アトピー便り

アトピー便り116:受診の間はどうしてる?

先日日本テレビ系の番組[カズレーザーと学ぶ。]で「2024年アレルギー最新事情」が放送されていました。2週にまたいでのアレルギー特集でしたが、個人的にもいくつか参考になることがありました。出演者のアレルギー検査結果のプレゼンテーション、花粉症のほか、アトピー性皮膚炎の最新治療についても触れられていました。お見逃しの方はもう少しの間だけTVerで見れますので是非ご覧ください。

アトピー患者さんの皮疹にステロイド外用剤をきちんと塗って症状が良くなってきますと保湿剤ならびに非ステロイドのプロトピックⓇ軟膏に少しずつ置き換えて治療していくことが多いのですが、プロトピック軟膏は灼熱感などの刺激症状がしばしば見られます。大抵の方は塗り続けることで刺激症状は無くなりますので、処方する際にもこれらの副作用について説明しています。実際に使用して副作用がみられた場合、患者さんの多くはすぐに再診される方と勝手に薬を止めてしばらく経ってから来院される方とに分かれます。すぐに再診されるケースでは、改めて説明して引き続き使用してもらいますが、どうしても我慢できない時は他の非ステロイドのコレクチムⓇ軟膏やモイゼルトⓇ軟膏に変更します。非ステロイドの外用剤をきちんと塗っても症状が良くならない場合には一度ステロイド外用剤に戻します。一方、時間をあけて受診されるケースでは、その間に他の皮膚科を受診されていたのかそのままほったらかしにされていたのか、患者さんが診察時にお話されない限りはどうなっていたのかはわかりません。いずれにせよかなり時間が経って悪化してから来られることがほとんどで、受診時にはプロトピックを処方する前のステロイドの治療に戻るしかありません。受診間隔が空きすぎているため前回の診察時の状況がはっきりしないことが多く、こちらもいろいろな意味でどうしても熱量が下がっていますので機械的な診療になりがちです。
症状の改善が見られない(治療が十分でない)長期加療中のアトピー患者さんの通常の再診時にも、受診間隔が長い場合や不定期な場合には同じこと(先述の下線部)がいつも心に引っかかります。軽症のアトピー患者さんであれば治療が不十分でも悪化し続けることはあまりありませんが、中等症以上の場合症状は悪化し続けます。症状が良くなることもなく、数か月以上の受診間隔で不定期に受診される患者さんが数多くいらっしゃいますが、いつもどちらなのかなと気になっています。その都度確認したいのは山々ですが、以前にこちらのコミュニケーション能力が低いために詰問するような感じになってしまったことがありますので、最近はどうしても躊躇してしまいます。中には(これも不適切な治療ではあるのですが、)外用剤がある間は調子が良くて、お薬を切らしてから時間が経って症状がかなり悪くなってから毎回受診される方もいらっしゃるかもしれません。受診される間の途中経過がきちんと把握できれば適切な治療につながり、症状が良くなる(症状をコントロールできる)可能性が高まりますので、診察時には受診の間のことをできるだけお話いただければと思います。
尚、アトピー性皮膚炎では特に、当クリニック以外での受診歴がありながら、お薬手帳を提出され(たがら)ない患者さんがいらっしゃいますが、多くの場合こちら以外の皮膚科をメインで治療されているかと思います。そのような状況では「船頭多くして船山に上る」にならないように、症状のコントロールが不十分でもこちらからはあえて詳しい説明をすることはありません。できればメインの皮膚科だけで治療を続けられることをお勧めします。つい先だっても久しぶりの再診で来られた患者さんが顔の皮疹の薬だけ希望されました。一年くらい前までは数か月ごとに受診されていましたが、外用が足りずコントロール不十分で全身に症状が見られていました。本来であれば全身の皮疹を観察して、皮疹の状態を定期的に診ながら治療を続けなければなりません。患者さんにも直接説明しましたが、結局顔以外の皮疹は診察しませんでした。元々が他の皮膚科にかかっていたこともありますので、最近の治療歴を確認することもなく今回は患者さんのご要望通り顔に塗る外用剤のみを処方しました。また、一方でこちらの薬であれ、メインの皮膚科の薬であれ、治療経過、診察の有無に関係なく大量の処方をご所望される方が時々いらっしゃいますが、治療経過に対して責任を持って対応できかねますので控えさせていただいています。お含みおきください。万一こちらをメインの皮膚科にしていただきながらきちんと説明を受けていないと感じられる患者さんがいらっしゃいましたらご遠慮なくお申し出ください。その折は心よりお詫び申し上げます。ご不明な点、ご心配な点を具体的にお話いただければその都度説明させていただきます。

