アトピー便り

アトピー便り69:アレルギー便り

最近口腔アレルギー症候群と小麦依存性運動誘発アナフィラキシーの患者さんを続けて診る機会がありました。いずれも患者さん自身のお話からそれぞれの疾患を疑い必要な項目の血液検査を行ないました。前者はカモガヤで異常高値を示しましたが、実際に食べて症状のみられるフルーツでは陰性でした。口腔アレルギー症候群では食物に関してはこのように検査では陰性になることが少なからずありますが、カモガヤの著明高値と普段の経過・症状から口腔アレルギー症候群と診断しました。一方、後者は小麦、グルテン、ω-5グリアジンいずれも陽性でした。検査結果から小麦依存性運動誘発アナフィラキシーと診断確定できました。
この2例の患者さんですが、普通にアレルギーのスクリーニング検査を行なっただけでは見落とされています。当クリニックではスクリーニング検査としてView39で39項目の検査を行ないますが、前者では食物では陽性所見が見られませんでしたので血液検査だけでは花粉症の診断で終わっていたと思います。後者ではω-5グリアジンがView39の検査項目に入っていませんので小麦アレルギーの診断で終わって、診断を確定することはできなかったと思います。
このようにアレルギー診療に関しては患者さんからの詳細な情報のもとに適切な検査を行なうことが重要です。今回の2例も患者さんから十分な情報を提供していただきましたので診断に至りました。外来では「アレルギー検査をしてください」という方が絶えず受診されますが、再現性(同じ状況で必ず起こる:10回のうち1回でも起こらなければ再現性なし)、即時性(アレルゲンに暴露されて数時間以内に症状が起こる)、特定の症状(じんましん、呼吸困難、下痢、血圧低下など)を確認することができなければ通常アレルギーは考えませんし、機械的にスクリーニングで血液検査を行なうだけでは診断に至らないことがほとんどです。
コチニール色素(マカロン、かまぼこ、外国製の口紅などに含まれる赤色色素)やエリスリトール(カロリーゼロなどで使われる合成甘味料)によるアレルギー、サーファーに多く見られる納豆アレルギー(即時型ではなく遅発性が特徴)、マダニ咬傷に見られる牛肉アレルギーなど、既知のアレルギーで見落とされがちなアレルギーもいろいろあります。先述の再現性、即時性(納豆アレルギーは除く)、特定の症状が見られる方で、アレルギーが気になる方はアレルギー専門医を一度受診されることをお勧めします。また、「血液検査だけどうしても受けたい」という方は保険外(10割負担)であれば検査を行なうことができますので診察医にご相談ください。

2018/11/30

アトピー便り68:検査について

乳幼児のアトピー(性皮膚炎)患者さんで卵白で血液検査がわずかに陽性に出ただけで食事制限をダラダラと続けているケースがいまだに見受けられます。仮に陽性であっても程度が軽い場合には食べても問題(関係)がないことが多く、食べれるものはどんどん食べても構わないというのが近年の考え方です。アトピーは血液検査で診断をするわけでもありませんし、アレルギーの血液検査の数値とアトピーの重症度が必ずしも比例するわけではありません。とはいうものの、ステロイドの外用治療を適切に継続して行なっても症状が改善しない場合には悪化因子を見つけるために血液検査やパッチテストが必要となります。また、治療を続けていても一向に良くならないと言われる患者さんではTARC(という血液検査)アトピーの皮疹の重症度を判定することができますので、定期的に検査することで客観的に良くなっているかどうかを見極めることができます。小児のアトピーでは軽症例が多く、軽い湿しんか乾燥肌があるだけなのか、たいていの場合は触診で判別できますが、判別が難しい場合にはTARCを参考にします。言いかえれば、湿しんでは保湿剤だけ外用しても症状は良くなりませんし、ステロイドを適切に外用しなければアトピーの皮疹は軽快しませんので、正しく治療ができているかどうかを判別するのにTARCは大変役に立ちます。
以上をまとめますと、アトピー治療において経過の長い患者さん、重症の方、治療しても良くならないケースでは症状の改善のためには必要に応じて適切な検査を行なわなければなりません。

2018/11/11

アトピー便り67:アトピー(アレルギー)外来だより

定期通院加療中のアトピー性皮膚炎の患者さんでは猛暑となった今年の夏は汗や紫外線による皮疹の悪化が目立ちました。この時期はきちんと治療を継続していれば比較的症状の落ち着く時期なのですが、台風の通過後の季節外れの暑さで予期せず症状が悪化するケースが増えてくるのではないかと危惧しています。一方で、夏場に症状の落ち着いていたアトピー性皮膚炎の患者さんでは季節の変わり目に症状の悪化する方が多く、不定期に症状の悪化した時にだけ受診される患者さんの受診が目立ち始めるのもこの時期です。
定期通院されている患者さんでは症状が(良い状態で)安定している時にはどうしてもお薬の処方だけで診察が終わりがちになりますので、心配なことや疑問に思って聞いておきたいことがあってもなかなか聞けずに終わることも多いかと思います。また不定期に受診される患者さんは症状のひどい時にだけ受診されることが多いので(受診間隔が空きすぎて)途中経過がわからず、適切な治療ができているのか、悪化因子が絶えずあるのかなど、詳細を把握することができないため症状を良くしたいという患者さんのご要望になかなかお応えすることができません。そのような場合には、当クリニックでは初診時のアトピー性皮膚炎患者さんにご用意している問診票を活用していただければと思います。ご自宅で問診票に詳細にご記入いただいて次回受診していただく際にご持参いただければ適切な治療を行なうのに役立ちます。尚、このアトピー(性皮膚炎)問診票のほか、診察時もしくは受付でお申し出いただきますとアトピー(性皮膚炎)の手引きもお渡ししておりますので併せてご活用ください。食物アレルギーを心配される方も数多く受診されますが、適切に診断するためには詳しい問診がとても大事になります。(その一助として)食物アレルギー専用の問診票をご用意していますので食物アレルギーで受診される患者さんは受付で専用の問診票を受け取りあらかじめご記入ください。また、アレルギー検査やパッチテスト希望で受診される方のためには別途説明書を受付にご用意しています。症状が見られない(確認できない)ときのアレルギー検査は保険の適応外となりますので、診察前に説明書をご参照の上受診されるかどうかご判断ください。

