アトピー便り

アトピー便り101:なすすべなし

半年くらい前に顔面の皮疹で受診された患者さんが2回目の受診で来院されました。初診時は他医でステロイド、プロトピック®軟膏、コレクチム®軟膏を外用しておりましたが、肌に合わないとのことで当クリニックのホームページを見てモイゼルト®軟膏を希望されました。結局初診時以降、処方したモイゼルト軟膏を含めて何も外用はしていないとのことで、患者さんのご要望は替わりの内服薬がないかということでした。明らかな皮膚炎が見られることから、外用に替わる内服治療薬はない(処方しない)こと、外用剤の効果を見ながら治療の変更、継続をしていくことをいくつかの外用パターンを示して説明させていただきました。すると、治療(処方)は要らないとのことでしたが、処方はしなくても診察料金はかかる旨を伝えたところ「二度とここには来ません」と言い残して帰られました。そもそもアトピー性皮膚炎として治療をしていましたが、アトピー性皮膚炎の治療には定期的な診察が必要ですし、場合によっては接触皮膚炎なのか、あるいは別の皮膚病かどうかを鑑別する必要があり、そのためには全身の皮疹の観察、詳細な問診、経過観察、さらには検査が必要となります。実際のところ2回の診察でこれらは十分に(ほとんど)できていません。患者さんにとってもこちらにとっても後味の悪い出来事でした。

2023/1/16

アトピー便り100:水ぼうそうの再感染

水ぼうそうは通常は再感染はなく、2回目の発症は帯状疱疹になります。ところが、高齢者を中心に免疫不全の方ではたまに水ぼうそうが再感染することがあります。最近幼少期に水ぼうそうになったことのある、全身に皮疹がみられる若い患者さんを診察する機会がありました。他医では単純ヘルペスの診断を受けて治療を受けていましたが、皮疹はどう見ても水ぼうそうでした。正直なところ水ぼうそうの再感染は念頭になく、水ぼうそうの初感染ではないかと考えていました。以前の水ぼうそうはもしかしたら手足口病など、他のウイルスによる感染症の症状でないかと思っていました。水ぼうそうかどうかを確定する目的で血液検査(水痘・帯状疱疹ウイルスIgM,IgG抗体)を行ないましたが、その結果は水ぼうそうの初感染ではなく、再感染を示唆するものでした。若い人の水ぼうそうの再感染は極めてまれですが、一度水ぼうそうにかかった後に水ぼうそうの感染者(多くは小児)に触れることなく長期間過ぎますと、ブースター効果が表れずに健常な(免疫不全のない)人でも水ぼうそうに再感染することがありますのでご注意ください。

2023/1/13

アトピー便り99:2022年冬

一時症状が軽快していたアトピー患者さんが治療を休んでいて最近またひどくなってきたと受診されるケースが目立ちます。症状がよくなると治療を完全に止めてしまいがちですが、良くなってからも保湿剤を塗り続けますと予防にもつながります。保湿剤だけで症状が改善しない場合には症状がどんどん悪化してしまうことが多いので早めに主治医を受診されることをお勧めします。軽い症状の時であれば軽めの治療ですぐに良くなりますが、一度ひどくなりますと強い治療を長期間行なわなければならなくなりますのでご注意ください。乾燥肌だけなのか、軽い湿しんが混じっているのか、見た目、触った感じだけでは判断しにくい場合があります。このようなときには血液検査でTARCを測定すると判定の一助となります。患者さんが乾燥肌だけと思っている場合でもTARCが上昇していればステロイド外用などきちんと治療をしなければなりませんが、かゆみもみられずTARCが上昇していなければ保湿剤だけのケアで問題ありません。
症状のなかなか良くならない中等症~重症のアトピー患者さんの多くはステロイドの外用をそれなりに長期間続けていますが、十分量の外用ができていないケースがほとんどです。大人であれば広範囲に皮疹のみられるアトピー性皮膚炎では1回に10g(5gチューブ2本)以上を使用して一気に良くして、外用量を漸減していくというやり方が必要となりますが、実際にはせいぜい月に30g~50gしか使用されていません。このやり方はステロイドを恐がる患者さんには抵抗があるようですが、きちんと説明すればほとんどのケースではご理解いただいております。
尚、最も治療に苦慮するのは、かゆみが強く不眠など生活の質を著しく低下させているケースと少なからず強いステロイドを長い間外用しているにもかかわらず、その使用量が不十分なために症状が良くなっていないケースです。長期にわたってステロイドを連用している場合は毛包炎や皮膚萎縮などの副作用がみられていることが多く、一時的とは言え更なるステロイドの大量使用はなかなかできません。このような場合でも近年登場したデュピクセント®(注射薬)を使用すれば症状の改善が望めます。薬の値段がとても高価なこと、使用期間など、使用にあたっては高いハードルがいくつかありますが、お悩みの方は主治医に一度相談されてみてはいかがでしょうか。