 

2024/3/3

アトピー便り115:アレルギー診療は問診から

暖冬と最近のインフルエンザ、新型コロナの感染流行のためか、アトピー性皮膚炎の悪化で受診される患者さんはこの時期としては比較的少ない感じがしています。皮膚のトラブルとして寒暖差が激しい時期はしもやけが出やすくなりますし、スギ花粉の飛散に伴い顔面に皮膚症状が見られることもあります。アトピー患者さん、ご年配の方の乾皮症における保湿のスキンケア、早めの治療開始とともにご留意ください。

普段は患者さんの自己申告(問診)に基づいて検査を行なってアレルギーの有無を確認しています。ある時、件のように患者さんの自己申告に基づきナッツアレルギーの検査、特にピーナッツ、カシューナッツのアレルギーコンポーネントの検査を行ないました。ところが検査はすべて陰性でした。患者さんのお話を十分に整理しないで鵜呑みにしたためでした。じんましんや呼吸困難などの明らかなアレルギー症状は確認できておらず、患者さんの食べた後に胃の調子が悪くなるという訴えだけで不用意に検査をしてしまいました。下痢症状も見られておらず、不耐症、消化不良の可能性も考える必要がありました。また直近では、たこ焼きを食べた直後に自転車に乗ってアナフィラキシー症状(救急病院受診)を起こした患者さんが来院されました。患者さんから適切な情報をいただいて、血液検査で小麦依存性運動誘発アナフィラキシーの診断確定に至りました。これらのケースからも問診の大切さを改めて痛感させられました。患者さんからの情報がアレルギーの正しい診断への手がかりとなります。診察時には些細なことでも構いませんのでお気づきのこと、気になることはすべてお話いただければと思います。思いつきでも構いませんので、ご遠慮なくご相談くださいアレルギー専門医として患者さんからの情報を整理して、必要な検査へつなげていきます。尚、お話をいろいろ伺った上で保険診療でのアレルギー検査の対象とならない(検査をしない)ケースも多々ありますので、その際は何卒ご容赦ください。中には検査ありきで、どうしてもこちらの説明にご納得いただけない患者さんもいらっしゃいます。その際は保険外(全額自費負担)であれば検査することはできます。検査費だけを保険外にする混合診療はできませんし、検査の種類(CAP-RAST,View39)によって、CAP-RASTの場合検査項目の数(上限あり)によっても料金は異なります。また検査できる項目、できない項目がありますので診察時にあわせてご確認いただければと思います。
ところで、検査をしない時の対応で患者さんに不快な思いをさせたことが少なからずあるかと思いますが、他意はありませんので何卒ご容赦ください。これからも大目に見ていただければと思います。つい先日タブレットのバッテリーを交換してもらうためにK店に行きましたが、有償でもバッテリーを交換してもらえませんでした。バッテリーを交換できない理由に納得できませんでしたし、過去にも別のタブレットでも同じような対応だったこともありものすごく腹が立ちました。多分態度にも出ていたと思います。因果応報なのか、有償を自費に置き換えてみると立場を替えてアレルギー検査と同じパターンだと気づきました。検査は自費であればできるのですが・・・。きちんと説明を尽くして患者さんにご理解、ご納得いただけるようにしないといけないと身をもって感じました。
血液検査をしてアトピー性皮膚炎の診断をして欲しいと言われる患者さん、親御さんが数多くいらっしゃいますが、アトピー性皮膚炎の診断は検査ではなく、皮膚の症状、皮疹の経過、家族歴などから行ないます。皮疹の経過や家族歴は問診によりますので、ここでも問診が重要になります。血液検査をしたいということで来院されても、視診(触診を含む)ならびに問診で必要ないと思われた場合には検査はしていません。そのため当クリニックでは検査をしてもらえないと思われてか、以前のようにアトピー性皮膚炎の患者さんで検査を要望される機会がここのところほとんどありません。経過の長い患者さん、症状の重い患者さんでは悪化因子の検索としてのCAP-RAST、皮膚症状の客観的指標としてのTARCなどの検査は治療の上でも随時必要となります。ところが検査にあたっては費用が余分にかかりますし、小児の場合採血のストレスがありますのでこちらの判断だけで一方的に行なうことはありません。検査は必要に応じて積極的に行なっていますのでお気軽にご相談ください。