2018/10/8

アトピー便り66:恥ずかしながら(じゃがいもアレルギーより)

先日外来でじゃがいもアレルギーの患者さんを診察する機会がありました。正直なところそれまで一度も診察したこともなく(見落としていた可能性が高いのですが)、患者さんのお話を伺った時点ではピンときませんでした。すぐさまその場で専門書を調べてみると、じゃがいもアレルギーの項目を見つけることができました。患者さんには血液検査をして、後からじっくり専門書に目を通しました(患者さんにはきちんと説明できておりませんが・・)。
乳幼児では加熱じゃがいもでも発症するようですが、成人では生のじゃがいもとの接触によって起きる口腔アレルギー症候群で、皮むきやその後の加工調理時に皮膚や鼻腔粘膜にかゆみや刺激感が起こり、喘息の発作を起こすこともあります。交差反応でラテックスアレルギーが見られたり、カモガヤ、オオアワガエリなどの花粉症が見られたりすることもあります。やまいも及び他のいも類でもアレルギー発症の可能性があります。
数日後の検査結果でじゃがいものIgE抗体は陽性を示し、(除去・負荷試験は行なっておりませんが、)初診時の問診内容とあわせてじゃがいもアレルギーと診断しました。今回は患者さんのおかげ(導き)で見落とさずに済みましたが、今までを振り返ってみるといろいろなアレルギーを少なからず見落としてしまっているのではないかと心配になってきます。(すぐに思いつくところでは、)不定期にまぶたの腫れを繰り返す患者さんが受診されましたが、当時は原因について全く見当がつきませんでした。イネ科の花粉症がある場合に食物の小麦アレルギーの症状で(過去に茶のしずく石けんの使用がなくても)まぶたが腫れることがあり、次回の来院時に検査ができればと考えていましたが、その後再診はなく、確認できておりません[以前のアトピー便りでも話題に挙げたことがあります]。
アレルギーを心配して来院される患者さんのうち、多くの方は症状、状況からアレルギーではないとすぐに判断します(できます)が、今回のように個人的に認知できていないアレルギーも少なからずあることを肝に銘じて、お忙しいところ時間を作って受診していただいている患者さんのアレルギーをこれからも見落とすことがないようにしなければならないと痛感しました。過去にはその他、豆乳アレルギー、アニサキスアレルギー、貝アレルギーなどの患者さんを似たような状況で診察させていただいたこともあります。一方で、これらのアレルギー症状の患者さんに関しては、アトピー患者さんのように数多く頻回に診察する機会があるわけではなく、次に同じアレルギー患者さんを診るまでにかなり間が空くことも多く、適切に検査をしたり、正しく情報をお伝えしたりするには改めて調べ直さなければならないかもしれません。その際はご理解とご容赦をいただければと思います。

2018/6/29

アトピー便り65:ヒルドイドについて

昨年来ヒルドイドの成人女性の美容目的での転用処方が問題となり、保険の対象から外すべきという意見が持ち上がっていましたが、今春の診療報酬改定では一応適正使用の徹底を前提にして保険診療の対象となりました。ヒルドイドが保険の対象から外れて最も困るのは軽症のアトピー(性皮膚炎)の患者さんかと思います。軽症のアトピーの患者さんは症状が目立つときにはステロイドの外用を行ないますが、症状が改善してきますと主に(ヒルドイドなどの)保湿剤で症状をコントロールすることができます。実際に前医(特に小児科)でヒルドイドだけを処方してもらっていた患者さんが、転医してきて同じようにヒルドイドだけを処方してくださいと言われることが多く、しばしばその対応に困ります。全くの初診でヒルドイドだけを処方することは通常はできませんので、軽い乾燥肌だけの場合には基本的には前医で引き続きヒルドイドを処方してもらうか、薬局で保湿剤を購入してもらうかのいずれかになります。一方で、患者さん(患児の親御さん)が乾燥肌と思っている症状が実際には湿しんであることも多く、その場合にはヒルドイドを外用するだけでは良くなりませんので、ステロイドを処方しますが、ヒルドイドだけで構いませんと患者さんに言われることもあります。ステロイドを怖がってヒルドイドだけを大量に使用していて、症状の良くならない患者さんは皮疹を適正に評価し直してステロイドを正しく外用する必要があります。
ステロイドにしろ、ヒルドイドにしろ、使い始めには適正量をしっかり塗らなければなりませんが、症状が落ち着いてきたら当初の量よりもかなり少ない量で症状をコントロールできます。アトピーの診療においては血液検査やパッチテストで悪化因子を見つけたり、ヒルドイドやプロペトなど保湿剤でスキンケアを続けたりしていくことも重要ですが、皮膚科医の一番の仕事は患者さんの症状を正しく把握して、(特に湿しんと乾燥肌の見極めをして)患者さんが適切な治療(ステロイド・プロトピックとヒルドイド・プロペトの適切な外用)を続けていくことをサポートすることかもしれません。

2018/5/29

 


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