されて、卵黄摂取後にアナフィラキシーを起こすbird-egg syndromeという病気の存在を知って驚きました。
長年セキセイインコを飼っている状況で、通常の卵アレルギーのアレルゲンである卵白ではなく、卵黄が原因で起こること、セキセイインコを飼わないで過ごすと治る可能性があるとのことでした。実際の症例では鶏肉アレルギーも見られ、セキセイインコが亡くなってから症状がみられなくなったことが紹介されていました。
卵を食べると調子が悪くなるとのことで卵アレルギーを心配して受診される患者さんが時々にいらっしゃいますが、再現性、即時性がみられないことからその可能性がない旨をその都度説明をしてきました。しかも大人で発症する卵アレルギーはないことを前提にお話していました。これからの診療では大人の卵アレルギーもありうるという前提で鳥の飼育歴については最低限チェックしなければならないと思いました。

2019/12/3

 

 

 

アトピー便り84:アトピー外来便り2019.11.

夏期の新患、初診患者さんの多い時期からしばらく時間が経ちましたので、外来は定期的に受診される再診患者さんが多くを占めています。最近特に急に寒くなってきましたので、空気の乾燥のためにご年配の方の乾皮症やアトピーの患者さんが目立つようになってきました。早めのスキンケア、治療を心がけてください。
食物アレルギーは、完全除去から必要最低限の除去へ、具体的には皮膚を介して食物アレルギーが起こることを予防するために乾燥肌やアトピー性皮膚炎などの皮膚症状を改善させながら食べれるものは食べていくという方針で対処されるように変わってきています。汗はアトピー性皮膚炎を悪化させるので汗をかかないようにかつては指導されていましたが、汗のうっ滞はかゆみの原因になりますが、汗自体は保湿効果が高いので、汗はしっかりとかいて、そのあと汗が残らないようにすぐにケアをするように指導されるようになりました。
皮膚の乾燥だけは相変わらずアトピー性皮膚炎の悪化因子であり、乳児のアトピー性皮膚炎の発症因子でもありますので、重ねて早期のスキンケア、早めの治療の重要性を強調しておきます。

2019/11/14

 

アトピー便り83:夏の花粉症と小麦のアレルギー

以前にもお話したことがありますが、イネ科のアレルギーがある患者さんで、食物の小麦を食べた時に花粉症の症状が強く現れるケースを診察させていただく機会がありました。レーズンパンを早朝に食べて数時間後に顔が赤く腫れたということで受診されました。当初は小麦依存性運動誘発アナフィラキシーを疑い、血液検査を行なったところ、RAST ω-5グリアジンがクラス0で、小麦依存性運動誘発アナフィラキシーの可能性は低いものと考えましたが、同時に検査したRAST 小麦(花粉)がクラス6、小麦(食物)がクラス3、グルテンがクラス3でした。これらの血液検査の結果より、イネ科(場合によっては小麦)の花粉症の患者さんが小麦を摂取して、その直後にこれらの花粉に触れる機会があって、花粉症の症状が強く出たものと考えました。実際に朝食後から症状が出るまでの間にイネ科の植物の近くにいたことも確認できました。イネ科の花粉症は時期的に終わりに近づいていますが、埋もれているこのようなケースを少しでも明らかにしていくことができればいいなと思いました。

2019/9/9

アトピー便り82:リンゴのアレルギーから

先だっていろいろなフルーツを食べると毎回調子が悪くなるということで女性の方が検査を希望されて受診されました。受診時もリンゴを食べた直後でぜん息の様な症状が見られおり、リンゴは当然検査しましたが、その他にもいろいろなフルーツのアレルギー症状や花粉症の症状も見られるとのことから、花粉食物アレルギー症候群を疑ってひと通り調べました。結果、豆乳アレルギーが見つかりました。豆乳を口にすることがないので、今まで症状が見られたことはありませんでしたが、豆乳アレルギーでは重篤な症状が見られることが比較的多く、注意が必要であることを説明しました。
通常のアレルギー診療では問診からアレルギーが疑われた場合にアレルギー検査を行ないますが、患者さんからの情報、自己申告に基づきますのですべてのケースでアレルギーが確認されるわけではありません。
今回の患者さんも、当初はアレルギー症状もはっきりせず、漠然とアレルギーが心配で検査をして欲しいということでしたので保険外での検査の説明をしていたところ、ぜん息の様な症状が見られたうえに話を改めて聞いてみますとアレルギーの可能性を疑わせる情報がいくつもありましたので保険診療でのアレルギー検査を行ない、花粉食物アレルギー症候群(豆乳アレルギー)の診断に至りました。
アレルギーの診断には問診(患者さんからの情報)、ならびに実際の症状の確認が大切であることを再認識しました。

2019/7/26

 


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