2024/2/3

アトピー便り114:こちらが悪い?

暖冬ということもあってか、アトピー性皮膚炎の患者さんにおいては例年に比べて皮膚の乾燥によるかゆみで急激に悪化する方は比較的少ない感じですが、早めの治療ならびに保湿のスキンケアは引き続き励行してください。

 これも少し前の話になりますが、患者さんに怒られた2例を紹介します。水曜日の外来は午前診療のみで、患者さんがいなければ通常定刻で入り口のドアを閉めます。ある日戸締まり直後にインターフォンが鳴って「診察をしてください」とのこと。職員が「外来は終了しましたので明日以降来てください」とお伝えしたところ、「以前に来ているのにどうして診てもらえないのか」と押し問答になりました。午後診療がある日とは違って受付のコンピューターもシャットダウンしていますし、会計等の事務処理もすべて終えていましたのでその旨お伝えしてお帰りいただきました。せっかく来ていただいのに大変申し訳なく思いつつ、患者さんは定期的に来られていたのだろうか、しょっちゅう来られていたのだろうか、いつも時間間際に来られる方でたまたまタイミングが悪かったのだろうか、などと思いを巡らせました。フライングで早めに終了したわけでもありませんし、定期的に頻回に来られている患者さんならきちんと時間内に来られるだろうし、あんな押し問答になることはないだろうと思うと少しモヤモヤした気分になりました。
前腕と太もも、おしりに皮疹が出て受診された患者さんに、かゆみはなく、思い当たる原因がないとのことで一通り診た後あせもくらいしか思いつかないとお話したところ「あせもは肘の前にできるから自分でわかる。そんなんではない。良く見もせずにいいかげんな。時間の無駄。」と怒ってキャンセルして帰られました。通常であればここから鑑別診断、対症療法、経過観察のお話をする流れになりますが、取り付く島もありませんでした。診察時には中毒疹や特別な皮膚病を考える程はっきりとした皮疹はみられませんでした。強い日差しに当たったり、服が密着して汗をかいたりして前腕やおしり、太ももにあせもができるのは珍しくありませんので、今でも見立ては変わっていません。もちろん経過が分からないので正解だったかどうかはわかりません。患者さんにすれば広い範囲に今までに見たことの無い皮疹が出たことから特別な皮膚病を心配されたのだろうと思います。こちらとしては一見して特別なものではないと判断したのは事実なので、おざなりな見方・対応をしていると患者さんに感じさせてしまったのであれば反省するところです。とはいえそこまで言われる筋合いはないのですが・・・。一方で早とちりや勘違い、思い込みなどで患者さんに不快な思いをさせてしまったり、たまには誤診してしまったり、全面的にこちらが悪いケースも過去にはいくつか身に覚えもあります。コミュニケーション能力が高くないことは自覚していますし、実際に後からインターネットの書き込みで痛烈に非難(ほとんど誹謗中傷?)されているのを見て大変傷ついたことも数多くあります。このような書き込みの多くは一方的な言い分で、議論や反論・訂正もできませんので最近は意識して見ないようにしています。普段からより良い診療が提供できるように今回のようなケースを含めて自らその都度省みています。

2024/1/6

アトピー便り113:お薬だけ?!