2022/12/13

アトピー便り98:外来の近況

アトピーについては、症状が落ち着いてきて急に塗り薬を止めたり、季節の変わり目でスキンケアなど普段の対応が上手にできなかったりしますと急激に悪化する可能性があります。最近は比較的症状の落ち着いた患者さんが多いですが、コロナがらみで治療を中断したり、ストレス、昼夜の寒暖差などによって症状が悪化する患者さんもぽつぽつみられますのでご注意ください。何年かぶりに受診いただく患者さんにつきましては、その間の治療経過を詳しくお伝えいただきますと治療の一助となります。特に症状がずっと良くなかった患者さんが突然来られなくなって、久しぶりに受診された場合には通常は他医を受診していたものと推察されますので、その際は経緯と今回の当医に対するご要望をお伝えいただければと思います。黙って受診されますと初診時のように一からお話することはありませんし、当方はコミュニケーション能力が高くないのでおそらく前回受診時と変わりなく残念な結果に終わってしまいますのでご高配いただければと思います。
アレルギーに関しては、この時期イネ科、雑草による眼囲の皮膚炎が見られることがあります。スギ、ヒノキの花粉症とは違って、草のそばを通った時にだけ症状が出ます。また、これらの花粉症がある場合、放置していますと花粉-食物アレルギー症候群に進行する場合がありますのでご留意ください。イネ科、雑草による花粉症が疑われる方は、お早目の検査、治療をお勧めします。先だってもIgE(RAST)小麦(花粉)が数名の患者さんで陽性でしたが、このようなケースでは食物のIgE(RAST)小麦では陰性でも食物アレルギーと関連がある場合がありますのでご注意ください。尚、この時期に症状がみられる(確認できる)方はアレルギー(血液)検査を保険診療で行なえます。

2022/9/30

 

アトピー便り97:新しい治療薬

近年アトピー性皮膚炎(以後AD)の治療薬として注射薬としてはデュピクセント®、内服薬としてはオルミエント®、サイバインコ®、リンヴォック®が次々と発売され、中等症以上の患者さんで劇的に効果が表れてADの治療の新時代の到来などと言われています。これらに共通するのは炎症をおさえる以外に、強い痒みをおさえる作用があること、ステロイド外用剤と違って皮膚のバリア機能を保つ働きがあることです。当クリニックでも使用の対象となる患者さんが少なからずいらっしゃいますが、当クリニックではこれらの薬剤を扱っておりませんので、その使用に当たっては基幹病院へ紹介させていただいております。重症の患者さんで説明をさせていただく機会があるのですが、薬剤費があまりにも高いこと、受診・治療の継続性などの観点などから実際に紹介に至る例はあまりありません。ステロイド外用剤の使用がなくなるわけではなく、併用となりますすが、通常は確実にステロイドの使用量は減りながら症状も劇的に改善しますので、症状の強い方でこれらの治療が気になる方は診察時にご相談ください。
一方、軽症のADの治療薬として、また重症のADの患者さんが症状が良くなってから症状を維持するのに以前からプロトピック®軟膏が使用されていますが、数年前からはコレクチム軟膏®が、今月からはモイゼルト軟膏®が使用できるようになりました。症状の強い方はステロイド外用剤が治療の中心となりますが、軽症例、ステロイド外用剤で皮疹が良くなってから、顔面・頸部の皮疹に対してはこれらの外用剤を上手に使用することが大事です。これらの外用剤はステロイドでないこともあり、特に子どものADは比較的軽症の方が多いので、今後はプロトピック軟膏と同様にコレクチム軟膏、モイゼルト軟膏の出番が多くなるものと思われます。3剤とも大人用と子ども用に分かれていますので使用の際はご注意ください。尚、ADの治療では症状や部位によって外用剤の使い分けをすることが必要となりますので診察時に主治医に外用指導をしていただくことをお勧めします。

2022/6/27

 


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