しばらく落ち着いていたアトピー性皮膚炎の患者さんで急激に悪化するケースが段々増えてきました。普段から保湿のスキンケア、早めの治療開始、症状に応じた外用治療を心がけてください。寒暖差、気温の低下に伴う皮膚の乾燥はアトピー性皮膚炎に限らず皮膚のトラブルにつながりやすいのでこの時期はお気をつけください。

以前に経験したお薬だけ2例を紹介します。1例目は、診察終了時間間際に来院されて「水虫で他の皮膚科で2週間治療している。薬だけ出して欲しい。」とのこと。お薬だけが欲しいのであれば薬局に行けば同じ効能の薬を簡単に購入できるのですが、おそらく費用のことを考えられたのでしょう。さらに言えば、簡単に診察を済ませば転医しても余分な初診料や検査代などがかからないと思われたのかもしれません。一応「初診なので真菌要素の顕微鏡検査をしなければなりませんが、すでに外用治療を行なっているため検査をしても水虫を確認できないかもしれません。その場合水虫の治療は行なえません。」とお答えしました。2例目は、他の皮膚科でじんましんとにきびの治療をしていて薬を希望。薬の詳細(名前)は不明。診察時にじんましんの症状は確認できず、にきびの症状については治療しても良くならないとのことでしたが、推移は不明。結局2例ともキャンセルして、前医でもう一度治療を続けられるようにお伝えしました。
2例ともこちらの診察は眼中になくて何はともあれ前医と同じ(ような)薬を出して欲しいということでした。アトピー性皮膚炎など、診察時に皮疹・経過を確認できて(診断にあまり困らずに)それまでの治療経過(治療薬)がはっきりしている場合にはつなぎの薬として同じ(ような)薬を処方することはあります。ところが、1例目の水虫患者さんは、初診であれば顕微鏡検査が必須になりますのでお薬だけを出すことはできません。2例目もじんましんの症状をこちらでは確認できていませんし、にきびについては治療薬と経過がはっきりしていませんのでいきなりお薬だけを出すことはできません。いずれのケースも前医であれば容易にお薬を出してもらえますし、経過を踏まえて適切に治療を変えてもらうこともできます。他の疾患で来院されたことがあって、相互理解、信頼関係のある患者さんであれば話は変わりますが、皮膚科専門医としての一分(いちぶん)もありますので今回のようなケースで初診患者さんに対してご要望通りに機械的にお薬だけを出すことはありません。おそらく前医はコミュニケ-ション能力が高く、信頼のおける人気の皮膚科医であったのだろうと推測されますが、願わくば此方に対しても最低限のリスペクトは持っていただきたいものです。

2023/12/2

アトピー便り112:アレルギーの救急対応について

寒暖差が激しく、汗をかいたり、皮膚が乾燥したり、そのため一時落ち着いていたアトピー性皮膚炎の患者さんの皮疹の急激な悪化がちらほら見られるようになりました。重症化予防のため早めの治療、スキンケアの継続を心がけてください。
ある日の夕方5時頃、受付にくるみを食べた直後に口のまわりが赤くなって、咳き込んでいるので子どもを診てもらえないかと親御さんから電話で問い合わせがありました。喘息様症状と思われ、重症化する可能性のあるくるみアレルギーが疑われましたので救急対応のできる病院の受診を勧めました。すると、すでにお薬は別の病院で抗ヒスタミン薬をもらっていて内服したとのこと、薬はどのくらいで効果が出るのか、それほどひどくないのにどうして診てもらえないのか等強い口調で言われました。喘息様症状については皮膚科では対応しかねることをお伝えしてどうにか納得していただきました。主治医に一度診てもらっていながら、(おそらく連絡がとれなかったとはいえ)診察していない皮膚科医がどうして電話越しに患者さんから責めたてられないといけないのだろうかとモヤモヤした気持ちになりましたが、後から考えると親御さんからしたら相当ご心配、ご不安だったのだろうと思われます。その後は分かりませんが、適切に対処され、アレルギーの診断がきちんとなされていることを願ってやみません。

2023/11/1


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